JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
JAグループの肥料・農薬、農機事業 予約・共同購入の原点に返って2017年4月24日
全農は競争力のアップを
引き下げ数値は具体的に
意見交換
前号まで2回にわたり、生産資材引き下げについて、全農の吉永正信代表理事専務、肥料農薬部の天野徹夫部長、生産資材部の冨田健司次長の報告を受け、また、JAひまわりの竹内康浩参事、JA水戸の岡崎一美常務から実践報告・全農への要望を受けました。今回は、それに対する質疑内容を紹介します。全農の報告に対して、JAからは考え方はわかったが、具体的にどのぐらい価格が下がるのか数字を示して欲しい、対策は大規模農家中心だがもっと対象を広げるべきだ、農機について使用時期が重なる中でリースなどの共同利用はうまくいくのかなど、活発な意見交換が行われました。
【JAの質問・意見】ジェネリックを早急に
●わがJAでは、生産資材についてそのほとんどが系統利用だが、一方で、いつもJAの価格は、内容が同じでも商系に比べて高いといわれる。この点について、商系を入れた入札にすべきか、それとも、これまで通り共同購入していけばいいのか。
●農機はリース事業が提案されているが、トラクタ、コンバイン、田植え機など、それぞれ適期があって作業の重なる部分が多いが、うまく行くのか。
●全農から、幹の部分は聞かせていただいた。しかし、組合員から見れば、それが具体的にどのようなものかが関心事である。それを示して欲しい。
●全農は、できることはできる、できないことはできないとはっきり意思表示すべきだ。例えば、肥料について銘柄を集約すれば価格は安くなるというが、そのようなことは日本の国情に合っていることなのか。規制改革推進会議の人たちは、農業の現場のことを知らないで議論している。しっかり理論武装をして、勇気と自信と誇りをもって進めてもらいたい。
●全農・経済連から買うものは高いと以前から言われてきた。とうとう、来るものが来たという感が強い。全農・経済連は組合員の上に胡坐(あぐら)をかくのではなく、本当に組合員のための存在にならなければいけない。日本の農業振興に貢献していることに誇りをもって取り組んでもらいたい。それには、競争力のある全農になって欲しい。また、農産物を、消費者にいかに買ってもらうか、もっと小売りの能力も持つ必要がある。それにはスーパーのバイヤーの知恵も借りるべきだ。いずれにしても、組合員のためという原点に返って取り組んでいただきたい。
●予約・共同購入の積み上げの重要性はわかるが、米の生産調整が廃止される中で、何を作付けして良いのか戸惑いがある。そのような状況の中で、生産資材について、どれぐらい価格が下がるのか、はっきりしないと取り組みづらい。また、大規模化が進むといっても、管内の6~7割は兼業農家であり、買い取り販売をすればさらに赤字が増える可能性が高く、それに肥料・農薬などの価格が下がれば手数料も少なくなって、JA経営はさらに厳しくなる。
●価格引き下げについて、精神論だけでなく、実際に実現してほしい。例えば、施設園芸農家に対する肥料価格対策について、対象になる農家がほとんどいない中、いつから実行するのか。例えば、平成29年度からとか期限を切って進めてもらいたい。また、ジェネリック農薬については、しっかり取り組んで欲しい。
●テーマとは直接関係はないが、連合会の決済サイトが短く、JAでの経理処理が追い付いていない実情があるようだが、これで監査法人監査に耐えられるのか、検討してもらいたい。
【全農の応答】選ばれる全農をめざす
●報告のあったJAひまわり(愛知県)の取り組みは素晴らしいと思う。JAから見て、全農も一つの取引先であり、選ばれる全農でなければならない。協同組合として出資してもらい、利用してもらうことで組合員の皆さんにメリットを還元することが本旨であり、商系に流れるのは問題だと思っている。
そのような中で、改めて予約・共同購入に徹することを基本としているが、耕種、例えば肥料等については、基本的に全農・経済連はメーカーがつくったものを買う立場であり、良いものを安く手に入れるには、予約・共同購入の原点に返るべきと考えている。また、これについては、今後、事務的に「価格と諸経費」の区別を明確にして、皆さんの理解を得ながら取り組んで行きたいと考えている。
●「幹の部分はわかったが、具体策がない」という意見は、それでいったいどれぐらい価格が安くなるのか、ということであろうが、このことについては、地区別総代会などの事前協議の場で必ず出た意見だった。どれだけ安くなるのか明らかにならないと、組合員やJAの理解が得られにくいということはわかるが、必ず安くなるとしても、それが10%なのか20%、30%なのか、現状ではそれを提案するだけの材料がない。
例えば、焦眉の急となっている肥料については、予約を積み上げ、銘柄を集約することによって工場の稼働率が上がり、コストが下がるというシミュレーションを行う必要がある。そこで、特に化成肥料について予約数量の積み上げを行い、今夏までに計算を行って予示価格を出し、それを基にして平成30年春肥からの本格推進につなげていきたい。
●言うべきところははっきり主張すべきということについては、平成29年度から、全中や他の全国機関とも一緒になってテレビや新聞などのメデイアを使って意見を発信することにしている。
●外部人材の登用については、購買事業や販売事業の関連部署で、業務執行のスタッフとして受け入れていきたい。また、経営管理委員会の場などで、事業とは必ずしも直接関係のないところで、大所高所からの意見を頂きたいと考えている。
●JAひまわりからの全農への肥料・農薬に関する要望事項の7点については、ご意見を踏まえて精一杯取り組んで行きたい。とくに、最も一般的に使われている高度化成肥料は、繰り返し申し上げている通り、背水の陣で取り組む覚悟であり、ぜひ、今回の提案に乗って頂きたい。これによって組合員・JAの皆さんによく頑張ったなという価格を示したいし、世間にも認められる結果を出して行きたい。
●JA水戸から報告のあった農機事業についてのJAと全農の一体運営(小売り機能と卸機能の合体)については、もう10年も前から取り組みを進め、現在71のJAで行っている。収支が厳しい中、引き続きこうした効率的な運営体制について取り組んでいきたい。
●JAから出された農機事業の手数料の問題は、JAに請求書を出す際、価格と諸経費を明確にした内容にして行きたい。現在、事務システムを含め具体化を検討している。全農・経済連としては、JAの補完機能として重整備・広域部品センターの設置、展示会の開催、研修会の開催など機能に応じた手数料をいただいていると考えている。
●仕入れ機能の強化では、例えば50~70馬力のトラクターについて大手4社で500種類もの型式がある。今後、この型式を数種類に絞っていきたいと考えている。もちろんつくるのはメーカーであり、使う側の好みもあるので簡単には行かないだろうが、しっかりしたアフターサービス機能を持つJAの力で実現していきたい。いずれにしても、これまでのように現場任せにはしないで、一つ一つ実現して行きたい。
●農機のシェアリースについては、コンバインで「JA三井リース」と提携して進めている。収穫時期の違う特定・複数の農業者でシェアするもので、昨年、北陸・東海・関東の3農家で稲と麦について実証的に行い、評価を頂いている。しかし、借りている間に雨が降るとか、使用後の機械の清掃に手間がかかって大変などという問題や、トラクタや他の農機でもできるのではないか、作業も刈り取り以外にも広げられるのではないか、などの意見も出されている。今後、こうした実証的な取り組みを順次拡大していきたい。
●大型トラクタのシェアについて、中山間地区などでは需要がないという意見もあるが、まずは汎用性が高く、コストダウンが明確に示せる可能性が高いこの分野から進めたい。また、30~50馬力のトラクタも利用の多いゾーンなので、集中購買によって価格引き下げに取り組みたい。
(写真)全農に期待と多くの注文が(第6回セミナー)、肥料価格の引き下げに期待(JAの購買店で)
このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。
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