JAの活動:今さら聞けない営農情報
【今さら聞けない営農情報】第8回 土壌診断の必要性2019年6月14日
作物の健全な生育のために必要なものに養分があります。この養分は、実は水や温度とともに土壌を介して作物の生育に影響を与えています。このため、作物の健全な生育のためには土壌の良し悪しが大きく影響します。
ところが、肥料価格の高騰以来、コスト削減のため土づくり資材が真っ先に削られるケースが増え、収量が低下しつつあるほ場も増えているといわれています。
実際に、ある資材メーカーの話によると、収量が思うように上がらないほ場に土づくり資材を投入したところ、収量が2割以上も向上した事例も珍しくないそうです。
ということは、日本の多くのほ場で土壌の状態が以前より悪くなっている可能性はないでしょうか? 特に、収量減に悩んでいるような場合には、真っ先に土壌診断を実施し、ほ場在の土壌の状況、良し悪しを見極めて、正しい対策を講じる必要があります。
1.土壌診断とは
土壌の性質をみれば、水や養分が作物の生育に適しているかどうかを判断することができます。
土壌の性質は、物理性(水はけの良し悪し、土の柔らかさ・団粒構造)、化学性(酸性度(pH)、養分)、生物性(微生物量・有機物の分解性)に分けることができ、土壌診断はこれらの性質を分析し、総合的にして対策を練ります。特に地力は、この3つの性質が相互に関係し合って形づくられていきます。
2.土壌診断の実際
では、実際に土壌診断ではどのようなことを診断するのでしょうか?
化学性では、土壌に含まれる養分量、土壌の酸性度を表すpHなどを調べます。
物理性では、土壌の硬度を計り、水はけや通気性を調べます。
生物性では、有機物を分解する微生物の働きを調べます。
これらの調査結果をもとに、作物の生育に悪い部分を改良するよう対策を練ります。
実際の土壌診断手順は以下のとおりです。
(1)採土
1つのほ場から対角線上の5か所から表層1cm位を除いた深さ10~20cmまでの作土を採取します。1か所につき生土500gずつ取り、5か所分の土をよく混合して500~1000gを試料とします。
(2)試料の調整
試料は新聞紙などに広げて、日蔭で1週間ほど乾燥させます。その後、土壌を軽く砕いた後に1~2ミリの篩を通し、土塊が残らないよう試料の全てをふるいます。
ふるった試料(細かな土)を200~300g袋に入れて分析用の試料とします。
(3)分析項目
土壌診断で調べる項目は、一般的には次のようなものです。
pH、EC、アンモニア態窒素、硝酸態窒素、有効態リン酸、交換性カリ、交換性石灰、交換性苦土、有効態ケイ酸、遊離酸鉄、腐植、CEC、リン酸吸収係数
(4)総合的な診断と施肥設計
分析結果をもとに総合的に判断し、適正な土壌改良のための施肥設計を実施
3.土壌診断の必要性
日本の土壌はかつて、リン酸が少ないなど作物の健全な生育には土壌養分が不足したほ場が多くありました。その後、収量を増やすための施肥が施されるようになり、大きな成果があがりましたが、現在では過去とは逆に養分過剰なほ場も見受けられるようになりました。
ただし、日本の土壌は様々な性質のものがあり、一概にどの成分が多いのか、不足しているのかはわかりません。そこで、土壌診断をして、土壌中の養分を的確に把握する必要があります。土壌中の養分が的確にわかれば、何を足して、何を減らせばいいのかが明確になり、必要な養分だけを補う適正施肥が可能となるのです。過剰な施肥をしないので、コスト低減にも結びつきます。
このように、土壌診断は豊かな収穫のための第一歩となります。
まだやったことがないようであれば、まずは土壌診断を実施してみてはいかがでしょうか?
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