JAの活動:今さら聞けない営農情報
みどりの食料システム戦略21【今さら聞けない営農情報】第117回2021年9月25日
いまさら聞けない営農情報No.117 -みどりの食料システム戦略21-
令和3年5月12日に決定された「みどりの食料システム戦略」(以下、「みどりの戦略」と略します)では、「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現」を目指し、2050年までに目指す姿と取組方向が示されました。
前回までに「有機農業」に関する技術的戦略(1)~(10)(図参照)のうち、2040~2050年までに実現・普及を目指す取り組む課題を掘り下げていますが、今回は、(8)「先進的な物理的手法や生物学的手法を駆使した害虫防除技術」です。
まず、「先進的な物理的手法」です。代表的な物理的害虫防除法は、手での捕殺や防虫網での作物の隔離などでありますが、先進的な手法としてみどり戦略では、青色レーザー光の照射による方法が紹介しています。この方法は、害虫の体に青色レーザー光を照射すると細胞内に細胞の生存に悪影響のある活性酸素が増加することで害虫が死滅するというメカニズムを応用するものです。この方法を使うためには、害虫の体に青色の光を照射しないと効果が現れず、加えて、この種の光は作物の生育にも悪影響がある可能性があるため、正確に虫体にのみ照射する技術が必須となります。また、害虫は作物の表面にいるとは限らず、葉裏だったり、芽や花の基部や葉の内部などに潜り込んでいることの方が多いため、農作物の害虫防除に利用できるようにするには、正確に害虫を補足しピンポイントでレーザー光を照射する技術の開発が必要ですし、また、繁茂している作物の場合1方向からだけでは、作物についている害虫全てに照射できないため、作物の周りを縦横無人に動きまわって光を照射する仕組みなどが必要になります。技術の進歩は早く、10年もすれば実現できるのかもしれませんが、そのためのシステムの開発費用を考えると、経済的にペイできる防除システムを提供するのはかなり難しそうです。
次に、「生物学的手法」です。みどり戦略では、共生生物の利用が紹介されています。
この方法は、害虫に限らず生物全般に体の中に存在する共生微生物)を活用するものです。共生微生物は、生物において様々な働きをしています。人間でいえば腸内細菌の働きが人間の健康に影響していることはよく知られています。
では、害虫防除の場合にどのような仕組みを利用するのでしょうか?
害虫防除に応用できる可能性のあるものは、細胞内共生微生物と呼ばれるものです。これは、ある種の共生微生物が昆虫の細胞に感染すると、メスばかり生まれる単為生殖をするようになったり、感染したオスと感染していないメスとの間で交尾をすると生まれた子孫が死んでしまうといった現象が起こるそうです。前者であれば、天敵はメスが多いのでそれを効率的に増やすことに役立ちますし、後者であれば感染した害虫のオスを大量にばらまくことで次世代が増えることができず、ウリミバエ根絶で行われた不妊虫放飼と同じような作用で害虫密度を減らすことができます。
これらの方法は、害虫ごとに有効な方法を開発する必要があり時間がかかりますが、全ての害虫でこの方法が開発できれば、殺虫剤を使わない防除ができる可能性があります。2050年までにそれが実現できるかどうかは未知数ですが、多くの害虫種で開発が進むことを期待しています。
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