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【覚醒】競争でなく助け合いで2017年6月22日

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F・K

◆イコールフッティング

 旧聞に属しますが、平成26年5月に在日米国商工会議所は、日本政府に対して、「JAグループは日本の農業を強化し、かつ日本の経済成長に資する形で組織改革を行うべきだ」という意見書を提出しています。奇しくも、同年6月には政府による「規制改革実施計画」が閣議決定され、一連の政府による農協改革が進められてきているのは周知の事実です。
 こうした米国の要請で農業・農協改革が進められているのは、誠に憂慮すべきことですが、この政策を進めるうえで使われる常套句が「イコールフッテイング」という概念です。イコールフッテイングとは、同じ立場に立つということで、「商品やサービスの販売において、双方が対等の立場で競争が行えるよう、基盤・条件を同一に揃えること」を指すとされます。
 もちろん対等の立場で物事を進めることは、公平の観点から重要なことと思われます。しかし、ここで注意すべきは「立場」です。よく指摘されるように、世の中は、公的セクター、営利セクター、非営利セクターの3つのセクター(領域)で成り立っており、それぞれのセクターにおける役割を発揮するため、政府などの公的機関、株式会社、協同組合などの組織が活動を行っています。
人間の本性に基づき
 こうした組織は、歴史的にみて自己保全・競争・助け合いという人間の本性(Human Nature)によってつくられたものです。安倍政権の政策は、この人間の本性のうちの競争原理一辺倒のもので、しかも、公的機関たる政府の後押しによって行われています。
 これでは、助け合いの本性に基づく協同組合はひとたまりもありません。営農・経済分野だけに競争原理を導入する木に竹を接いだような農協法の改正や、さらには全農の株式会社化、JAからの信用事業分離が進められ、また農業競争力強化支援法など農業分野も競争原理一色です。
 健全な福祉社会は人間の本性(Human Nature)たる自己保全・競争・助け合いの原理をバランスよく取り入れたものであると考えられます。従って、こうした競争原理一辺倒の政策は、いずれ社会の破たんを招いて修正されることになり、社会的・経済的に全く無駄な政策というべきでしょう。
非営利の立場踏まえ
 いま行われているイコールフッテイングという考え方は、自己保全・競争・助け合いという、人間のHuman Natureの「立場」を一顧もせず、競争原理一辺倒の政策を後押しする方便に使われていることの非を正すべきです。自己保全・競争・助け合いという組織の「立場」を踏まえたうえで、その役割を発揮することこそが福祉社会の実現に繋がります。
 一方で、反論するには、それなりの理論武装が必要です。この点、JAは政府に守られてきた組織であり、対応が極めて不十分というべきです。協同組合が理想社会をつくる、何が何でも協同組合を守れ、協同組合こそが正義だと言わんばかりの論調では、別の目から見れば、しょせんJAは協同組合という組織の利益擁護団体だと受け取られかねません。
 つまるところ、協同組合は守られなければならないという議論では不十分で、どのようにしたら協同組合が守られるかという議論を巻き起こすことが重要です。例えば、かつて行われたJAの公認会計士監査移行に当たっての反論です。この論争でJA側は、公認会計士と中央会(農協)監査が違うのは業務監査を行っているか否かであり、JAは公認会計士監査と違って業務監査を行っていることに意義があると主張しました。
 しかしながら、この主張だけでは不十分でした。もともと公認会計士監査と農協監査が違うのは、前者が不特定多数の投資家を相手にする上場会社を対象とするのに対して、後者がメンバーシップによる人の組織を対象とするということで、そもそも監査の目的が違うものでした。
 したがって、JAは協同組合として独自の非営利の監査基準を持つべきでしたが、実際には、財務諸表監査中心の公認会計士監査基準に従うことに終始してきました。会社と協同組合は、もともと制度設計が違うのであり、監査内容も自ずから違うと主張すべきでしたが、JAは協同組合として独自の監査の積み重ねを持つに至らず、それは叶いませんでした。
 今後、JA監査は、中央会監査に代わってJA監査法人によって行われますが、農業振興を旨とした非営利の協同組合として、広く国民の理解を得てJA独自の監査基準の確立・策定を検討していくことは最重要課題と思われます。
自主・自立の組織に
 また、現在組織討議が行われているJAからの信用事業譲渡・代理店化の提案も、どのような事業のやり方をすれば協同組合としての運営が可能なのか、どうすれば協同組合としての優位性を発揮できるのかの議論を巻き起こすべきです。
 最近、この議論は、いつの間にか、経営破たんにより信用事業ができなくなるよりは代理店方式でもJAの総合事業を守る方が得策といった議論にすり替わってきていますが、果たしてそのようなことで総合事業は守ることができるのか、ひてはそれが組合員のためになるのかどうか十分な検証が必要です。
 信用事業譲渡・代理店化に反対もしくは賛成といった単純な議論だけでは、周囲から、組織の利害論争としかとらえられかねません。政府に頼らない自主・自立のJA運動が求められているゆえんです。   

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