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JAの活動:今さら聞けない営農情報

みどりの食料システム戦略18【今さら聞けない営農情報】第114回2021年8月28日

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「みどりの食料システム戦略」(以下、「みどりの戦略」と略します)では、「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現」を目指し、2050年までに目指す姿と取組方向が示されました。

前回までに「有機農業」に関する技術的戦略(1)~(10)(図参照)のうち2020~2030年の10年間に取り組む(1)~(4)を掘り下げてみました。

今回から2回に渡り、2030~2040年に取り組む課題(5)「除草の自動化を可能とする畦畔・ほ場周縁の基盤整備」、(6)「AIを活用した土壌病害発病ポテンシャルの診断技術」を掘り下げます。

この有機農業に関する技術的戦略は、2020年~2050年までを10年ずつに区切りそれぞれの10年間で技術確立を目指していますが、10年間が終われば終わりではなく、その後の期間も継続的に取り組まれるものです。重点的に取り組む期間を技術ごとに10年間おいてあるだけで、(1)~(10)全ての戦略が有機農業を定着させるために必要で、2050年までの全期間において取り組みを継続していくことを目指しています。

さて、(5)「除草の自動化を可能とする畦畔・ほ場周縁の基盤整備」ですが、これは、主に中山間地の水田畦畔など急斜面の雑草管理作業の改善につながるものです。有機農業にとって、除草作業は重要で大変労力のかかるものであり、除草剤以外の物理的あるいは生物的な防除を行うことが必要になります。

現在、傾斜のきつい畦畔の雑草管理は、主に草刈機による人力作業や専用の自走式モアによって行われていますが、日本のほ場、特に中山間の農地には急斜面の畦畔が多く存在し、除草作業中の事故も絶えません。そのため、ラジコン草刈機など人間が斜面に入らず、機械だけが斜面に入って除草する自動化が進んでいます。自動化で対応できる傾斜角の限界は50度前後と言われており、現在は45度以下の傾斜で自動運転できる機械の開発が盛んに行われています。ただ、実際には45度を超える急斜面も多く、また自動機であっても傾斜角は少ない方が作業の効率が上がりますので、急斜面の緩斜面化が望まれているのです。それを叶えるのが(5)「除草の自動化を可能とする畦畔・ほ場周縁の基盤整備」になります。

ただ、この整備は一筋縄ではいきません。一般的に急斜面は傾斜角40~50度、緩斜面は同20~30度と言われておりますので、ここでは45度の急斜面を30度にならす時のことを考えてみます。

みどりの食料システム戦略18.jpg

中山間を想定し、図のような、5m×20m=100平方メートル(1アール)の田んぼが、下の田んぼとの高低差が2mの位置にあるとします。

上の田んぼと下の田んぼの間にある45度の畦畔面を30度(点線の面)に整備しようとすると、上の田んぼの下の田んぼ側を2mまで削り取らなければならず、その時削り取られる土の量は、単純計算で40立方メートル=40トンになります。1アールの田んぼでも10トントラック4台分の土を運び出さなければならず、重機も入れなければなりませんので、その費用と労力は相当なものになることが容易に想像できます。

実際には、周縁部も加えればもっと多くの労力がかかりますし、また田んぼの面積も小さくなる(この例だと5分の3に縮小)ので減反計画とも合わせて考えなければならないのです。このため、急斜面を緩斜面に変える基盤整備を実現するには、土地改良区で行う基盤整備事業に頼るしかありません。ただ、急斜面が緩斜面に変わることで、除草作業の労力や作業の危険度を大幅に減らすことができるメリットは計り知れないので、今後、国による事業が大きく進むことに期待しています。

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