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JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと

【今村奈良臣のいまJAに望むこと】第63回 世界農業遺産を活かす道を考えよう2018年9月29日

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今村奈良臣・東京大学名誉教授

 皆さん、世界農業遺産というのを御存知ですか? 聞いたことはありますか? この世界農業遺産を将来に向けていかに活かすか?という問題提起を踏まえて、中山間地域農業の将来の姿とJAの取り組むべき課題について、これから数回にわたり、実践的な方向づけを提起してみたいと考えています。

 

◆世界農業遺産とは何か

世界農業遺産は、世界の16か国にわたり、37地域が認定されている(2017年1月現在)。この農業遺産は、国連食糧農業機関(FAO)が認定したもので、わが国では、実に8地域が認定されており、中国(10地域)に次いで多く、日本農業のすぐれた特質が世界的に評価されていると受け止めておくべきだと考えている。

 

◆8地域の農業遺産

 その8地域を並べてみると次のようになっている。
(1)トキと共生する佐渡の里山
(2)能登の里山里海
(3)静岡の茶草場農法
(4)阿蘇の草原の維持と持続的農業
(5)クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環
(6)清流長良川のアユ
(7)みなべ・田辺の梅システム
(8)高千穂郷・椎葉山の山間地農林業複合システム
 以上の8地域である。
 私はかつていずれの地域も訪ねたことがあるが、これらに共通するものは何か。
 この8地域を思い浮かべつつ、その特質を一言で表現するならば、阿蘇の草原と長良川のアユを除けば、「谷ごと農業」と表現しうる特徴を見出すことができると思う。

 

◆谷ごと農業とは何か

 それは、谷を単位として、はるか昔の先祖から営々と続けられてきた、水利開発、開田、開畑の歴史の遺産が世界農業遺産として、将来にわたって人類に残すべき貴重な遺産と評価されているのだと思う。
 わが国を代表すると言われている関東平野や新潟平野などの穀倉地帯ではなく、山合いの小さな谷あるいは小河川沿いに長年にわたり造り上げられてきた、いわゆる棚田地域が世界農業遺産として認定され、日本農業の歴史的特質が認められているのである。
 この先人の遺産である棚田をどのように現代さらに将来にわたって活かすか、ということが、農政はもちろん、地域農業に基盤を置く農協(JA)にいま求められているのである。
 しかし、観光資源としての棚田の維持があちこちで―例えば千枚田の復活というように―行なわれているところもあるが、特定の地域の、例えば都市近郊とか観光地隣接地域ならともかく、広大な中山間地域では不可能であろう。
 では、この棚田をどのようにして、現代さらに将来にわたって再生して活かすか?それを私は提起したい。
 その新しい路線とは、のちに述べるように棚田に若干の手入れをして、和牛の放牧を通して、蘇えらせようという提案である。これなら、JA関係者や過疎化の激しい中山間地域の市町村など農政機関も応えてくれると考えている。

 

◆牛の優れた7つの機能

 牛は次の優れた7つの機能を持っていると私は考えかつ説いてきた。
 1、口は一生研ぐ必要のない自動草刈機
 2、喉は食物を運ぶ自動式ベルトコンベア
 3、4つの胃を持つが、特に巨大な第1胃は人間の食べられない草を栄養素に変える巨大な食物倉庫
 4、内臓は牛乳を作る精密化学工場(乳牛の場合はもちろん、和牛も仔牛に授乳する乳は作る)
 5、尻は貴重な有機質肥料製造工場
 6、脚は30度をも超える急坂を登り降りることができる超高性能ブルドーザー
 7、一年一産で子孫を増やす

このすぐれた7つの機能を活かし、中山間地域農業、とりわけ棚田地域農業の再生を図り、世界農業遺産を新しい時代に脚光を浴びさせようではありませんか。

 

本シリーズの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

今村奈良臣・東京大学名誉教授の【今村奈良臣のいまJAに望むこと】

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