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JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと

【今村奈良臣のいまJAに望むこと】第86回 中山間地域、とりわけ棚田地帯を生かす和牛の放牧をいかに推進し実践すべきか(第1回)2019年6月1日

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今村奈良臣・東京大学名誉教授

1. はじめに

 令和の新時代を迎え、昭和、平成という時代を通じて、私は、日本の農業・農村そして食料問題や農村にかかわる諸課題について何をしてきたか、どう問題に直面して何をしてきたか、あるいは何を為しえなかったか、というような諸問題を、いま改めて考えているところである。

 

2.「農人伝」の連載に恵まれた

 そういうなかで、全国農業会議所のご高配により、「全国農業新聞」の『農人伝』に登場させて頂く幸運に恵まれた。
 同紙の2019年1月18日号から毎週3月22日号にかけての10回にわたり『農人伝』に「農村現場基点の研究者」として登場させていただいた。榊田みどりさんのすぐれた筆により的確な表現で、私が生まれて昭和、平成の両期を通じて、何を考え、何を行ってきたかを記録していただくことができた。

 

3.「まだやり残していることがある」

 その中で、連載の第10回目に、次のような一文がある。少し長くなるが引用させていただく。
 「ただ、まだやり残していることがあるんです。中山間地域農業の再生です。
 生産効率の低さから耕作放棄地が広がる中山間地域ですが、日本で世界農業遺産に指定されている8地域の大半は中山間地域にあります。平坦な穀倉地帯ではなく、谷を単位として昔から営々と続けられてきた開田・開畑・水利開発の歴史が日本農業の特質と世界は評価しているのです。
 私は、この谷あいの農地再生には山間放牧しかないと考えています。約30年前、『山地畜産研究会』を立ち上げて和牛放牧の実態調査をしてきましたが、いずれも谷あいの棚田地帯でした。
 牛は30度を超える急坂を上り下りでき、林地の下草も"舌刈り"し、その草を飼料に、生乳と有機質肥料を生産するという優れた機能を持っています。しかも、機械と違い1年1産で子孫を増やす持続性もあります。
 その牛の機能を生かし、放牧によって荒れた山地を修復した事例は各地にあります。
 棚田に入る水を止め、飼料用の牧草やレンゲもまき、近隣水田のわらなども飼料に供給し、周年放牧するのです。
 私はこれを『谷ごと農場』と名付け、取り組みを呼びかけてきました。しかし、まだ、道半ば。最大の心残りです。
 広く呼びかけたくて、昔、『谷ごと農場の歌』も作詞したんです。でも、学会発表するわけにもいかないし(笑)、残念ながらここで紹介するスペースもない。今度私と会う機会があったらぜひ一緒に歌ってくださいね。」
 以上で『農人伝』は終わっているのであるが、参考までに「谷ごと農場」の歌詞を次に揚げておこう。いまから27年前に作詞したと記憶しているが、「雪山賛歌」のメロディで歌ってもらいたいと思っている。

 

20190601 今村奈良臣のいまJAに望むこと 図1

 

本シリーズの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

今村奈良臣・東京大学名誉教授の【今村奈良臣のいまJAに望むこと】

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