JAの活動:今さら聞けない営農情報
みどりの食料システム戦略11【今さら聞けない営農情報】第107回2021年6月26日
令和3年5月12日に決定された「みどりの食料システム戦略」では、「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現」を目指し、2050年までに目指す姿と取組方向が示されました。前回より、それらの考え方とその具体的な方法についての掘り下げを試みており、今回は化学農薬に関する項目で「2050年までに、化学農薬使用量(リスク換算)の50%低減を目指す。」を掘り下げてみます。
化学農薬の50%低減というフレーズは、過去にもありました。記憶に新しいところでは平成13年の無登録農薬問題に端を発し、ポジティブリスト制度が導入された平成15年頃を前後して、食の安全が大きく取り上げられました。その際に、総合的病害虫管理(IPM)や有機農法がクローズアップされ、「減農薬栽培」という言葉や、「減農薬で生産した農産物なので安全・安心です」という言葉があちこちで踊っていました。
その時、農薬使用量削減は、主として「慣行の散布回数の〇〇%減」という言い方で、農薬の散布回数を減らすことを意味してました。つまり、50%減といえば、1作の合計散布回数が12回の作物であれば、それを6回で済ますことになります。回数を減らしても防除効果が落ちないよう、各県の農業試験場など指導機関は、使用する薬剤を長期持続型に変えるなどして防除暦作りにずいぶんとご苦労しておられた記憶があります。回数だけの削減であれば、農薬には複数成分を含む混合剤もありますので、混合剤を使うことで、防除効果が維持できたのですが、そのうち、使用する有効成分数総数を削減目標にするようになり、薬剤を複数の防除対象に効く長期持続型の薬剤にすることで、使用有効成分を減らすことが主流になっていきました。
ところが、今回のみどりの食料システム戦略では、そういった回数や成分数ではなく、「化学農薬使用量(リスク換算)の50%低減」となっています。リスク換算という耳慣れない言葉ですね。
農水省の資料によると、「既登録の農薬においてリスクの高い農薬からリスクのより低い農薬への転換を推進する」とあります。このリスク評価をADI(1日あたり摂取許容量)で計ろうというのです。
ADI(mg/kg/day)とは、動物実験で導かれた最大無作用量(NOEL)を人間に当てはめるために100倍程度の安全係数をかけて作られているものです。例えば、ADIが10mgの有効成分をA、1mgのものをBとすると、Aは10mgで何らかの作用を起こす可能性があるのに対し、BはAよりも少ない1/10の量=1mgで何らかの作用を起こす可能性があることになります。そういった意味では、ADIが小さいほど、何らかの影響を起こすリスクが大きいことになります。ADIは、実にたくさんの試験データをもとに農薬の有効成分ごとに決められており、その数値レベルによってリスクの高いものを指数10、中くらいのものを指数1、小さいものを指数0.1と3段階の指数を与えます。
その指数にそれぞれの有効成分使用量(実際に散布されている量)をかけて総量を計算します。それを半減しようというのです。単純計算すれば、指数10のものは、現在の使用量の2分の1に、指数1のものは20分の1に、指数0.1のものは200分の1に減らすことを目標に据えることになります。つまり、リスクの高いものは半分にしろ、リスクの低いものはそんなに減らさなくてもよいということになります。
ところが、この一律にADIを指標にすることには大きな問題があります。
ADIが小さいものは除草剤に多いのですが、除草剤の場合、そもそも散布対象でない農作物に残留することは無いといってもよく、このように食品の安全上に全く問題のない農薬まで一律に減らされてしまうことになってしまうのです。仮りに食品の安全上問題があるのであれば、減らすという理由が立ちますが、安全性に問題のないものまで一律に減らすというのは理屈が成り立ちません。
今後、成分ごとの指数が国から発表されるとのことですが、現実に沿った誰でも納得できるものになることを願っています。そもそも、たくさんの試験データをもとに環境に問題無いと国(環境省)にお墨付きをもらって登録を受けている農薬を、いったい、どういう理由で減らせというのか、はっきり示してほしいものです。
次回は化学肥料の低減を紐解きます。

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