JAの活動:今さら聞けない営農情報
みどりの食料システム戦略10【今さら聞けない営農情報】第106回2021年6月19日
令和3年5月12日に決定された「みどりの食料システム戦略」では、「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現」を目指し、2050年までに目指す姿と取組方向が示されました。
前回より、それらの考え方とその具体的な方法についての掘り下げを試みています。
今回は、その2つ目、化学農薬に関する項目で、その目指す姿と取組方向は、「2040年までに、ネオニコチノイド系農薬を含む従来の殺虫剤を使用しなくてもすむような新規農薬等を開発する。」と「2050年までに、化学農薬使用量(リスク換算)の50%低減を目指す。」です。
最初のネオニコチノイド系農薬に関するものは、ミツバチが減少している原因の一つとされたことに端を発し、ヨーロッパで同系薬剤の規制が進んでいることを受けての取組方向だと考えられます。ネオニコチノイド系薬剤は、害虫防除において大きな役割を果たしており、一朝一夕に代替できる薬剤の登場を望むのは難しい薬剤です。しかも、きちんとした環境影響評価がなされた上で農薬登録がなされており、使用基準を守って使用すれば人畜にも環境にも安全であることは、これまでの使用の歴史が証明しているように思います。
ただ、今回の取組方向は、この薬剤を規制し代替してくことを国が宣言したと等しく、その宣言の方向に規制が動いていくのも時間の問題のような気がします。
ただ、現役で頑張っている「従来の殺虫剤」全てが何等かの影響があり、代替していかなければならない存在であるかのようなイメージが作られてしまったのは、とても残念に思います。なぜなら、農薬は約10年という歳月をかけ、人畜毒性から環境影響評価、催奇形性など医薬品と同等以上の試験を積み重ね、この使い方なら人畜に影響は無いという方法を作り上げて農薬登録を取得しているからです。
いずれにしても、今後どのように対応していくのか、業界団体を含めた検討が待たれますが、現行否定ではなく、現行で戦略に合っているものはそのまま残し、問題のあるものは変えていくといった理にかなった取り組みになることを期待しています。
次回は、「2050年までに、化学農薬使用量(リスク換算)の50%低減を目指す。」を掘り下げてみます。
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