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JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと

第29回 JA-IT研究会2017年度人材養成セミナーの講演・討議、現地研修などの紹介2017年9月23日

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今村奈良臣・東京大学名誉教授

 まずはじめに私がこの研究会の代表者であり開催責任者としての開会あいさつと合せて、「地域創生とJAの再生――そのカギは人材にある」との講義を行った。
 最初に、茨城県はサッカーのJリーグでいまでも1位にあり常勝を続けている「鹿島アントラーズ」の地元であることにちなみ、本欄第27回で紹介した「農協はサッカーの戦略、戦術に学び新しい活路を切り拓こう」をまずはじめに話した。参加者の多くは眼を輝かして聞いてくれただけでなく夜の懇親会の折りにもビールを飲んだ勢いもあってか話題の種になっていた。
 ついで、「農協ほど人材を必要とする組織はない」というタイトルのもとで、人材とは何か、という話をした。抽象論では判りにくいと考え、別図を示して人材とは何かという話をした。
 私の考えでは、人材とは、図の5角形に示したように、(1)企画力、(2)情報力、(3)技術力、(4)管理力、(5)組織力という5つの要素で構成されていると考えている。簡潔に説明しておこう。

では、人材とは何か

(1)企画力
 分かりやすく言えば、種子を播く前に、売り先、売り方、売り場、買い手、売り値などを明確に考え抜き、その発想にもとずき指導し、構想する能力。要するに、Plan-Do-See-Act、あるいは計画、実践、評価、実践などがきちんとできる能力であると言ってもよい。これを磨かなくてはならない。

(2)情報力
 情報力は受信力と発信力の2つの要素で構成される。受信力は、先人、先学の学理や経験、実践の原点について学ぶことからまず得られる。さらに広く、社会経済、あるいは農業・農村の分野についての調査、情報収集、それらの分析・考察を通して得られる智恵と能力である。
 他方、発信力は受信力の蓄積を基礎に、その分析・考察を踏まえ、広く地域や社会あるいはJA組織、職員、組合員などに対して発信する能力である。
 この両者を一体としたものが情報力であると私は考えているが、特に若い世代には受信力に磨きをかけるようにすすめている。

(3)技術力
 技術力とは、伝統技術と先端技術の両方について勉強し多様な実践の場で活かす能力であると考えている。特に、農業の分野においては、伝統技術は数千年にわたって蓄積された先人の知恵と技能の結晶であるが、それらを身につけていかに活かすかという能力である。
 先端技術については、常に研究、修得を怠らず活用しようという態度が必要であろう。しかし、例えば、遺伝子組み換え技術のような安全性について未知数のものについては、慎重にも慎重を期す態度が必要であろう。
 要するに、この伝統技術と先端技術の両者を、特に農業・農村とのかかわりが深いJA役職員にあっては、しっかりと身につけられれば鬼に金棒ということになろう。

(4)管理力
 管理という分野が近年急速に拡大してきている。例えば、人事管理・財務管理・経営管理・安全管理、というように、管理という言葉の前につく言葉をあげていくと際限のないほどに増えてきた。『広辞苑』で管理の項を引くと「管轄し処理すること。良い状態に保つように処理すること。とりしきること」とあるが、例えば、初版から最新の第6版まで引き比べてみると○○管理と管理の前につく言葉が近年激増してきていることが判る。なぜ増えたのか。どういう分野で増えたのか。一応じっくり考えてみて管理問題に取り組んでもらいたい。

(5)組織力
 現代社会では1人で行えることには極めて限界がある。とりわけ農業にかかわる分野では常に組織力が要求されるし、農協という組織では組織力が基本になる。個を生かしつついかに組織的に多面的な活動を行うか、ということが、ますます求められてきているように思う。その要求される能力は多岐にわたるが、「個を生かし組織力を高める」という考え方で自らを磨いてもらいたい。

(6)総合力
 以上、人材とは何か、ということについて、各項目について、簡潔な説明を行ってきたが、重要なことは、この5つの要素の総合力である。
 上掲の5角形の各頂点を10点満点と考え、現在の自分はそれぞれの項目について何点か、一応自己評価してみてほしい。私の考えでは「これはすぐれた人物だ」と評価できた人は、5項目とも8点以上の方だと考えている。もし、8点以下であると自己評価したならば、その項目を伸ばすように努力を重ねてほしい。私は、かねてより全国各地で農民塾を開き人材育成に努力してきたが、どの農民塾でも塾生に対して、この5角形をグループ討議などに活用し、参加者の自己評価と他者評価のスコアを図に表現して討議を重ね、低いスコアはどこか、を明らかにしつつ、それを伸ばすように努め人材として成長していくための手段として活用してきた。どうか、いろいろの分野で、また、いろいろの機会で活用してもらいたい。

(7)「多様性のなかにこそ強靭な活力は育まれる」
 かねてより私は「多様性の中にこそ真に強靭な活力は育まれる。画一化の中からは弱体性しか生まれてこない」と考えてきたし、いろいろな場面でも説いてきた。しかし、同時に「多様性を真に生かすのはネットワークである」とも説いてきた。つまり、多様性と表記されるようなすぐれた個性をさらに伸ばしつつ、短所を改め、欠陥を補い、新たな創造を目指すためには、どの組織でも、どの地域でも、とりわけどのJAでも、すぐれたネットワークを作り上げてほしいと願っている。

 以上のような内容の討議を行うとともに、さらに、このJA-IT研究会の発祥の地であったJA甘楽富岡の起死回生の戦略・戦術を総括しつつ次代に生かすべく講義も行ったが、それは別の機会に述べることにしよう。

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