JAの活動:今さら聞けない営農情報
コンプライアンス7 農薬取締法その6【今さら聞けない営農情報】第65回2020年8月21日
農薬取締法その6です。
農薬取締法は、農薬残留基準値を超えない正しい使い方ができるように、使用基準として、用法・用量・使用回数・収穫前使用日数等を定めています。
なので、使用基準を守って使用していれば、農薬残留基準値を超過することはありませんが、残念ながら、基準値超過事例が毎年発生しています。その原因は、人為的なミスがほとんどであり、起こり得るリスクをよく理解していれば防げるものばかりです。前回までに、登録外使用と散布器具の洗浄不足、ドリフトを紹介しましたので、今回は、散布回数超過について紹介します。
ところで、農薬の散布回数と収穫前使用日数がどのようにして決められているかご存じですか?
どちらの基準とも、作物残留試験結果とADI(一日摂取許容量)から適切な基準を割り出します。作物残留試験とは、登録を取ろうとする作物に実際に散布した時、散布後何日でどのくらいの濃度になっているか? など、作物体内の農薬濃度がどのように減っていくかを調べるものです。ADIは、その名のとおり、その農薬を毎日一生涯食べ続けても何ら影響が出ない量のことで、幾多の動物実験結果に100倍程度の安全係数をかけて、作物ごとに決められます。安全係数とは、動物実験による結果を人間に当てはめるために、動物実験ででてきた無毒性の量をさらに100分の1にして、より安全性を高めるためのものです。
一般に農薬は、散布回数が多いほど、また散布から日が経っていないほど作物への残留量は多くなります。このことを考慮して、ある作物が収穫される時、使用した農薬の残留量がADIを超えないように作物残留試験結果と見比べて使用回数や収穫前使用日数を決めています。
では、使用回数の間違いはどのようにして起こるのでしょうか?
一番多いのが有効成分による回数超過です。実は農薬の製品名は、有効成分とは異なることがほとんどで、製品名から有効成分がわかることは少なく、また、同じ成分が違う商品名で売られていることも意外と多いのです。ところが、散布回数は製品の使用回数と有効成分の使用回数が定められており、法律上、有効成分の使用回数を超えて使うことはできません。例えば、ある成分Xの成分使用回数が2回で、同じ成分Xを含むA農薬とB農薬があった場合、A農薬を1回、B農薬を1回であれば成分Xの使用回数は合計2回ですので正しい使用になります。しかし、もしA農薬を2回使用した後にB農薬を1回使用した場合は、成分Xの使用回数が合計3回となり、農薬取締法違反(使用回数超過)になってしまいます。
このため、農薬の使用回数は必ず有効成分でカウントするように心がけて下さい。
最近は、省力化や性能の向上、耐性・抵抗性の発達回避のために、異なる有効成分を混合した農薬が増えているので、注意が必要です。次回は、収穫前使用日数です。
このシリーズの一覧は以下のリンクをご覧ください
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(130)-改正食料・農業・農村基本法(16)-2025年2月22日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(47)【防除学習帖】第286回2025年2月22日
-
農薬の正しい使い方(20)【今さら聞けない営農情報】第286回2025年2月22日
-
全76レシピ『JA全農さんと考えた 地味弁』宝島社から25日発売2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年2月21日
-
農林中金 新理事長に北林氏 4月1日新体制2025年2月21日
-
大分いちご果実品評会・即売会開催 大分県いちご販売強化対策協議会2025年2月21日
-
大分県内の大型量販店で「甘太くんロードショー」開催 JAおおいた2025年2月21日
-
JAいわて平泉産「いちごフェア」を開催 みのるダイニング2025年2月21日
-
JA新いわて産「寒じめほうれんそう」予約受付中 JAタウン「いわて純情セレクト」2025年2月21日
-
「あきたフレッシュ大使」募集中! あきた園芸戦略対策協議会2025年2月21日
-
「eat AKITA プロジェクト」キックオフイベントを開催 JA全農あきた2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付、6月26日付)2025年2月21日
-
農業の構造改革に貢献できる組織に 江藤農相が農中に期待2025年2月21日
-
米の過去最高値 目詰まりの証左 米自体は間違いなくある 江藤農相2025年2月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】有明海漁業の危機~既存漁家の排除ありき2025年2月21日
-
村・町に続く中小都市そして大都市の過疎(?)化【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第329回2025年2月21日
-
(423)訪日外国人の行動とコメ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月21日
-
【次期酪肉近論議】畜産部会、飼料自給へ 課題噴出戸数減で経営安定対策も不十分2025年2月21日
-
「消えた米21万トン」どこに フリマへの出品も物議 備蓄米放出で米価は2025年2月21日