JAの活動:農業新時代 なくてはならないJAめざして
【座談会・JA大会踏まえ】食料自給・環境保全に自信を(3)2019年3月28日
【座談会出席者】
・JAたじま代表理事組合長尾崎市朗氏
・JA全中教育部教育企画課長田村政司氏
・文芸アナリスト大金義昭氏
尾崎市朗氏の「崎」は正式には異体字です。
◆剛毅果断の決意持ち
大金 ファーマーズマーケット「たじまんま」など、地域密着型の事業・活動も旧来から活発ですよね。
(写真)JA全中教育部教育企画課長 田村政司氏
尾崎 平成23(2011)年、後発ですがファーマーズマーケットをつくりました。田舎なのでやっていけるか心配年30万人が来店し、販売額は7億円を超えます。昨年秋「JAファームズ」としてオープンした2号店はAコープと共同経営です。生産から出荷までの生産者対応を農協で、その後は販売とレジはAコープが担当します。管内は日本海から中山間地まであり、品揃えの豊富さが強みです。
女性会の活動が活発で、経営参画では地域枠5人の女性理事がいます。平成30年度から支店を拠り所とした地域ふれあい活動を活発にさせようと、助成金制度をスタートさせました。4月からは本所の組織広報課を「地域ふれあい課」に名称変更。生活指導員を廃止し、「ふれあい活動推進員」にします。自主的なサークル活動を積極的にコーディネートしてもらおうというものです。
田村 農協は安心して暮らせる地域づくりが使命ですが、JAが全てをやるのではなく、JAと同じように地域に根付いた企業と携しながら分担、協力して進めるという経営スタイルがあってもいいのではないでしょうか。職員にとってもいい教育機会になります。
大金 大会決議にもあるように、JAが地域におけるリーダーシップを発揮したいですね。これからのJAにとって、どのようなマネジメントが求められるでしょうか。
尾崎 協同組合は人の組織です。職員には地域信頼度ナンバーワンをめざすように言っています。人と人との繋がりを強めると共に、組合員の力をどう引き出すべきか。厳しい環境にはありますが、支店をなくすのではなく、金融店舗でない店舗として残し、職員を置いています。地域活動の拠点として使ってもらおうということです。
事業では支店を縮小せざるをえませんが、そのマイナスは渉外活動など、職員の人的な力でカバーできると思っています。農業は無限の可能性があります。それをJAがどうサポートするかが問われます。困難は数多くあると思いますが、協同組合だからこそ、それを乗り越えることができるのです。「剛毅果断(ごうきかだん)」の決意で臨んでいます。
大金 JAが協同組合として生き残るための頑張りどころということでしょうか。「剛毅果断」という言葉に託す尾崎さんの心意気が伝わってきます。
尾崎 来る4月6日は全職員を集め、事業推進大会を開き、SDGs(持続可能な開発目標)の大会にしようと思っています。職員一人ひとりの協同組合の仕事がSDGsに繋がっていることを自覚してほしいという思いです。
田村 JAの職員は、単なる労働者ではなく、協同組合運動者として組合員を組織するオルガナイザー、協同活動を上手に進めるコーディネーターの役割があります。その役割を果たすには、組合員から信頼されなければなりません。SDGsはそのきっかけになります。また協同組合人らしい職員を育てるには、支店活動のコーディネーターぶりなどが評価されるような仕組みも必要ではないでしょうか。
尾崎 しっかりした考えを持ち、協同組合への思いがあれば信頼に繋がりますが、それがきちんと評価されなければなりません。そこで人事制度も、職能等級制を役割等級制に変えようと思っています。重要な仕事をやったら、相当の評価をする必要があります。
トップの姿勢として、常に職員に語りかけ、思いを伝えることが大事だと考えています。そのため情勢分析や課題を整理して、会議やセミナーなど、あらゆる機会をみて話すようにしています。
田村 役員がリーダーシップを発揮するには、組合員と職員の理解が不可欠です。職員の「やっているふり」があるとすれば、役員の言葉がしっかり伝わっていないということです。大事なことは、トップがJA内外の情報を集め、ポイントを整理し、これからのJAの道筋を自分の言葉で話すことです。自ら学び、自ら行動する。それが結果として人を動かす人を育てることに繋がるのではないでしょうか。
尾崎 そうでないと、前に進めません。管内では、5000戸の米農家の集荷量のうち、6割を500戸が占めます。するとTAC5人で500戸を回るという戦略が出てきます。JAの貯金は3500億円ほどですが、70歳以上の人が1500億円を占めており、いま若い人をつかまないと、急な減少を招きます。経営戦略を立てるには、こうした分析が必要です。
大金 戦略・戦術は、客観的な事実を正確につかみ、そのなかでの可能性を追求し、やるべきことを果敢に実行する。このサイクルが大事だということですね。ありがとうございました。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(138)-改正食料・農業・農村基本法(24)-2025年4月19日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(55)【防除学習帖】第294回2025年4月19日
-
農薬の正しい使い方(28)【今さら聞けない営農情報】第294回2025年4月19日
-
若者たちのスタートアップ農園 "The Circle(ザ・サークル)"【イタリア通信】2025年4月19日
-
【特殊報】コムギ縞萎縮病 県内で数十年ぶりに確認 愛知県2025年4月18日
-
3月の米相対取引価格2万5876円 備蓄米放出で前月比609円下がる 小売価格への反映どこまで2025年4月18日
-
地方卸にも備蓄米届くよう 備蓄米販売ルール改定 農水省2025年4月18日
-
主食用МA米の拡大国産米に影響 閣議了解と整合せず 江藤農相2025年4月18日
-
米産業のイノベーション競う 石川の「ひゃくまん穀」、秋田の「サキホコレ」もPR お米未来展2025年4月18日
-
「5%の賃上げ」広がりどこまで 2025年春闘〝後半戦〟へ 農産物価格にも影響か2025年4月18日
-
(431)不安定化の波及効果【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月18日
-
JA全農えひめ 直販ショップで「えひめ100みかんいよかん混合」などの飲料や柑橘、「アスパラ」など販売2025年4月18日
-
商品の力で産地応援 「ニッポンエール」詰合せ JA全農2025年4月18日
-
JA共済アプリの新機能「かぞく共有」の提供を開始 もしもにそなえて家族に契約情報を共有できる JA共済連2025年4月18日
-
地元産小粒大豆を原料に 直営工場で風味豊かな「やさと納豆」生産 JAやさと2025年4月18日
-
冬に咲く可憐な「啓翁桜」 日本一の産地から JAやまがた2025年4月18日
-
農林中金が使⽤するメールシステムに不正アクセス 第三者によるサイバー攻撃2025年4月18日
-
農水省「地域の食品産業ビジネス創出プロジェクト事業」23日まで申請受付 船井総研2025年4月18日
-
日本初のバイオ炭カンファレンス「GLOBAL BIOCHAR EXCHANGE 2025」に協賛 兼松2025年4月18日
-
森林価値の最大化に貢献 ISFCに加盟 日本製紙2025年4月18日