JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
【覚 醒】歪んだ国の政策を正す2017年6月13日
JA職員層の提言
協同組合としてのJAは、地域に密着し顔見知り同士で多様な農業者などの組合員が出資・運営・事業の3方面から参画、結集することによって、主人公(組織の主体)である組合員の営農面、生活面のニーズと願いを実現する利用者指向の企業体です。
2008年のリーマンショックによる世界的不況時には、世界の協同組合グループのみでなく、地域社会や営利企業・金融資本グループからも、国際協同組合同盟(ICA)の傘下に10億人の組合員が結集している農協・生協・信用組合など多様な協同組合が地域に密着し、持続的事業成長と耐久力を発揮していると評価されました。
また、国連の2012年国際協同組合年(IYC)には世界的に多彩な活動と共に、日本では農協、生協、漁協、森林組合、ワーカーズコープなど協同組合の全国組織やマスコミ、研究者等で組織されたIYC全国実行委員会が「協同組合憲章(草案)」をまとめています。
◆不当な政府の干渉
一方、昨年11月に日本政府の規制改革推進会議の農業ワーキング・グループからは「農協改革に関する意見」として、(1)農協の生産資材について、「従来の生産資材に係る体制を1年以内に新しい組織へと転換し、人員の配置転換や関連部門の生産資材メーカー等への譲渡・売却を進める」ことを明示しています。また、農産物販売については、「全農は、...1年以内に委託販売を廃止し、全量を買取販売に転換すべきである」と明示するなど、民間組織であるJAに対する政府の不当な干渉は協同組合の本質的理解の欠落から生じています。
(2)全農等の在り方については、「全農も、...全中と同様に、選挙で会長を選出すべきである。...新組織(本意見に基づく機能を担う〝第2全農〟等)の設立の推進など、国はさらなる措置を講ずべきである」としています。政府が、民間組織であるJA全農の会長選出方法や第2全農等の設立の推進を指図するやり方は、第2次大戦中に協同組合である産業組合を農業会という統制団体に強制的に変質させられた事態を想起せざるをえません。
(3)地域農協の信用事業の負担軽減等については、「自らの名義で信用事業を営む地域農協を、3年をめどに半減させるべきである。...クミカン(組合員勘定)は、...直ちに廃止すべきである」など、協同組合としてのJAグループの「自治と自立(組合員が管理する自治的な自助組織)」の根本を否定する内容となっています。
政府の非科学的な農協攻撃は、協同組合に対する基本認識の歪み(欠陥)に根源があります。その現象形態として農業者等の主人公(組織の主体)、役職員による「JAへの実態認識・熱望」と政府の規制改革推進会議が先導する「JAに対する基本政策」に大きなギャップを生んでいます。
このため、JAグループは昨年11月21日に緊急集会を開催し、「到底容認できるものではない。...組織の力を結集して徹底的に取り組む」とJA自己改革に関する決議を公表し、政府の不当な介入の動きを若干緩和させることになりましたが、今後とも不公正な政策介入の動きを抑止するために、タイムリーな提言・要請活動とJAグループ自体の「創造的自己改革」が最大の課題です。
◆総合JAの意義明示
このような政府の歪んだJA政策を正すために、JA職員層の提言運動が注目されます。「農業協同組合新聞」(2017年5月30日)に、『新世紀JA研究会 紙上セミナー(第18回)』で主に首都圏のJA企画担当部課長で構成する企画部会小委員会から「信用事業譲渡、代理店化についての考察~新世紀JA研究会への提言~」(案)が掲載されています。
この中で、第1に、JA信用事業の現状と他の民間金融機関のデータを比較し、平成27年度は 「預け金利回り」(JAが信用金庫を2倍以上も上回る)、「経費率」(JAが最も低コスト)、「自己資本比率(国内基準・単体)」(JAは17.77%、信用金庫は13.08%、地方銀行は11.26%、第2地方銀行は9.7%とJAが最も高い)など、JAが他業態と比較しても健全経営を堅持している点を鮮明にしています。
第2に、農林中央金庫・信連が示す代理店スキームの収益面の特徴は、貯貸率の高いJAほど代理店化による信用収益減少が大きく、貸出金のうち、プロパー資金の割合が大きいJAほど信用収益減少が大きく、都市型JAへの影響が大きいため、信用事業譲渡・代理化は、例外を除きJAがとるべき対応ではないと提言しています。
第3に、平成25年度では営農指導事業分配賦額のうち信用事業部門からは、全体の占める割合が27.6%を占め、JAの中核事業として信用事業を兼営することで持続的農業と農村社会の維持を通じて国民への安定的食料供給と多面的機能(公益的機能)を発揮しており、総合JAの体制は不可欠であることを明確にしています。
以上のように、首都圏のJA企画担当部課長グループが、不当なJA攻撃に危機意識を共有し、協同組合人としてのプライドを喚起しながら実証分析を通じて総合JAの存在意義を明確に提言している点を高く評価したいと思います。
主人公である組合員から生の声を聞き、JAの事業活動と自己改革等に尽力しているJA職員層(特に中堅職員)が目覚め、各JAの枠を超えて斬新な提言づくり運動に参画し、智恵を共有することでJA運動への自信を取り戻し、地域に根ざしたネットワーク型の新たなJA改革運動のパイオニアになることを心から期待しています。
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