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JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと

第15回 なぜ農民塾や農協(JA)の研究会を指導し推進してきたのか2017年5月20日

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今村奈良臣・東京大学名誉教授

 最近、2回にわたって本欄で、三春町ならびに酒田市の農民塾生たちのすぐれた活動の一端を紹介してきたが、なぜ私は農民塾や農協(JA)の研究会にエネルギーを注いできたのかという読者の皆さんの疑問に答えておきたい。
 その理由はきわめて簡明である。私は「農業ほど人材を必要とする産業はない」、「農協(JA)ほど人材を必要とする組織はない」と若い時から信じて、その実現のために、農民塾や農協(JA)にかかわる研究会ーー研究会という名称ではあるが、実質は「農協塾」であるーーを推進してきたのである。
 三春農民塾や酒田スーパー農業経営塾は、私がまだ東京大学教授であった頃、三春町長であった伊藤寛町長ならびに酒田市農業委員会会長であった阿部順吉会長の熱意に応えるところから、それぞれの農民塾をはじめたのである。それを聞きつけてであろう全国各地から農民塾を開きたいとの相談が次々寄せられ、大分農業平成塾、ぐんま未来塾というような県下全域を組織したものから、秋田雄物川塾、長野東部塾といった町村レベルの農民塾に至るまで、ここではその一つ一つは省略せざるをえないが、広く全国に拡がっていった。
 こうした現地農村からの熱意に組織的に答える必要を痛感し、故檜垣徳太郎さん(名農林事務次官としてしたわれ、その後、全国農業会議所会頭や郵政大臣もつとめられた)に相談し、「21世紀村づくり塾」を創り上げ、檜垣さんが塾頭、私が副塾頭(もちろん私の本職は東京大学教授であり定年ととも日本女子大学教授となっていた)となって、さらに広く全国にわたって農民塾活動は拡がりをみせていった。
 もちろんこの前後の時期、私は国の数多くの役職、例えば米価審議会委員、畜産振興審議会会長、農政審議会会長等々多くの委員・役職等をさせられていたのであるが、それらの役職や本職である教育・研究にも全力をつくすとともに農民塾の活動、教育にも全力投球をしてきた。
 こうした経緯を示す一つの資料を参考までに揚げておこう。これは国の『農業白書』50周年を記念して白書の特別号が刊行されたのであるが、その中に「回想」を求められて書いたものである。

回想

今村奈良臣氏
(元食料・農業・農村政策審誰会会長)

 私は旧農業基本法にもとづく最後の農政審議会会長をつとめるとともに、新しい食料・農業・農村基本法にもとづく初代の食料・農業・農村政策審議会の会長をつとめることとなりました。食料・農業・農村政策審議会の会長就任に当たり、農政審議会会長時代の反省も込めて次のような食料・農業・農村政策に対する私なりの基本スタンスを決めて臨みました。

1.農業は生命総合産業であり、農村はその創造の場である
2.食と農の距離を全力をあげて縮める
3.農業ほど人材を必要とする産業はない
4.トップ・ダウン農政からポトム・アップ農政への改革に全力をあげる
5.共益の追求を通して私益と公益の極大化をはかる

 この基本の5項目を更に各項目5つの小項目に具体的に整理し、新しい食料・農業・農村政策の確立に全力をつくすべく努力目標を自ら課すこととして臨みました。農政審議会会長時代に「農業に関する年次報告」を2回、食料・農業・農村政策審議会会長時代に3回にわたる「食料・農業・農村に関する年次報告」いわゆる農業白書を決定・公表するとともに、第1回の「食料・農業・展村基本計画」の策定・答申を行ないました。
 これらの史的意義に関する評価は国民の判断に委ねるほかありません。この時期、BSEの激発等食品安全間題への国民の関心は非常な高まりを見せ、それらへの対応に追われたことは記憶に新しいことです。また、この時期の画期的な政策転換として実現したのが、「中山間地域等直接支払制度」の確立でした。かつて私が『補助金と農業・農村』(1978年、家の光協会刊。第20囘エコノミスト賞受賞)で提起したR・D・F (Rural Development Fund)構想が現実の農政改革の中で実現し、現在に至るも高い評価が与えられていることは感慨深いことです。

 農政改革は容易ではないと実感してきた新旧2代にわたる会長としての回想です

平成22年度『食料・農業・農村の動向』(「農業白書」)P.394

 この回想の中の第3項に「農業ほど人材を必要とする産業はない」とやはり銘記しておいた。
 その後、農業団体の統合という農水省からの厳しい指導により「21世紀村づくり塾」は他の農業関係3団体との統合をすることになり、「都市農山漁村交流活性化機構」(愛称は「まちむら交流きこう」)が発足し、いまは私が理事長をつとめている。この新しい団体は多彩な都市と農業・農村をむすぶ活動を行っているが、その中でも年1回開催する「全国農林水産物直売サミット」がもっとも大きいイベントで、すでに第15回を終えた。第15回は滋賀県東近江市で、第14回は秋田市で、というように全国を巡回し、第16回は松山市で行う。(毎年10月下旬の秋の好日に開催してきたが愛媛県で国体が10月に開催され宿舎などとれないため、2018年(平成30年)2月1日~2日に松山市全日空ホテルを会場に開催することに決定している)。
 このサミットには毎年、北海道から沖縄にいたる全国各地から500~700人もの直売所関係者が集まり、大会行事とともに各専門分野に分かれたセミナー形式の分科会で多くの経験、英知、手法の交流が行われる。注目すべきは女性の参加が圧倒的に多く、言うならば、「直売塾」とでもいうべき姿を実現しているように思う。直売所を通した農業・農村の活性化は今後もさらに新しい発展を示していくものと考えている。

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