JAの活動:シリーズ
コンプライアンス6 農薬取締法その5【今さら聞けない営農情報】第64回2020年8月15日
農薬取締法その5です。
農薬取締法は、農薬残留基準値を超えない正しい使い方ができるように、使用基準として、用法・用量・使用回数・収穫前使用日数等を定めています。
したがって、使用基準を守って使用していれば、農薬残留基準値を超過することはありませんが、残念ながら、基準値超過事例が毎年発生しています。その原因は、人為的なミスがほとんどであり、起こり得るリスクをよく理解していれば防げるものばかりです。前回、登録外使用と散布器具の洗浄不足を紹介しましたので、今回は、被害者にも加害者にもなりうるドリフトについて紹介します。
ドリフトとは、散布した薬液が風に乗って散布対象の圃場外に飛散することをいいます。
ドリフトは、水和剤やフロアブルなど水に希釈して散布する薬剤や50μほどの微粒子である粉剤を使用した場合によく起こります。水希釈薬液の場合は、散布機のノズル等から放出された霧状の散布液が、特に圃場の端などを散布する時に風にのって飛散することによって起こります。果樹園の農薬散布で使用されるSS(スピードスプレイヤー)では、機械が発生させる強風で遠くまで飛ばしますので、SSで圃場の端を散布する時は特に注意が必要です。粉剤の場合は、製剤そのものが軽く、空気中を漂いながらゆっくりと沈降して作物に付着するので、空気中を沈降している時に風に乗ると、遠くまで飛散してしまいます。
これで何が起るかというと、もし、隣の圃場に散布している農薬の登録外作物であったとしたら、ドリフトにより隣の圃場の作物に付着すると、実際には農薬散布をしていないのに、登録外使用をしたことになり、隣の圃場の作物は出荷できなくなってしまいます。
自分の圃場は正しく散布していても、ドリフトしてしまったがために、隣の圃場に出荷できないという損害を与えてしまいます。この場合、ドリフトさせた方が加害者、ドリフトされた方が被害者になります。隣の圃場が自分のものであれば、自分の損害だけで済みますが、持ち主が異なれば、その持ち主に損害賠償をしなければならなくなります。散布前には周りの作付け状況を確認し、確実に対処するようにしなければなりません。
また、以外と盲点なのが、粒剤の散布の時です。粒剤は、目に見えるほど粒が重くて大きく、風に流されることは少ないので、狙った範囲内に上手に散布することができる製剤です。
ところが、散布機械内部を通過する時、強い力でたたきつけられるようにして管の内部にぶつかるので、粉化といって粒剤の粒が欠けて粉状のものができる場合があります。この粉状のものは、軽く風に乗りやすく、粒剤散布中に風が吹いたりするとこの粉状になった粒剤の製剤が飛散してしまうことがあります。ドリフトがしにくいと思っている製剤でも起こり得ることを理解しておく必要があります。特に水稲除草の粒剤が粉化してドリフトした場合、もし園芸作物に付着すれば適用外使用もそうですが、作物自体が枯れてしまう被害が起こり得ますので注意が必要です。
では、ドリフト対策はどのようにしたらよいでしょうか?
(1)風の無い時(風速3m/s以下)に散布する
(2)圃場の周りに防風ネットなどを張る
(3)あらかじめ隣の圃場の作物に寒冷紗などをかける
といった対策が一般的です。
その他、農薬の散布を回りの農家に知らせるなど、お互い周知しながら作業する必要があります。
いずれにしましても、このようなリスクがあることを理解した上で、正しく農薬散布を行って下さい。
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