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JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー

「食」で農業支える准組 強み生かし事業モデルを2019年5月21日

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JA東京みなみ常務理事・志村孝光氏

 JAcom4月9日付記事で、新世紀JA研究会の小委員会がまとめた准組合員対策についての報告を紹介しました。今回は報告の内容、具体化に関する意見交換と、直売所を中心とした准組合員の組織化について、JA東京みなみの志村孝光常務の試案を紹介します。

JA東京みなみ 志村孝光常務志村孝光氏

 

 准組合員対策についての新世紀JA研究会企画部会・小委員会に委員として参加した一人ですが、食と農の協同組合として、農業を支援する者の組織として准組合員の農業振興クラブを位置付けた場合、どのようなビジネスが考えられるかについて検討してきました。
 いま、事業計画を検討しているが非常に厳しい状態にあります。低金利のもと、信用事業が難しくなっており、経済事業でいかに収益を確保するかが最大の問題です。低金利はボディブローのように効いています。
 そのような環境のなかで、JA東京みなみでは、農産物直売所を軸とした准組合員への対応を検討してきました。准組合員は2014年から5年間で2000人増えています。貯金残高は、准組合員とのその家族で、全体の約1690億円のうち46%を占めています。これは0.2%の金利上乗せと、准組合員の出資金が1000円以上で加入し易いことから、実質的には金利のため准組合員になる人が多いのが実態です。
 従って、協同組合運動に共鳴するとか、農業振興の応援団になるとかいう気持はまったくないといっていいでしょう。そのような准組合員にいかにアプローチするかですが、もし准組合員の利用がいまの半分に規制されると貯金高は500億円の流出になり、JA経営の根幹を揺るがしかねません。
 そうならないためには、准組合員のあらたな定義付けが必要だと思います。その定義をJAの将来像に置き換えて事業戦略を描くと、農業振興は、生産者が主役の正組合員、消費者が主役の准組合員、この両者による「農と食の協同組合」ということになります。農業生産の拡大はこれまで正組合員を対象に取り組んできたことであり、もう一つの消費者および准組合員に対する何らかの新しい施策が必要となります。

 

※  ※  ※

 

 それはJAの強みを生かした事業戦略です。都市部のJAでは消費地を抱えているということです。具体的には「食」から農業生産を支えることです。それが、小委員会が提案する「JA農業振興クラブ」です。あらたに准組合員の「顧客」を創造するビジネスモデルとして考えています。それは直売所を軸としたメンバーシップ戦略です。
 農業振興クラブは、「食」によって地域・国内農業を支えようという意志のある組合員の組織です。年会費1200円払ってまで参加してもらうには、それなりのインセンティブがなければなりません。それを直売所から発信しようということです。
 その例として、会員割引や商品券、ポイント加算などがあります。つまり事業の利用を通じて運営参画や意見具申できるようにすることで、これを准組合員の意思反映のモデルとして考えることができます。

 

※  ※  ※

 

 このモデルのポイントは何点かあります。まずは会費の使途ですが、クラブの会員が自ら決めることです。半面、この面でコストコホールセールのビジネスモデルをベンチマーク(基準)にできないかと考えています。
 第2に加入のメリットです。インセンティブはつまりメリットで、経済的メリットは会員制度や商品券などです。農業振興の主役として積極的に応援したいという准組合員の思いは心理的メリットです。それにはポイントカードなど、貢献度が見えるようにする必要があります。
 3つ目は直売所のブランド化で、コストコホールセールが参考になります。つまり、そこでしか買えない商品です。「そこでしか」の差別化で、直売所のブランド化を高める必要があります。JA東京みなみでは、昨年11月に新しく直売所をつくりましたが、都市部で地場産の農産物で全てを賄うのは無理です。大消費地にあるJAの役割として、全国の農畜産物を扱うことも必要です。
 4つめは運営参画です。将来的には「食と農」を支えてきた准組合員への議決権の付与、理事への登用の動きは自然に出てくるもので、いきなりトップギヤでなく、まず料理教室や直売所運営への参加などのプロセスを経ることが重要です。
 5つめは組織化の展開です。農業振興クラブは、その地域だけの組織ではなく、都道府県全国段階に広げ、600万人の准組合員を組織化し、共通の規約に基づいて運営するという考えです。

 

※  ※  ※

 

 参考までに、コストコは低価格商品販売戦略の会員制小売業モデルです。年会費は約4200円。1年ごとに更新で会費は戻ってきません。コストコの粗利益率は10%ちょっとで、一般の小売業の20から30%に比べてかなり低い水準です。それを補うのが営業利益と会費収入となっています。一般に小売りはコストが掛かりますが、会費は元がほとんど掛かりません。それが低価格戦略を支えているのです。このモデルをJAの直売所で使えないかと考えています。
 また、JA東京グループは今回のJA大会で、「直売所ブランドの構築」を決めました。現在あるJAの52直売所をチェーン化し、それによって、ブランド品をつくろうということです。その中には、直売所をJAと切り離し、法人による運営方法もあると思います。
 農業振興を通じ正組合員、准組合員が一緒にという発想でないと、これからのJAはないと言ってもいいのではないでしょうか。それに基づいて、准組合員を、食を支える消費者として位置付けるなら直売所がビジネスモデルとして最適だと思います。

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