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生協との提携 農業振興に准組の参加を【JAはだの改革推進室長兼組織部長・三瓶壮文氏】2019年4月19日

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JAはだの改革推進室長兼組織部長 三瓶壮文氏 今回の農協改革では、准組合員がJAを必要としているかではなく、農業者つまり正組合員がJAを必要としているかが重要と国は言っている。正組合員が納得する事業展開がなされなければ准組合員利用制限をかけると言うことだ。これに対抗するには農業振興に准組合員が関わる仕組みを拡大することだと考え、さまざまな仕掛けを行っている。
 アクティブ・メンバーシップは、地域農業の振興と協同組合の理念を共有し、意識を持って活動に参加し、事業を利用することを強調し、訴えなければならない。このためには総会、座談会、訪問日など対話活動と教育文化活動など学びを通じた組合員主役の組織運営を追求したいと考えている。
 准組合員との繋がりの基本的な考えは、正・准区別のない組合員対応だ。近年、農業の応援団とかパートナーなどと言っているが果たして応援団なのか。准組合員も組合員であり、主役でもあると思う。

(写真)JAはだの改革推進室長兼組織部長 三瓶壮文氏


 JAはだのでは、1975(昭和50)年に正・准の割合が逆転した。1982年に開催された協同組合研究者や全国の組合長の有志による「JAの准組合員対策討論会」に参加した、当時の組合長の言葉を紹介する。「准組合員対策というのはそのまま正組合員対策であって、正とか准とかで区別すること自体に問題がある。協同活動の中にどのように組み込んでいくかが大切だ。
 事業利用のみを接点とする対応にとどまることなく、運営参画あるいは意思反映の面で具体的に対応していきたい」と語っている。以降、正・准区別のない組合員対応が本格的に行われてきた。その年に開催された第16回全国農協大会で、准組合員対応策が決議された。
 JAはだのでは、総代会ではなく全組合員を対象とする総会を行っており、准組合員にも参加を呼びかけている。准組合員からも賦課金を徴収している(一律500円)。市内120ある生産組合には准組合員も加入しており、市内83会場で春・秋開催する座談会に准組合員の参加を呼びかけている。出席率は20%を超える。毎月26日と27日に全ての組合員宅を訪問しており、今年で51年目となった。さらに、組合員教育事業で准組合員を対象とした講座がある。

 

◆新規就農者を准組に

 また、農業への関心を高めようと、さまざまな仕掛けを行っている。特定農地貸付法の制度を活用した「さわやか農園」や市民農業塾を開設し、農業者の担い手づくりと農産加工の起業者の育成を行っている。市民農業塾は、新規就農、基礎セミナー、農産加工企業セミナーの3コースがあり、新規就農コースは2006年に開始し、今までに85人が修了し、70人が就農した。全体で約12㌶を経営し、今では秦野の農業を立派に支えている。
 修了者は、ほとんどが組合員に加入。特に新規就農コースの卒業者は、全て正組合員となっている。また、「さわやか農園」の利用をきっかけに准組合員に加入する人も多い。さらに、観光農業や体験型農業への取り組みを積極的に行い、農業の果たす役割など実際に農業に関わることにより農業への理解者を増やしている。
 また、JAと秦野市、そして農業委員会がワンフロアで秦野市の農業に関する業務を行う、はだの都市農業支援センターを2005年に開設した。秦野市における農業に関する一体的な取り組みと効率化が図られている。組合員は、今までは、相談したいことがあってもたらいまわしにされたが、便利になったと評価している。
 取り組みの例として「はだの農業満喫CLUB」を紹介する。都市農業を生かすために、担い手不足や荒廃農地対策のために、観光農業を振興することとした。農業者が減少する中、地域農業の衰退を防ぐために、ひとりでも多くの消費者に農業を体験することで農業の魅力を感じ、地域農業の発展を担ってもらおうと企画した。2009年に設立し、現在会員は649人となっており、春と秋に開催するイベント案内を会員に通知する。一人でも多くの人に「農業や食」の大切さを広めていく活動に力を入れている。
 次に生協との連携を紹介する。3月13日に包括協定を結んだばかりで、具体的な取り組みは今後協議していくが、提携先は生活協同組合パルシステム神奈川ゆめコープ。相互の事業を通じ、組合員および地域住民の暮らしに貢献し、一層の地域活性化に資することを目的にしている。
 JAはだのでは、1987年(昭和62年)から生協や森林組合との協同組合間交流を始めた。国際協同組合デーでの研修会、協同組合フェスタのほか、生協への農産物出荷や体験ほ場など様々な交流を行ってきた。
 自己改革を実践するなかで、赤字が膨らむ経済事業、特に生産資材と生活資材について検討した。生産資材は量販店との連携を模索し、JA水戸やJA御殿場を視察するなど現在研究中。生活資材は、取り扱いが減少している女性部の共同購入に着目。現在、女性部員は1000人いるが、共同購入を利用している部員は300人と少ない。取扱高は、平成5年の3億2000万円をピークに2018年度は1600万円まで落ち込んだ。以前は共同購入が主な活動だったが、現在は趣味グループの部員が大きく上回っている。女性部のあり方について見直さなければいけない時期となっているのが現状だ。
 座談会で、組合員から「買い物困難者」対策を講じて欲しい、移動購買車を復活して欲しい、宅配事業を開始して欲しいなど意見、要望が寄せられた。組合員のニーズに応えようと検討した結果、パル生協の取り組みに注目し、話し合いをすすめた。
 パル生協を選んだ理由は、店舗を持たない宅配専門の生協である、個人宅への配送のほかグループでもよい、生活班を継続できる、女性部員だけでなく全ての組合員に呼びかけることができる、週1回の配達や食の安心安全を重視している、SDGs達成にむけて積極的に取り組んでいる、食や農をテーマに様々な活動を行っていることなどだ。

 

◆農業との関係性保つ

 農産物の販売や宅配など、単なる事業連携は全国でも増えているが、今回、連携するのは、「農や食」の取り組みを中心とした協同組合間連携、協業を目指す包括協定とし、8つの項目の実現に向け連携していく。具体策は、これから協議するが、イメージとして生協組合員用の農園開設、地場産農産物を使った料理教室の開催、「はだの農業満喫CLUB」への加入、生協組合員のJA組合員加入、イベントでの交流、「じばさんず」利用呼びかけ、秦野産の農畜産物や加工品の販売などがある。なお、宅配事業の協業を4月1日から始める。
 幅広い交流を行い、消費者として「農業」と関係を持てるよう進めていきたい。今後は、代表者による定例会で連携項目を決定し、連携項目ごとにプロジェクトを立ち上げ実現していこうと考えている。
 JAはだのでは、3年前の第53回通常総会の特別決議で「JAはだのみんなで地産地消運動」に全ての組合員が取り組んで行くことを決めた。内容は、全ての組合員が、一日一品以上地場産の農畜産物を食する。また定期的に地場産の花を家庭に飾り、心身ともにけんこうで明るい生活を送ろう! というものだ。組合員一人ひとりがこの運動を広げて行こうと呼びかけている。この取り組みが市民運動になるようがんばっている。
 総合JAは必要不可欠なもので、仮にこの仕組みが壊されれば、地域における助け合いの協同組合組織は消滅し、農業振興をするどころか地域はますます疲弊することになる。農業振興は、食や地域に関連する人々とともにあることを明確にしなければならない。このため、JAを農業者・農家で構成する組織から農業者・農家及び農業を支える者で構成する組織へと意識の転換をはかる必要があると考える。
 それには、ひとりでも多くの組合員とふれあい、対話活動による「小さな協同活動」や「教育文化活動」が重要であり、これからも知恵を出し合い協同組合への結集を広めていかなければならない。同時に、JAは農業振興・農業所得確保において、今後より一層の努力を傾注し、農業協同組合としての社会的役割を果たしていかなければならないと考える。
 JAは今、厳しい情勢に置かれているが、農協改革は政府や安部首相のため、アメリカのための改革ではない。日本の農業や食、そして組合員のために改革するのだ。全国すべてのJAが同じ条件で運営しているわけではない。646のJA、そして連合会がそれぞれの特徴を生かした改革が必要である。
 私たちJAは、組合員や地域に信頼され、必要とされる「農業協同組合」でなければならない。今、まさに正念場。それぞれの立場で、全力で自己改革に取り組む必要がある。

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