JAの活動:今さら聞けない営農情報
SDGs 16【今さら聞けない営農情報】第95回2021年3月26日
さて今回は、SDGsゴール15番目「15.陸の豊かさも守ろう」を紹介します。
このゴールの意味は、「陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」で、12のターゲットがあります。
このターゲットの概要は表のとおりですが、農業に関係するターゲットは、15.6と15.8の2つです。
まず、15.6ですが、「国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。」です。
遺伝資源とは、農業で言えば、作物の品種が当たります。品種には育成者権があり、何人も育成者への断りまたはロイヤリティの支払い無しに勝手に栽培することはできません。ところが、交通機関が発達した現代では、秘密裡に日本の優れた品種が海外に持ち出される事例があとを絶ちません。世界のすべての人々が国際ルールをきちんと守り、遺伝資源の利益が公正に配分できるようになる必要があります。
次に、15.8「2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。」です。
これは農業においては大きな問題です。一番クローズアップされるのが外来雑草です。
外来雑草には繁殖力が大きく、在来種を駆逐するものが多く、外来雑草の種が日本に入って来ないようにしなければなりません。しかし、トウモロコシなど飼料作物に混じって雑草種子が入ってくることが多いようです。それらが、家畜の消化管でも消化されず、発芽能力を保持したまま糞の中に混じることが多いようです。この糞が野外で排泄されれば、外来雑草の種がほ場に播かれたのと同じになってしまいます。
ただ、雑草の種は、一般的に70℃ぐらいで発芽能力が失われますので、発酵時に70℃以上の熱を発する堆肥化の過程で死滅化させることができます。堆肥化の過程で雑草種子が死滅するほどの高温を長時間保つためには、糞と十分量の有機物をよく混ぜて堆肥が完熟となるまで長い時間をかける必要があります。また、農家側も未熟堆肥は使わないように心掛けるといった工夫が必要です。
一番いいのは、外国で雑草防除をしっかりと行い、飼料作物に雑草の種が混じらないようにすることですが、海外であることと、コストがかかることから輸入価格に影響があるため、なかなか徹底できないのが現状です。SDGsをきっかけに雑草の種を混じらせないといった機運が高まってほしいものです。
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