JAの活動:動き出す JA農業経営コンサルタント
【動き出す JA農業経営コンサルタント】JAの相談機能 フル発揮し経営支援を JA全中 肱岡弘典常務2022年2月22日
JA全中は、農業経営全般の個別支援を強化するため、令和2年度よりJA農業経営コンサルタント資格認証制度を創設しており、令和4年2月に同制度初となるコンサルタントが認証される。農業経営コンサルティングは、JA職員が農業経営を総合的に支援することで組合員の目標や夢を実現することが目的だ。JA全中の肱岡弘典常務は「JAの総合的な相談機能を発揮することが“肝”」とこの制度の特徴を指摘、JAの自己改革による総合力の発揮にもつながると強調する。
JA全中 肱岡弘典常務
--JA農業経営コンサルタント資格認証制度は第29回JA全国大会決議ではどう位置づけられていますか。
「持続可能な農業・地域共生の未来づくり」を掲げた大会決議では、重点実施事項に「多様な農業者による地域農業の振興」を掲げています。その実施具体策の1つに「中小家族経営を含めた多様な農業者のそれぞれのニーズに応じた伴走支援」を掲げ、それに対応してJA農業経営コンサルタント資格認証制度を位置づけています。
規模拡大している担い手は、ニーズが高度化・多様化しており、JAとして対応を一層強化していく必要があります。ただ、コンサルティングといっても簡単なことではありません。質の高い伴走支援を実践し、しっかり評価を得ていくためには、何といっても人材の育成確保が急務だと考え、この制度を立ち上げました。
--これまでの「農業経営管理支援」と、今回の「農業経営支援」との違いは何でしょうか。
農業経営管理支援は多くの県やJAで記帳代行や確定申告支援にとどまっているのが現状です。一部地域で実践しているような生産、販売、そして経営の分析まで行い、農家に提案するレベルにまで残念ながら到達できていません。
しかし、先ほども指摘したように地域で頑張っている担い手は、ニーズが高度化し多様化していますから、記帳代行や確定申告支援にとどまっていて本当にいいのかという課題認識がありました。ここを一歩先に進める必要があると考え、「農業経営管理支援」から「農業経営支援」へと言葉も変えて、もっと農家の経営に突っ込んだ支援をしていこうという思いがあります。
その中核となるのが農業経営コンサルティングであり、その人材を育成するための制度としてJA農業経営コンサルタント資格認証制度を立ち上げました。
具体的には記帳や申告といった決算支援だけでなく、生産・販売分析と経営改善につながる農業経営コンサルティングを平行して実践するということです。
とくに農業経営コンサルティングは、JAが持っている総合的な相談機能の発揮が期待されます。JAは営農・経済事業だけではなくて信用事業、共済事業、利用事業も展開しており、非常にいい相談機能を持っているはずです。そうしたJAの総合的な相談機能を発揮することが農業経営支援の「肝」だと私は思っています。
--どのような人材となることが期待されますか
農業経営コンサルティングの目的は、組合員とJA職員が一緒になって農業経営を支援し、組合員の目標利益など夢を実現することにあるわけですが、問題はどう支援するかです。農業経営者に寄り添って、悩みや将来展望等の考えをしっかりと聞き、JAが持っている総合的な相談機能をフル活用して、具体的で実践可能な提案とその実践を行い、仮説検証サイクルを回すことができるという人材です。
しかし、これは単に基礎知識を勉強すれば身につくようなものではありません。このため、JA農業経営コンサルタント資格認証制度は、筆記試験で合否を判定するような制度にはしていません。必要な知識の有無については、全中が営農指導員の上位資格として設定した「地域営農マネジャー」など、一定の資格を有している職員を対象者とすることで担保することにしました。
一方、農業経営者と接してコンサルタントを行うわけですから、その職員が信頼されなければなりません。そのため、実務経験を重視した内容の研修を受けることで「JA農業経営コンサルタント補」として登録する仕組みにしています。コミュニケーション能力に関する講義や、経営データを分析し何が問題なのかを考えるワークショップなど、実践的な研修となっています。
そして研修を受講したJA農業経営コンサルタント補が実際に組合員農家のところへ行き、農業経営支援に取り組むというのがこの制度のポイントです。コンサルティングのプロセスや課題分析、提案内容など、コンサルティングの結果をとりまとめた実践レポートを有識者による審査会に提出し、審査を受けることで、晴れて「JA農業経営コンサルタント」として認証されます。
--JAトップ層には何を期待しますか。
総合事業の強みを生かした支援のためには、JA内でチームを組んでコンサルティングを行うことが望ましく、JA農業経営コンサルタントには、そのコーディネーターとしての役割が期待されます。そのためには営農部門だけでなく、信用や共済などの部門の職員からも一目置かれるような職員にJA農業経営コンサルタントの資格を取得させ、チームを引っ張っていく人材に育ててほしいと思います。したがって、営農経済事業部門の職員だけにこの資格にチャレンジさせるのではなく、組合長が自信をもって推薦できる職員を全部門の中から選んで、この資格の取得を後押ししてもらいたいと思っています。
また、JA全体で農業経営支援を実践する体制を整備することも、JAトップ層の役割ではないかと考えます。特に農業経営コンサルティングは農家に出向き話を聞いて提案するわけですから実務経験を積むことが何より重要だと考えています。
そのためには農業経営コンサルタントは、一定期間、専門職的な位置づけにして人事ローテーションから外すことなども必要だと思います。
JAのトップ層が本気になって取り組んでいけば、JAが総合事業の強みを発揮でき、自己改革にもつながっていくのではないかと考えます。
また、「農業経営支援の取り組みを積極的に推進する」というメッセージをJA内外に示すこともお願いしたいです。担当者は組合員と接する機会が多くなりますが、それはとてもハードな現場になります。JA職員として熱い使命感を持ち、一生懸命がんばっている職員が孤独になってしまうことも懸念されます。ですからJAのなかでしっかり農業経営支援を位置づけ、役員のみなさんは率先して担当者の心のケア、職場環境づくりも進めてほしいと思います。
担い手と強い信頼関係を築き、JA内の各部門をつなぎ、行政や連合会とも連携する地域農業のキーパーソンとして、多くのJAでこのJA農業経営コンサルタントが生き生きと活躍するような時代が早く来るように全中としても取り組んでまいりたいと思っています。
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日