JAの活動:JA全農部長インタビュー「全力結集で挑戦 未来を創る-2021年度事業計画」
【JA全農 部長インタビュー 2021年度事業計画】冨田健司 耕種資材部長 JAと全農一体で生産者起点の事業へ転換2021年6月24日
耕種資材部は今年2月に「JAグループ生産資材事業の強化策」をJAに提案した。WEBシステムによる受発注業務への転換などが柱だ。何をめざすのか、冨田部長に聞いた。
冨田健司 耕種資材部長
3本柱の強化策
--耕種資材部は幅広く事業を展開していますが、今年度の重点事項を聞かせてください。
今年2月に生産資材事業委員会を開催し、とくにJAの営農経済事業改革の支援に力を入れなければならないということからJAグループの生産資材事業の強化策を提案発表しました。
JAの生産資材の取扱高は1993年の3.2兆円がピークで2018年には1.8兆円と年々減ってきています。JAの職員数もこの間に30万人から19.6万人へと大きく減り、なかでも購買職員が10万人から3.5万人へ大幅に減っています。
あるJAでの営農経済事業に携わっている職員の業務内容を分析によると、購買事業が6割を占め、そのうち配送と資材店舗業務で3割を占めていました。
一方、営農指導はわずか5%。組合員への対応に人が割けていないというのが実態でした。
深刻な要員不足に加えて、購買業務を合理化しないと組合員対応の強化もままならないのがJAのいちばんの悩みではないかということです。
そこで配送業務や店舗での業務の効率化、物流に関わる受発注などの事務処理の合理化を思い切って進めないと組合員へのサービスが低下してしまうのではないかということから、経済事業の収支改善にもつながり、組合員対応に強化にもつながるJA経済事業改革の3本柱を打ち出しました。
JA支援を具体化
1つは担い手への対応強化です。従来もTACなど出向く体制の整備と人材育成を支援してきましたが、大規模な農家になればなるほど、専門的な技術など対応を求められます。
そこで地域の営農実情をよく知るJA職員の強みと専門性の高い連合会の職員が一緒になって担い手に同行訪問することによってより担い手のニーズに対応していけるのではないかということから、われわれも一緒にアプローチしていこうということです。
2つ目は物流受発注業務の効率化です。これまでもJAの農家戸配送業務を全農が受託することを進めてきていますが、これをもう一段進めるとともに、WEBを活用した受発注システムを開発・導入し、JAの支店から本店、本店から全農への発注業務をシステム化していきます。
昨年度までにモデル的に取り組み、今、23JAで導入が決まっていますが、令和3年度はこれを本格的に拡大していこうと考えています。
この受発注WEBシステムとJAの購買系システムをデータ連動させることによってさらに効率化していこうということも考えています。この点については県の中央会・電算センターとも協議しながら進めています。
在庫管理で新POSを
3つ目は生産資材店舗の再編と整備です。これもJAが拠点を持ち要員を配置している事業ですから拠点ごとの収支改善が問われています。
これについては信用事業の支店統廃合と合わせて資材関係拠点の再編が進んでいきますから、やはり農家組合員の利便性を確保しつつ、いかに店舗整備をしながら収支改善も図っていくかが課題で、われわれはJAならではの基幹店舗づくりをサポートしていきます。
もう1つは店舗のなかでの商品管理です。売上げと在庫管理がきちんとできるPOSシステムを導入していこうということです。これまでのPOSをバージョンアップし、JA本店で各店舗の販売情報や在庫管理を一括管理できるかたちにした「新・資材店舗POSシステム」を今年度下期に提案します。
従来のPOSシステムは拠点ごとにサーバーを持たなければなりませんでしたが、今度はクラウド型とし購買拠点や倉庫など拠点ごとの販売管理、在庫管理ができるシステムです。
これまでJAでは単品ごとの管理が十分にできていなかったところもありますが、外部監査への移行で厳しくなってきましたから、こうしたシステムで単品管理をしっかりやっていける仕組みをつくろうということです。
資材の受発注はこれまでは電話や、手書きでFAXを使っていましたが、事務の効率化と見える化を実現するにはこのようなシステムは不可欠になっており、合理化とともに、内部統制と外部監査に耐えられるツールが必要だという現場の要請も受けて開発しました。
JAが抱えている課題はJAごとに違いますが、この3つの柱はある程度網羅できていると考えています。そのうえでわれわれもJAと膝詰めで個々の課題を聴いて、ともに解決に向けて実践していきたいと考えています。そのことによって生産者にいかにJAを利用してもらえるかという課題にも応えられるのではないかと考えています。
すべてのベクトルを生産現場へ
--TACなどこれまでも推進してきた取り組みですが、今回の3本柱はどこに違いがありますか。
過去にもこうした経済事業の改革を進めてきたという経緯はありますが、今回はまさにJAから求められていることに応えようということです。全農全体でもJA支援課がJAの経営分析などを行って課題を示していますが、資材事業部門ではその解決に向けた具体的なツールを準備し、改革を進めていこうということです。
また、担い手への対応力強化については、JAの未利用・低利用の農家・法人を重点訪問先と位置づけてアプローチしていくことも重視しています。先ほども話したように同行推進に取り組もうということですが、場合によっては連合会に任せたという代行推進のかたちもあるかもしれません。そこはJAとよく協議して重点訪問先を選定していきますが、狙いは生産・販売・購買の総合的な事業提案にJAと全農が一緒になって取り組もうということです。
物流については、これまでも全農が戸配送センターを運営受託していく方式を進めてきました。しかし、物流の事情もどんどん変わっていますし、担い手の経営面積が大規模化するなどニーズが多様化しているなか、こうした変化に対応した物流合理化策を検討します。
また、WEBシステムによる受発注も組合員からJA、JAから全農、全農からメーカーと一気通貫でいけるような仕組みを作っていければと考えています。
現在開発ができているのはJAの支店から本店、本店から全農までのルートですが、これを今年度下期からは組合員とJA、また、全農とメーカーもしっかりとつなぐシステムにしようと考えています。
グループ一体で組合意をサポート
この取り組みはJAだけではなく全農自らの業務効率化でもあります。現在のJAと全農の間は電話とFAXでの受発注が中心です。FAXで注文書が届き、品目ごとにコーディングしそれを入力する作業をしています。
これがJAからデータで来れば業務の効率化が図られ、その分われわれの仕事もJAと一緒になって組合員のサポートに向かっていけるということになるわけです。
このような取り組みでJAと全農の物流や受発注の一体化が進んでくれば、JAグループで生産者の営農に必要な資材を必要な時期に届けるということになり、相当効率化が図られるし、それによって生産者起点の事業になると思います。
すべてのベクトルを生産者に向けていく。全農はこうした強化策に取り組み、JAは営農指導など組合員の対応や、地域の生産振興にしっかり取り組む。「JAグループ・全農で力を合わせ、経済事業を強化し日本の農業の未来を創る」というメッセージにはそういう思いを込めています。
(とみた・けんじ)
1963年8月生まれ。大阪府出身。神戸大学農学部卒。1986年入会。本所肥料農薬部総合課長、生産資材部次長を経て2019年4月から現職。
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