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JAの活動:JA全農部長インタビュー「全力結集で挑戦 未来を創る-2021年度事業計画」

【JA全農 部長インタビュー 2021年度事業計画】住吉弘匡輸出対策部長 マーケットイン型の事業確立へ2021年5月12日

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JA全農の海外戦略の柱の一つが農畜産物の輸出だ。その狙いは国内農業の振興にある。住吉弘匡部長に事業の重点を聞いた。

住吉弘匡輸出対策部長住吉弘匡輸出対策部長

国内生産基盤の維持・拡大

-全農の輸出事業の位置づけを改めてお聞かせください。

輸出は手段であって、ゴールは国内生産基盤の維持、拡大とそれを生産者の手取りの維持、向上につなげることです。国内需要の減少が見込まれるので、国内生産の維持、拡大には新たな販路が必要ですが、そのひとつとして、輸出拡大を推し進めていこうということです。もちろん事業である以上目標を立てており、今年度は全農グループとして輸出目標170億円をめざしていますが、これはあくまでも国内の農業生産の維持・拡大に資する目標ということです。

-どんな取り組みを進めますか。

今回は、あらためて3つの戦略を打ち出しました。「マーケットイン」「アライアンス」「投資とリスク管理」がその柱です。

「マーケットイン」の取り組みでは、成長を続ける海外市場に向けて、出口戦略(販売先)の明確化と海外市場で求められる品質と価格の実現に取り組みます。

そのために、産地から市場、仲卸、輸出業者、輸入業者、現地卸、店舗そして消費者が店頭で商品を購入するという複雑な流れを極力、全農グループで短縮したいと考えています。このうち輸出と現地での輸入は全農インターナショナルが担う。これによって国内から海外までの商流を一気通貫させ流通コスト削減につなげます。そしてその削減分の一部は生産者に還元していき、一部は競争力の強化に活用します。

こういう取り組みにより、JAグループの結集を産地に呼びかけていきます。

例えば、現在運賃が高騰している海上コンテナの積載効率を上げるため、産地ごとにばらばらの船に積み込むのではなく、いくつかの産地を集約し混載して輸出しようということや、国も提唱している地方港、地方空港の活用についてもコスト低減につながるものは取り組んでいきます。

海上コンテナの積載効率の向上海上コンテナの積載効率の向上

また、実需者の販売計画に基づく生産と出荷にも取り組みます。たとえば、海外に出店している量販店は何月に、どの品目をどのくらいの数量で、どこの国で販売するのかという販売計画を作成していますが、それをわれわれと共有し、その計画に合わせた生産出荷を産地に提案していくということです。これは次期シーズンから取り組みたいと思っていますが、これによって生産者が安心して生産・出荷できる体制を整えることができ経営の安定にもつながっていきます。

海外に進出する食品メーカー・小売・外食企業と連携したオールジャパンブランドとしての取り組みのひとつに、産地リレー出荷があります。香港マーケットでは、甘藷の商品で産地や品種の違いをパッケージに明記したうえで、統一感のある包装デザインを採用しオールジャパンブランドとしてリレー出荷しました。これによって海外店舗の棚を長期間確保し、他国の競合品とも競争しながら売り上げの拡大につなげようということです。これまでに甘藷で一定の成果を挙げましたから、今後はイチゴやブドウに広げていきたいと考えています。

産地リレー出荷のイメージ産地リレー出荷のイメージ

そのほか輸出適性の高い品目を拡大することなどですが、これは産地への生産提案が必要になりますから、耕種資材部や米穀部、園芸部などオール全農で産地づくりの支援に取り組んでいきます。

マーケットメイクも重視

あるシンクタンクの調査では、年間消費額3万ドル以上のアジアの富裕層は平成30年に比べ、令和6年には2.5倍に拡大すると予想されています。そこで今後はミドルクラスの富裕層が増えていくことを見据え、ミドルクラスとそのさらに上のトップクラスとで層を分けてサービスや商品展開を強化していきます。たとえば、現地量販店で、トップクラスの富裕層をVIP会員と位置づけていますが、その顧客にSNSやメールなどを通じてフェア情報などをダイレクトに提供するといったことです。一方でミドルクラスには手が届きやすい和牛の部位などの商品を提案し、富裕層別の販路の開拓や需要拡大をめざしていきます。また、加工品の輸出に力を入れていきます。

今年4月1日に、宮城県のパックごはん製造販売会社「JA加美よつばラドファ」に約70%の出資を行い、令和4年には新工場を稼働させますが、特徴ある商品を開発して輸出していきたいと考えています。そのほか日本酒や低アルコール飲料(RTD)の分野でも海外の実需者ニーズにあわせた商品開発をすすめ輸出拡大につなげていきたいと考えています。

研究開発で外部と提携

-「アライアンス」とはどういう取り組みですか。

柱の1つは研究開発です。4月16日に農研機構と包括連携協定を締結し、農研機構が行う品種開発に実証栽培試験などで協力していくほか、大手企業と連携した鮮度保持の技術開発でも輸送実証試験などに、全農各部門の協力を得ながら取り組んでいきます。

もう1つの柱は他企業との連携で、そのうち青果物の輸出拡大をめざして卸会社との連携も考えていきます。青果物は圧倒的に市場出荷が多いですから、卸会社と連携し青果物の調達を補完、強化しようということです。

それから海外の小売・外食企業とのアライアンスも進めており、具体的にはアジアを中心に新規開店を進めるPPIH(ドン・キホーテグループ)や大手寿司外食チェーンのスシローなどに、新たな食材や加工品、原料米などを輸出していきます。

投資とリスク管理

3つめの「投資とリスク管理」のうち、「投資」については、全農職員が駐在し和牛のカット技術を現地で指導している米国ロサンゼルスの和牛加工処理施設(P&Z FINE FOODS)と同様の仕組みを他の地域でも検討をしていきます。

米国の和牛加工処理施設米国の和牛加工処理施設

パックごはんについても将来的には中国や香港向けに複数の製造工場を設けることを検討しています。また、昨年11月に香港の現地企業の炊飯機器に一部設備投資をして、ビジネスランチ向け弁当を販売していますが、こうした国産米に付加価値をつけた販売は何も香港に限ることではありませんから、他地域でも検討してきたいと考えています。

-「リスク管理」にはどう対応するのですか。

たとえば、輸出先国が不測の事態に陥り、一時的に輸出ができなくなった場合に備え、複数の輸出先国を国内の量販店等と連携することで確保し、リスクをヘッジするといった取り組みです。

また、産地とは複数年契約をしていきますが、日本国内でも自然災害が多発し、それによって作物が輸出規格に満たない場合も考えられます。その際には、われわれがほ場ごと一括買取りを行い、海外で販売していこうと考えています。それによって国内の価格変動にも備えていきます。

今までの輸出事業はやはりプロダクトアウトでした。それをマーケットイン中心に切り換えるということです。産地には出口戦略を明確にした上で生産を提案し、これらの取り組みにより、国内生産基盤の維持拡大に貢献し、生産者の手取り維持・向上をめざしていきます。

【経歴】
住吉弘匡部長(すみよし・ひろまさ)1961年生まれ、福岡県出身。1986年新潟大学法学部を修了しJA全農に入会。大阪支所、生産資材部次長、輸出対策部次長を経て2019年4月から現職。

JA全農 部長インタビュー2021年度事業計画

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