JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと
【今村奈良臣のいまJAに望むこと】第78回 JA-IT研究会第50回記念公開研究会の紹介と講話ならびに討議2019年2月23日
記念講演 1
「農山村からの地方創生」(そのⅤ)
明治大学農学部食料環境対策学科 小田切徳美教授
〔おわりに―「太陽路線の地方創生を」-
以上紹介きてきたような報告のうえにたって、小田切教授は次のような総括と提言をおこなった。
(1)「にぎやかな過疎」論からのJAへの期待―ランダムな提起―
これまでの私の調査によれば、多くのケースでJAが無関係であったことをまず認識しておかなければならない。もっとも、実態調査などのなかでは融資などを行うという関わりはみられたものの、ほとんど無関係であったと言ってもよいと思う。
地域運営組織の本質は「地域課題解決協同組合」であると私は考えかつ特徴づけているのであるが、こういう組織にJAは全くと言ってよいほど参画していないと思う。
(2)しかし、農業型「田園回帰」つまり新規就農にあたっては、JAの役割はきわめて大きいはずだ。たとえ、そこで育つ経営はかりに兼業農家という姿であっても、JAはより積極的に取り組まなければならないのではなかろうか。JA-IT研究会の原点でもあるJA甘楽富岡の再建から現在に至る道程を調べてみても、新規参入への支援と全面的指導、そして新規参入者の活力が、JA甘楽富岡の現在の姿に反映していることを改めて研究すべきであろう。
そのことを一般化して述べるならば、「若者のしごとづくり」に総合農協としてのJAのノウハウを提供することはできないだろうか。JA甘楽富岡の実践の成果を一般化して、全国に広げてもらいたいと思う。
(3)地方消滅論が再び
国勢調査の速報値が発表された。地方部では人口減少がさらに加速化した様相が浮かび上がっている。2年前、世間を騒がした「地方消滅論」が再び勢いを強める予感もある。
しかし、この地方消滅論については、すでに多くの批判があり、説得的なものではないことは明らかである。それにもかかわらず、この論議にシンパシーを持つ人々がいるのは、消滅というショックが、地域の危機意識を生み出し、再生への転機となるという期待があるからであろう。
たしかに、永田町や霞が関ではその戦略は成功したかもしれない。すなわち、
〈1〉増田リポート(2014年5月)
〈2〉地方創生本部の立ち上げ(同9月)
〈3〉地方創生法成立(同11月)
〈4〉地方創生戦略の閣議決定(同12月)
という淀みない流れは、その起点である地方消滅論なしにはありえなかったであろう。
しかし、地域では、このショック療法は成功していない。
いや、むしろ再生の途に重大な負の影響を与えているといっても過言ではない。
なぜならば、過疎地域や農山村の現場レベルで、いま、必要なことは、なによりも「諦観からの脱却」である。
人口減少とともに進みつつある空き家や耕作放棄地の増加の中で、人々は時として、諦めてしまうこともある。
そのような気持ちを地域内に拡げたこことが、地方創生のスタートラインである。
行政や支援組織、そして住民自体がそのために日々闘っているのだ。
そうした時に、名指しして、将来的な可能性を「消滅」と断じることは、それに水を差すことにならなかったであろうか。
必要なことは、地域に寄り添いながら「あの空き家なら、まだ移住者が入れる」、「あそこの子供は戻ってきたそうだ」などと、具体的に地域の可能性を展望することであろう。
つまり、「可能性の共有化」こそが、「諦観からの脱却」の具体策であり、地方創生はこうした取り組みの延長線上に見えてくるものである。
<あらためて太陽路線の地方再生を>
それはあたかも、イソップ童話の旅人をめぐる「北風と太陽」の逸話のようである。
つまり、消滅という北からの暴風を吹かせて、地域に取り返しのつかないダメージを与えてしまうのか。そうではなく、地域の可能性を太陽のように温かく見つめて、地域にむきあうかである。
あらためて太陽路線の地域創生が期待される。
本シリーズの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
今村奈良臣・東京大学名誉教授の【今村奈良臣のいまJAに望むこと】
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(135)-改正食料・農業・農村基本法(21)-2025年3月29日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(52)【防除学習帖】第291回2025年3月29日
-
農薬の正しい使い方(25)【今さら聞けない営農情報】第291回2025年3月29日
-
【現地レポート】「共同利用施設」が支える地域農業とこの国の食料 JA秋田おばこ六郷CE(2)2025年3月28日
-
農協の組合員数1021万人 前年度比0.6%減 2023事業年度 農水省2025年3月28日
-
農業構造転換 別枠予算の確保を 自民党が決議2025年3月28日
-
(428)「春先は引越しの時期」?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年3月28日
-
大関と共同開発「ニッポンエール レモンにごり酒300ml瓶詰」新発売 JA全農2025年3月28日
-
愛媛県の林野火災被災者に共済金など早期支払い JA共済連2025年3月28日
-
県内最大級のねぎイベント! 「大分ねぎまつり2025」を開催 JA全農おおいた2025年3月28日
-
「好きがみつかるスポーツテスト」特設サイトをリニューアル 体力測定結果なしに診断 JA共済連2025年3月28日
-
毎月29日は「いい肉の日」限定セール開催 約360商品が特別価格 JAタウン2025年3月28日
-
粘り強く贈答品にも 天候によって形状が変わる「相模原のやまといも」 JA相模原市2025年3月28日
-
土浦れんこんカレー 県産れんこんと豚肉がゴロッと JA水郷つくば2025年3月28日
-
夏も冷涼な気候生かし 完熟ミニトマトで100%ジュース JA新いわて2025年3月28日
-
【中酪25年度事業計画】生乳需給変動対策に参加、離農加速受託戸数9600台も2025年3月28日
-
太陽光発電設備・蓄電池設備を活用 JA帯広大正で再エネ導入2025年3月28日
-
JA三井リース Frontier Innovations1号投資事業有限責任組合へ出資2025年3月28日
-
ウェブコンテンツ「社会のニーズに対応したソリューション」を公開 日本農薬2025年3月28日
-
【組織改定・人事異動】デンカ(4月1日付)2025年3月28日