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JAの活動:農協時論

【農協時論】コロナでの気付きとJAグループの方向性 農を通じた持続可能な環境づくりをめざして 八木岡 努・茨城県農業協同組合中央会会長2021年6月7日

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長引くコロナ禍のなかで、さまざまな事が見えてきたと八木岡努会長は感じている。そしてそこからJAグループが取組むべき課題が見えてくるとも。それは「国産国消」の再認識、地方分散の流れと「農への憧れ」、そして「協同組合」の大切さだと指摘する。

八木岡 努・茨城県農業協同組合中央会会長八木岡 努
茨城県農業協同組合中央会会長

世界的な新型コロナウイルスの流行は、経済の停滞と共に多くの命を失うことになりました。それでも対策が早く的確だった国から回復し始め、ワクチンによっていよいよ出口が見え始めています。

今回の世界的パンデミックは、命と経済の両立をはかる厳しい対応と同時に、各国と比較しながら日本の姿を冷静に判断する絶好のチャンスになったと思っています。日本人の清潔さ、経済的な蓄えや集団行動での順応さは、初期拡大を防ぎロックダウンに至らずに済んだ要因の一つです。

一方で国全体でのデジタル化の遅れ・データ活用の未熟さは、科学的根拠を示せないまま同じフレーズの"お願い"を繰り返す対策に留まり、今なお厳しい状態が続いている原因ともなっています。

そして、現下、産業界で同時進行している「デジタル化(DX)」「グローバル化」「持続可能な環境づくり」の3つの大きなとりくみは、コロナ禍の中いよいよ重要度を増しています。

JAグループについても同様で、サービス・利便性の向上や業務効率化に向けたデジタル活用、行き過ぎたグローバル化や種の問題に対応した安心安全な国産農畜産物の安定供給、農業者の高齢化やカーボンニュートラル化に対応した持続可能な営農環境づくり(※)などは、大地と地域に根ざして事業を行う我々にとっても最重要課題です。

(※)今般、農水省から公表された「みどりの食料システム戦略」では、脱炭素社会に向けた2050年までの行程が提示されました。今後、戦略をJA現場で進めるにあたっては、新技術の採用・導入だけでなく伝統有機農法の再評価など"原点回帰"してコトに当たる必要があります。

以上を踏まえ、私見ながら農業から見た新型コロナウイルス拡大での気付きとアフターコロナの方向性について考えてみます。

1つ目の気付きは「国消国産」の再認識です。コロナ禍の影響で食料輸入が不安視されると、食料自給率(カロリーベース)38%の我が国ではとたんに食料調達リスクが議論されました。これに、食料を含めすべての輸出入に付きまとうCO2ゼロエミッション問題を加えると、エネルギーロスの少ない国産の安全安心な農畜産物を提供する重要性が否応なしに増しています。

JAグループは、今後とも消費者に近いところで安定して農畜産物を生産し続けるとともに、多様なニーズに沿った(輸入食材にとって代わり得る)食材を提供することが責務です。そのためには、消費者ニーズと営農のマッチング、流通や販売プロセス、市場評価の次期作への反映など、あらゆる段階でデジタル化によるデータ活用が必須です。幸いJAグループは数多くのステイクホルダーと関わり有効なデータを入手できる環境にあります。これらを活用し、より効率的に、かつバラエティに富んだ「国消国産」を進めていく必要があると考えます。

2つ目は地方分散の動きです。都市集中が限界に近い現状で、コロナ禍がオンライン活用での在宅勤務を急速に普及させるエンジンとなりました。いつでもどこでもインターネットにつながれば仕事ができることが分かり、働き方改革の動きとも相まって都市部から暮らし易い郊外への移住を考える人が増えています。

それと同時に、いわゆる「農への憧れ」にも注目が集まっていると感じます。自然に近い安心して暮らせる環境で、「もし、新鮮な野菜まで自家調達できたなら......」と考える人々が多いようです。

まさにJAグループの出番です。農業には適度な運動を兼ねて自然と触れ合い、地域とのスムーズな関わりを促す効果もあります。「農への憧れ」が実現できるよう、JAは農機レンタルや生産資材の供給、栽培講習などさまざまな形で営農ノウハウやコミュニケーションの場を提供していく必要があると考えます。うまくいけば、農業者の高齢化に伴う後継者不足解消や耕作再開による環境保全の一方策となることも期待しながら。

最後3つ目は、協同組合という相互扶助組織の大切さです。行き過ぎたグローバル化と新型コロナの世界的パンデミックは無縁ではないと考えます。利益拡大のみを使命とする多国籍企業ではなく、地域共同体をコアとする協同組合として、メンバー・組合員、住民のニーズや困りごと実態をいち早く察知し「助け合い精神」のもと、医療、購買、金融等の事業を通じて必要な支援を行っていくことの重要性と実効性を再認識させられました。今後は、より正確で迅速な状況把握と対応のため、ここにおいてもデジタル化によるデータ活用が極めて有効と思われます。

農業を基軸とした大地と地域に根ざす協同組合であるJAグループの役割は、アフターコロナの持続可能な社会づくりにおいても、ますます大きくなるものと確信しています。不断の自己改革を進め、ぜひ実現して参りましょう!

【農協時論 企画にあたって】

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