JAの活動:農協時論
【農協時論】みどり戦略は自ら顧みる機会 次代を見据えて 菅野孝志・JA全中副会長(JA福島五連会長)2021年12月2日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を生産現場で働く方々や農協のトップの皆様に胸の内に滾る熱い想いをお書きいただいています。
今回はJA全中副会長の菅野孝志氏に寄稿してもらった。
菅野 孝志氏
「みどりの食料システム戦略」が5月12日に策定された。2050年カーボンニュートラル、農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現のために、10年刻みの取り組み方向を位置付けている。(1)成長への技術革新(2)温室効果ガス削減(3)化学農薬の使用量低減(50%減)(4)化学肥料の使用量低減(30%減)そして、有機農業の取り組み面積100万㌶は、国際ルールメーキングへの参画から企図したのか衝撃的である。
私の感じる環境破壊の端的なものは、南極周辺の氷山がとてつもない水しぶきを上げ崩落する様や北極周辺の永久凍土での陥没、また穀物の世界戦略の下で広大なアマゾンの森林が伐採され、焼かれ穀物の生産が拡大され収奪が繰り返されている姿である、これでいいのだろうか。なんの行動もせずに、ただ感傷に浸っているわけにはいかない。
地球上の90億人もの命が守られるのだろうか。悲しいことであるが、守られるものと見放されるものの、2極化が見え隠れする。
各地に出かけると目に映るのは、大河と大地の稜線、整然と恵みを蓄えたほ場(マクロ)、半面、葦やセイダカアワダチソウ、そこに柳が生い茂るという(ミクロ)優良農地と荒廃農地の2極化が交差する。人間は、自然の全てを征服したかのように振る舞いながらも、荒みつつある足元の大地のぐらつきを感じ取ることが出来ないでいる。私もその一人である。それでいいのだろうか。
以前は、燃料や農産物の価格高騰時、資源の大切さから「フードマイレージ」ということが叫ばれていた。今はあまり聞こえてこない。が、先般の第29回JA全国大会の最終意見の中に「フードマイレージ」が寄せられたことに、JAの役員や職員の思いに改めてエールを送りたい。思いは、環境負荷軽減と地球崩壊への警鐘と自国生産への回帰、「国消国産」への提起であり、さらに荒廃した農耕再生への思いであると確信する。
「課題は多い。まず、誰がやるのか」。
9月11日、地域の農地・水・環境保全活動に久しぶりに参加した。農業短大を卒業して独立までの間、農業法人に勤めている若い青年がいた。私の後輩にもあたる。元気な青年が「いるんだ」と思えた時うれしさがこみ上げて来た。
「みどりの食料システム戦略」は、農家目線での実態などをしっかり抑えること。今時点での地域における環境負荷軽減や有機農業の姿はどうなっているのか、人手不足や高齢化による消極的環境保全型農業と指標に沿った積極的な環境保全型農業など、取り組んでいる状況を真に検証することから始めなければならない。最近、線状降水帯や豪雨災害・台風災害・ウンカの大発生・凍霜害・海水温の上昇と漁獲種類の変化など温暖化は、制御できない段階にあることに真剣に向き合い、自らのものとしなくてはならない。
前後して、我が水田の雑草が苦になり、鎌を持ち田に入った。水田肥料一発剤のマイクロプラスチックの袋(肥料の長期効果と農家の労力軽減)がゴロゴロとしていることに唖然とした。河川を通じ海洋砂浜に漂着したマイクロプラスチックの記事を見て、知らず知らずのうちに環境を破壊する側に立たされていることに気づいた。
自然や田畑は、人の手が入れられた時点から、継続的かつ持続的に手が入らなければ、より大きな荒廃へとつながる風景を目にする。だから恒久的に手を入れ続けることであり、その手法を模索し人を入れ、手を入れ耕し続けなければならない。
美しさのあまり山岳と木々の風景に目を奪われることがある。自然の風雪雨水により制御されている美しさ、踏み入れられない自然の美しさなのかもしれない。自然は山岳と里山のコントラストの上に美しさと心の癒やしの源をつくるが、その美しさも半減しつつある。環境負荷軽減の大義の下に太陽光パネルが里山や平地を覆う。
「みどりの食料システム戦略」着実に進展させるには、都道府県市町村に推進機構を設置し速やかな実態(足元)把握と農業者各層が何からできるのかを確認し合うことから始め、成長以上に環境への配慮とコスト軽減を目指し、成し遂げる自らの戦略にしたいものである。
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