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JAの活動:緊急連載-守られるのか? 農業と地域‐1県1JA構想

福島県における数農協の合併(1)2018年1月14日

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田代洋一横浜国大・大妻女子大名誉教授

 本シリーズでは1県1JA化の歴史を追ってきた。ここにきて1県1JA化構想が加速化しているが、福井県を除き西日本にとどまっている。とはいえ東日本でも数農協合併の事例がいくつか見られる。これは東西日本の地域差や県域統合と地域統合の差なのか、それとも今日的な合併という点で同じものを含むのか。それは日本の農協の将来に関わるが、まずは東日本の事例をみたい。今回と次回は福島県をとりあげる。県中央会JA支援部、JA福島さくら、JAふくしま未来のトップにヒアリングさせていただいた。

◆数農協合併への道

tashiroyoichi.jpg 福島県のJAは2016年に表1の4JAに合併した。1991年に17農協構想が打ち出されたが、それではかなりのJAが数年内に赤字化するということで、2009年の県大会で次期構想の検討が決議された。1~6JA構想が検討されていた最中に2011年3月の東日本大震災・原発事故が起こり、被害の大きかったJAそうまが99億円、JAふたばが96億円の全国支援(資本注入)を受けることになり、その条件として組織整備(合併)が付された。

福島県の合併農協の概況

 
 大震災後に再開された組織整備検討委員会では、1県1JA案もあったが、県域面積が広い福島県では時期尚早ということになり、2012年の県大会で4JA構想が決定され、関係機関が立ち上げられた。合併の素案は中央会内の組織整備推進室、組織整備推進本部から提起されたが、実際の合併の素案検討を進めたのは地区JA合併推進協議会における組合長間の協議である。
 福島県は中通り、浜通り、会津の三地域に分かれるが、中通りのJAが被災地の浜通りのJAと対等合併する形となった。県北では自力でやれるJAもあったが、過去の経験から乗り遅れを懸念して合流した。県中南部ではいくつかの組み合わせがあり得たが、磐越自動車道に沿っていわき市―田村市―郡山市を結んでJA福島さくらが「湖(うみ)から洋(うみ)へ」を合言葉に99.6%の賛成を得て誕生した。
 JA夢みなみの合併に際しては、JA東西しらかわ(組合員1万、販売額40億円、貯金562億円)が、事業計画や役員定年制問題を理由に参加しなかったが、地区JA合併協議会は存続させている。
 大震災で資本注入を受けた2つのJAとも、生活と農業は大打撃を受けたが、賠償金や共済支払等で貯金額は県内トップとなり、当期剰余金は他JAより一桁多く、支援金も合併前に返済し終わっている。ならば合併不要だったのかと言えば、「あの時は農業も休んでおり資本注入を受けなければやれないと思った」(JAふくしま未来)という。
 県内JAは被災2JAの営農再開のため2.5億円の積立をしたが、それはそのままになっている。
以上から、大震災は既に方向の定まっていた合併の背中を押し、その時期を多少速めたと位置づけられる。しかし大震災がなければ、浜通り、会津が各一つ、中通り三つになったかも知れない。
 合併に伴い、中央会は、賦課金はそのままとして、部長クラス1名と職員1名を新JAに駐在させている。農林中金福島支店も1名を駐在させている。
 いずれの新JAも、歴史と文化の違う大きなJAが合併したわけで、その組織作りにあたっては最大公約数を探すのに苦労した模様である。

 

◆地区本部制の採否

 まず旧JAをエリアとして、本店と支店の中間にくる組織をどう立ち上げるかが課題だった。結果は、トップに常勤理事を置く地区本部制をとったJAふくしま未来・JA福島さくら、同じく地区本部制をとったがトップは職員のJA会津よつば、職員をトップとする地区支援センターの夢みなみの三つに分かれた。表1からすれば、それは主としてJAの規模による違いと言える。
 JAふくしま未来は、地区本部長(職員)の上に地区担当の常務理事を置いた。地区担当常務は組織代表とし、代表権はもたず、貸付等の決裁権限ももたない。しかし分荷権は地区本部がもち、営農関係にも一定の権限をもつ。信用・共済事業は本店が支店を直轄する。地区本部の金融共済担当部長は本店からの駐在にしたい意向もあったが、現状では地区出身者が務め、進捗管理に当たっている。 このような形をとったのは、正組合員数がほぼ同数(旧JAそうま1.5万、その他は約1万)のJAの対等合併に伴う当初の混乱を抑えるのが一つの理由である。
 JA福島さくらは地区本部長理事を置き、組織代表が務め、常勤で代表権はもたない。その理由はJAふくしま未来と同じである。郡山市、いわき市ともに人口34万程度であり、また旧3JAとも正組合員約1万、貯金1千億で横に並んでいる。職員がトップでは市長や商工会議所と互角に話せるかという問題もある。かくして組合員の意思反映や利便性の確保、地域特性を活かした事業展開をするには「地区本部制をとらざるを得ない」「地区本部にある程度任せないとやっていけない」ということになった。地区本部(長)は一定額以下の貸付権限、関係官庁への報告や臨時雇用者の雇用・解雇の権限をもつ。営農経済部門は地区本部長の権限だが、分荷権はもたない。
 両JAともJAしまねのような何らかの還元措置はとっておらず、地区本部別の損益は人事考課等に反映される。
 常務理事・理事をトップとする地区本部制は、大きなJA同士が合併したことに伴う措置といえ、現在は地区本部制の見直しを検討している。

 

◆理事会制の選択

 県下では旧JA新ふくしま、JA郡山市、JAいわき市が経営管理委員会制度を採用していたが、JA新ふくしまとJA郡山市は理事会制度に戻している。旧JAいわき市だけが経営管理委員会を続けてきたが、合併に際しては「今さら元には戻れない」と言う旧JA郡山市の声に押し切られたようである。
 しかし、旧JAから一回りも二回りも大きくなった現段階では、経営管理委員会制度を再度検討する必要があるとの声も中央会内にはある。
 理事の絶対数はJAふくしま未来とJA福島さくらが多いが、対組合員数ではJA夢みなみやJA会津よつばの方が多い。前二者で絶対数が多いのは前述の地区本部担当の常勤理事との関係でもある。
 JAふくしま未来では非常勤理事40名は旧4JAごとに組合員数等に関わりなく各10名とし、外2名を女性とし、これがスムースに合併できた一つの理由だとしている。女性の考えを経営の反映させたい意向が強く、JA福島さくらは唯一、青年枠2名を設けている。

 

◆財務調整・支店・人事

 合併時の財務調整として、JAふくしま未来では、旧JA伊達みらいとJAみちのく安達には出資金追加割り当てを行い、また地区農業振興積立金を区分して持ち込んだ。JA福島さくらではJAたむらとJAいわきが特定財源を区分して持ち込んだ。JA会津よつばは旧会津いいでとJA会津みどりが地区施設整備積立金を区分してもちこんだ。JA夢みなみは財務調整はしていない。支店は、既に統廃合していたこともあり、合併後3年は統廃合しない方針で臨んだ。支店のあり方は、JAふくしま未来とJA福島さくらは概ね総合支店(母店)―支店、その他は支店一本である。
 とくにJAふくしま未来は支店を組合員の拠点に位置付け、購買品を一緒に置く時代ではなくなったとして、サロンの中に信用・共済を扱う職員がいる形を取りたいとしている(支店再定義)。
 原発被害に関連して、JAふくしま未来では、飯館村の1出張所と南相馬市の小高地区の1支店は建物が残るだけで、対応は母店が行っている。JA福島さくらのふたば地区本部では、合併前からの措置として、5支店が、組合員の主たる避難先ごとに福島・安達・郡山・会津・いわきの各サポートセンタを設置し、職員各5~6名を配置し、貯金や組合員管理、一部の経・共済事業をしている。いずれもなかなか人が戻らず営農再開できないのが悩みである。
 どのJAでも支店(総合支店)ごとに各層の組合員代表からなる支店運営委員会が設けられ、その代表が地区本部運営委員会を構成している。
 職員人事については、地区本部制をとったところでは本店と旧JA間の異動は常勤理事は一期限りと言う申し合わせもあり、あるが、地区本部間の異動はない。新規採用は本店一括とし、とくに被災地では人が集まらないので例えば福島市等で採用してそちらに回している。初任給は管内JAのトップに合わせた。給与については職能給を8等級に統一し直近上位に格付けした。給与が下がった人はいないはずだとしている。

 

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田代洋一横浜国大・大妻女子大名誉教授のシリーズ【緊急連載-守られるのか? 農業と地域‐1県1JA構想】

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