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JAの活動:今さら聞けない営農情報

みどりの食料システム戦略9【今さら聞けない営農情報】第105回2021年6月12日

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令和3年5月12日に決定された「みどりの食料システム戦略」では、「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現」を目指し、2050年までに目指す姿と取組方向が示されました。

今回から、それらの考え方とその具体的な方法について少し掘り下げてみます。

まず、1つ目が、温室効果ガスです。その目指す姿と取組方向は、「2050年までに農林水産業のCO2ゼロエミッションの実現を目指す。」です。

この課題を考えていくのにまず抑えておかなければならないのが、農林水産業の温室効果ガス排出量です。農業で排出される温室効果ガスは、N2O(亜酸化窒素・笑気ガス)とCH4(メタンガス)とご存じCO2(炭酸ガス)です。前2者はCO2に比べ、N2Oが298倍、CH4が25倍も大きな温室効果ガス効果をもっており、農業分野における温室効果ガス削減の大きなターゲットになります。

これら温室効果ガスの発生原因は、N2Oが農用地の土壌から窒素質肥料等の窒素源由来、CH4が家畜の消化管内発酵や排泄物由来、稲作湛水土壌内での有機物分解由来が主なものです。特に、日本では、水田が最大のメタン発生源となっており、水田作での対策が重要です。

これら温室効果ガスごとに削減について対策をそれぞれ実行していくことが大前提ですが、みどりの食料システム戦略では、目指す姿として「CO2ゼロエミッション」を取り上げています。

CO2ゼロエミッションとは、CO2の排出実質ゼロという意味で使われています。農業機械や施設における化石燃料消費などで発生したCO2と同じ量のCO2を何らかの方法で土壌等に吸収(=封じ込め)させることで、排出量=吸収量(カーボンニュートラル)の状況を作り出すことをいいます。

CO2を減らすにはまずは排出しないようにすればいいのですが、水素燃料や電気農機が普及していない現状で食料生産を維持するためには、どうしても化石燃料を使用せざるをえません。そこで、出るのはしょうがないとして、出た分を吸収し、CO2の収支を合わせる方策が検討されています。その方法には、「CO2固定能の高い作物(CO2をたくさん吸収してくれる作物)」の開発や「バイオ炭の利用」があげられます。

「バイオ炭の利用」とは、植物が光合成を行う時に空気中のCO2を吸収して酸素を放出してCO2を植物の構成成分である有機物に変える仕組みを利用するものです。通常、作物の体の有機物は、植物が枯れて土壌に戻ったとき、土中の微生物などによって分解され、再びCO2を放出してしまいます。

これに対し、植物体(稲わらなど)を燃やさずに高温で炭にすると、植物体の中の有機物(C炭素)は分解されにくいものに変わります。この炭を土壌に施してやると、作物が光合成で吸収したCO2を再び空気中に放出することはなく、土壌の中に閉じ込める(=貯留する)ことができるのです。

また、炭の土壌への施用は土壌改良効果もあるので、CO2をたくさんため込み、かつ作物の生育にもプラスになるような上手な使い方の検証が進められています。つまり、「CO2の排出をゼロにするのではなく、排出した分はきちんと回収・貯留する仕組みを2050年までに作り上げよう」というのがこの目指す姿の意味になります。

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