JAの活動:今さら聞けない営農情報
【今さら聞けない営農情報】第38回 農薬の空中散布登録に関する規制緩和2020年2月10日
政府の規制改革推進は多方面の産業界に影響を与えています。特に農協組織や生産資材価格に対する規制緩和の動きはあまりにも性急かつ高圧的であったことは記憶に新しいところです。
この規制緩和は、農薬の登録制度にもおよんでおり、特にドローン規制緩和に伴う農薬登録の拡充の動きが急ピッチで進められています。
現在のドローンは、バッテリーの持続時間が短く、満充電で15分ぐらい飛行できるものが一般的です。そうすると、作業効率をあげるためには、面積あたりの散布水量を少なくする必要があり、現在の農薬登録でそれを実現しているのが空中散布(有人・無人ヘリ)用の農薬です。
空中散布用の農薬は、濃厚少量散布(有効成分が濃い薬液を少ない液量で散布すること)によって効率性を高めています。
例えば、畦畔ノズルなどで1000倍液を1反あたり100リットル散布する登録農薬と同じ有効成分を空中散布する場合、8倍液を1反あたり0.8リットル散布するといった具合です。
濃厚少量散布では、薬液が濃いだけに、作物への薬害や飛散による残留被害のリスクが伴います。このため、空中散布で登録ができる農薬には、濃厚な薬液でも薬害が起こらず、散布薬液が少量で作物へのかかり具合が少なくても効果を発揮することが求められます。
また、濃厚液が付着することでの、作物残留の影響も考慮しなければなりません。このことを確かめるために、空中散布農薬は、地上散布とは異なった試験が必要となっていました。
現在でも、地上散布農薬で使用方法欄に「散布」と書いてあれば、ドローンなどの空中散布で使用できます。ただし、多くのドローンの場合、積載できる薬液量は10リットル程度ですので、1回の飛行で1アールしか散布できないことになります。例えば、1000倍液を10アールあたり100リットル散布する農薬をドローンで散布するためには、10リットルの薬液を計10回散布しなければならなくなり、あまりにも不効率です。
これが、8倍液を10アールあたり0.8リットル散布する空中散布用農薬であれば、ドローンに8リットルの薬液を積み込めば、一飛行で10アールの10倍、1haの散布が可能となります。これであれば、1度の飛行時間が短いドローンであっても効率の良い散布ができるようになるのです。
しかしながら、現在の濃厚少量散布の農薬登録は、主に水稲を対象としたものばかりであり、果樹や野菜といった園芸作物への濃厚少量散布の登録農薬は圧倒的に少ない状態です。
そこで、濃厚少量散布の登録を取りやすくするように規制緩和され、ドローンで使用できる濃厚少量散布農薬の登録拡大が図られるようになりました。
このことを受け、現在、多くのメーカーや試験場で濃厚少量散布登録の拡充に向けた作業が進められています。
本シリーズの一覧は以下のリンクからご覧いただけます。
【今さら聞けない営農情報】
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