JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと
第22回 「震災復興への歩みと平成30年以降に向けた水田農業ビジョン」ーJAふくしま未来の報告ー2017年7月8日
第5報告は大合併して間もないJAふくしま未来の、とりわけ大震災、巨大津波の襲撃、未だ収まらない原発放射能禍の三重苦にあえぐ、旧JAそうま地区を中心に、その復興と新生への道に涙ぐましい努力を重ねている姿をリアルに報告された高玉輝生氏(報告者は営農部農業振興課次長<災害特命担当>)であった。
新生したJAふくしま未来は、旧JA名で表現すると、JA新ふくしま、JAみちのく安達、JA伊達みらい、JAそうまという福島県北4農協が大合併して発足したものである。南北60km、東西75kmという広い地域を大震災復興の大命題のもとに合併した。
この新生JAふくしま未来管内は全国有数の果樹(モモ、ナシ、リンゴ、ブドウ、柿、あんぽ柿等々)の産地であり、米はもちろん多彩な野菜の産地、また飯舘村を中心にした和牛産地でもあったが、大震災・大津波と放射能禍で痛ましい姿に変容し、いまその姿を変革すべく涙の出るような再生の活動が進められている。今回の報告は主として津波と大地震に襲われ、放射能禍を乗り越える汗みどろの活躍をしている旧JAそうま地区を中心に報告していただいた。
旧JAそうま管内は10m超の大津波、福島第一原発の水素爆発による放射能禍にいまなお悩まされ、震災による死者・行方不明者は旧JAそうま管内で1683人、建物の全・半壊4408世帯、1万1300棟、避難者数2万8006人にのぼっている。また旧JAそうま管内水田面積1万2060haのうち被害面積は9760ha、約80%にのぼっている。
こうした中で、除塩作業、農地除染作業など多面的な農地復旧作業に汗のにじむような全力をあげた取り組みを、要約していえば平成28年度で約半分(50%)が水稲作付再開にこぎつけたという、いまなおきびしい状況にある。
さらに、放射能禍対策として24年産米以降徹底した米の全袋検査体制を確立してきて「安全・安心」へ向けた汗を流す取り組みを行ってきている。
詳細な報告は省略せざるをえないが、平成30年以降の水田農業ビジョンを「農家所得アップの実現」のサブタイトルのもとに、米の消費と加工・外食などの需要予測を踏まえ、県域JA別に制度別、用途別作付ガイドラインを作成し、その中でのそうま地区の年度別、用途別作付計画を詳細に策定している。その中で詳細は省略せざるをえないが、「米の複数年契約の取り組み」、生産資材事業における「農家の手取り最大化へ向けたJAと全農の連携の取り組み」、農家手取り最大化に向けたコスト低減対策」の具体的推進(特に鉄コーティング湛水直播栽培の推進)などを具体的に推進しようとしている。
三重苦から力強く立ち上っているJAふくしま未来に是非とも多くの支援と激励を行っていただきたいと思う。
なお、私がこれまでどのような支援活動をしてきたか、大変微力なものであるが記しておきたい。
一つは、私が理事長をつとめている「都市農山漁村交流活性化機構」(愛称は「まちむら交流きこう」で(財)「21世紀村づくり塾」の後身)の主催で大震災の翌年に郡山市の磐梯熱海温泉において「全国農産物直売サミット」を開催した。いわゆる放射能に対する「風評被害」が広汎に広まっていたなかで、それをいかに克服するかということを目指して開催したもので、JA関係者・代表者はもちろん福島県知事、郡山市長なども臨席され全国からも500人を超える参加者があり、シンポジウムや実践発表会、直売所活動の意義やその紹介、熱のこもった討論と意見交流などを行い、翌日は県下一円の直売所めぐりなどを通して交流を行うなど、風評被害の一掃に全力をあげた。
また、大震災の前から、合併前のJA新ふくしまの菅野孝志組合長と旧知の関係にあったため、JA新ふくしまに農民塾ならぬ農協塾を開催し、その塾長となり、営農経済事業の活性化ならびに人材育成につとめるとともに、大震災後には風評被害克服のための組合員も含めた研究・実践活動の指針づくりなども行ってきた。
また、飯舘村には、その畜産の拠点づくりのための研究・調査でたびたび訪ねたが、大震災後は放射能禍のために入村できず、涙を流している状況である。
JAふくしま未来のさらなる発展を希望してやまない。
※高玉輝生氏の「高」の字は正式には異体字です。
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