JAの活動:今さら聞けない営農情報
【今さら聞けない営農情報】第33回 ジビエ<1>2019年12月27日
最近何かと話題のジビエ。農業現場では農作物被害を及ぼす大敵も、食材としては評価が高く、鳥獣害対策でジビエに取り組む地域が増えているとのことです。今回はこのジビエについて調べてみました。
日本におけるジビエは捕獲数や被害の多いシカ、イノシシを中心にとらえられていますが、実際の定義では、狩猟の対象となっている野生鳥獣は全てジビエとのことです。
つまり、シカやイノシシはもちろん、野ウサギ、山鳩、真鴨、小鴨、尾長鴨、カルガモ、キジ、コジュケイ、最近話題のカラス、ハクビシンといった珍しい動物もジビエです。
協会のホームページによると、
「ジビエとは狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味する言葉(フランス語)で、ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから発展してきた食文化です。その昔フランスなどでは、ジビエを使った料理は自分の領地で狩猟ができるような、上流階級の貴族の口にしか入らないほど貴重なものでした。そのためフランス料理界では古くから高級食材として重宝され、高貴で特別な料理として愛され続けてきました。そこでは、動物の尊い生命を奪う代わりに肉から内臓、骨、血液に至るまで、全ての部位を余すことなく料理に使い、生命に感謝を捧げようという精神が流れています。山野を駆け巡り大空を舞った天然の肉は、脂肪が少なく引き締まり、栄養価も高い、まさに森からの贈り物。力強く生命力に溢れた冬季限定のごちそうです。」
とあります。
つまり、ジビエは高級食材で、貴重な食品でもあるのです。ですが、農業にとってみれば、農作物に害をなす厄介なやつでもあります。
「捕獲鳥獣のジビエ利用を巡る最近の状況」H31.3農林水産省より
農林水産省の「捕獲鳥獣のジビエ利用を巡る最近の状況(平成31年3月)」によれば、野生鳥獣による農作物被害額は、平成29年度は164億円であり、平成21年度頃の200億円より減っています。これは、全国での捕獲体制強化や改正鳥獣保護法(平成26年)の成果として考えられていますが、依然として農作物への被害は大きい状況です。その被害は、7割がシカ、イノシシ、サルによるもので、特に、シカ、イノシシの被害が増加しているとのことです。
この被害を軽減するためにも、各地でシカやイノシシをジビエとしてもっと活用できるようにすれば良いのですが、それを進めるためには1つ課題があります。それは、ジビエ肉処理施設の問題です。ジビエ肉は、死んだその場で新鮮なうちに、血抜き、解体作業が行われれば、臭みもなくおいしい肉が得られるのですが、死んでから解体まで時間が経つほど臭みが増し、食肉としては使いにくいものになります。
ところが、食品衛生法の決まりで、食肉として流通させるためには、法の基準に適合した衛生的な施設で解体する必要があり、山野で解体したものは、食肉として流通できません。そのため、おいしい肉を得るためには、罠で生け捕りにして、処理施設に運ぶ必要がありますが、それにかかる手間と労力が大きく、ジビエ振興の足かせになっているようです。
なお、今回ご紹介した内容は、(一社)日本ジビエ振興協会のホームページに詳しく掲載されています。
本シリーズの一覧は以下のリンクからご覧いただけます。
【今さら聞けない営農情報】
重要な記事
最新の記事
-
米農家(個人経営体)の「時給」63円 23年、農業経営統計調査(確報)から試算 所得補償の必要性示唆2025年4月2日
-
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(1)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
-
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(2)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
-
変革恐れずチャレンジを JA共済連入会式2025年4月2日
-
「令和の百姓一揆」と「正念場」【小松泰信・地方の眼力】2025年4月2日
-
JAみやざき 中央会、信連、経済連を統合 4月1日2025年4月2日
-
サステナブルな取組を発信「第2回みどり戦略学生チャレンジ」参加登録開始 農水省2025年4月2日
-
JA全農×不二家「ニッポンエール パレッティエ(レモンタルト)」新発売2025年4月2日
-
姿かたちは美しく味はピカイチ 砂地のやわらかさがおいしさの秘密 JAあいち中央2025年4月2日
-
県産コシヒカリとわかめ使った「非常時持出米」 防災備蓄はもちろん、キャンプやピクニックにも JAみえきた2025年4月2日
-
霊峰・早池峰の恵みが熟成 ワイン「五月長根」は神秘の味わい JA全農いわて2025年4月2日
-
JA農業機械大展示会 6月27、28日にツインメッセ静岡で開催 静岡県下農業協同組合と静岡県経済農業協同組合連合会2025年4月2日
-
【役員人事】農林中金全共連アセットマネジメント(4月1日付)2025年4月2日
-
【人事異動】JA全中(4月1日付)2025年4月2日
-
【スマート農業の風】(13)ロボット農機の運用は農業を救えるのか2025年4月2日
-
外食市場調査2月度 市場規模は2939億円 2か月連続で9割台に回復2025年4月2日
-
JAグループによる起業家育成プログラム「GROW&BLOOM」第2期募集開始 あぐラボ2025年4月2日
-
「八百結びの作物」が「マタニティフード認定」取得 壌結合同会社2025年4月2日
-
全国産直食材アワードを発表 消費者の高評価を受けた生産者を選出 「産直アウル」2025年4月2日
-
九州農業ウィーク(ジェイアグリ九州)5月28~30日に開催 RXジャパン2025年4月2日