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JAの活動:農協時論

【農協時論】混乱の総括通じ新たな芽創造を 飯野芳彦・元JA全青協会長2021年10月7日

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「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を生産現場で働く方々や農協のトップの皆様に胸の内に滾る熱い想いをお書きいただいています。
今回は元JA全青協会長の飯野芳彦氏にご寄稿いただきました。

飯野芳彦・元JA全青協会長飯野芳彦・元JA全青協会長

先人たちはどの様に苦難を乗り越えたのだろうか? そんな問いかけがしたくなる今日この頃です。コロナ感染予防のための緊急事態宣言が全国で解除された関東地方での最初の週末は、台風一過と重なり突き抜ける青空の快晴でした。その青空に写り込むような黄金色の水田と赤とんぼが飛び交っていました。水田では稲刈りも終盤を迎えどの生産者も忙しく仕事をする週末でした。快晴の青空の下、実りの秋を喜ぶ半面、米価の下落が暗い影を落としています。農畜産物は需要と供給のバランスによって形成されることは理解していますが、食料安全保障上このような状況で良いのかともおもいます。

COVID-19により多くの産業とそこに関わる組織と人々に多大なる影響を与えました。農業も農業協同組合と組合員も影響を受けたその一つです。このような状況から新たに踏み出す勇気には協同の力が必要であることは明らかではあります。しかし、「協同はギブ&ギブの見返りを求めない自己犠牲」そんな私が考える協同の在り方は現状にマッチしているのか不安でなりません。多くの人たちが痛手を被っている状況の中で建設的な議論の下ボトムアップの意見集約ができるのだろうかとも思います。

人は自信がなければないほど過去の成功体験に従いたくなることはよくあることだと思います。このような窮地では、成功体験という自信は、時に過信となり独裁的で封建的な組織に導いてしまいがちです。COVID-19から立ち直るためには、今まで経験のしたことのない現状であるということを理解することから始まります。つまり、過去の成功体験はすべてを生かせない状況であるということだと思います。

創造的自己改革実現のため組合員との対話を進めてきました。しかし、過去2年間は訪問活動や組織活動による対話は大きく制限されてしまいました。COVID-19によって真逆の対応をしなければならなくなった後遺症は今後も引きずってしまうと思います。私自身も、9月末に緊急事態宣言完全解除のニュースが飛び交う頃から、様々な対外的な予定が入り始めました。対外的な予定が入ることを楽しみにしていたはずなのに、どこか面倒な気持ちになっていることも確かです。定時に仕事をはじめ予定通り仕事が進んで仕事が終わる。そして、家族団らんの時間を過ごすこの生活パターンを乱されることへの不安だと思います。2年間という月日は長かったという結論だと思います。このような思いになっている組合員は多くいると思います。

人々が痛手を被って不安をかかえるこういう時こそ協同の力が必要です。その為には、組織自身のスリム化が必要だと思います。その理由は、COVID-19によって大きなダメージをうけている為です。このようなピンチを、慣例という理由で進められたものを総括し、取捨選択をするいいチャンスととらえるべきではないかと思います。そこで必要なのは「まもる」だけでなく、新たなものを作り出す建設的な議論と批判だけでなく対案を示す有意義な対話が必要だと思います。そこから生まれた新しい芽を、過去にとらわれず立案・実行できるリーダーが求められているのだと思います。今こそ「創造的な協同議論」が必要ではないでしょうか。

COVID-19によって傷ついた人々を救う農業協同組合のためには、少数精鋭で生き残るのか、互いに手を携え底上げを図ることで生き残るのか、どちらにしても現状を大きく変える痛みが伴うとともに組合員の努力も欠かせないと思います。「みんなが幸せになるために」この協同の原則を忘れない組織発展を問われる節目を迎えたように思います。また、コロナワクチンの買い付けが不具合となりワクチン不足になりました。それと同じことが輸入穀物で起きないことを祈るばかりです。万が一そのようなときに国民の負託に応えられる農業協同組合であり続け、農業者と農地が存在し続けるためにも組合員の努力のみならず、国政と国民の努力も必要だと思います。新しい首相にはCOVID-19から学んだ事として、食料安全保障の議論を過去にとらわれず立案・実行できるリーダーとして期待したいものです。

【農協時論 企画にあたって】

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