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JAの活動:農協時論

【農協時論】食とみどり戦略 米と教育と種子めぐり議論を 持続社会の礎に 八木岡努・JA茨城県中央会会長2022年5月24日

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「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップなどに、胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は、八木岡努・JA茨城県中央会会長に寄稿してもらった。

「みどり戦略」と同時に求められる食料安保

JA茨城県中央会 八木岡努会長JA茨城県中央会
八木岡努会長

世界的なコロナの流行で世界が一変したと思ったところに、ロシア・ウクライナ問題でさらに日常生活が大きく変化しています。普通にモノが届き、当然と思える価格でモノが買えると思っていた『当たり前』という常識が常識で無くなってしまっています。この状況が食料安全保障を国民の関心ごとに高めています。

また、4月22日に国会で『みどりの食料システム戦略(以下みどり戦略)』を推進する新法が可決・成立しました。みどり戦略はCOP26対応で急ごしらえで作られた感があり、持続可能な社会の実現をゼロエミッション達成によって結論づけられています。そこに食料安全保障の確保が急務となり、食料自給率37%に対する抜本的な対策も同時に考えることが必要となりました。

特に食料安全保障については、農業資材や飼料、燃料などの輸入確保、価格高騰に対する補填、堆肥活用推進によるコスト低減策など、急ぎの対応がなされています。JAグループとしても農家との情報共有を図り、サポートできる体制を強化していきます。さらに重要なのは中長期的な対策の検討、実現に向けた取り組みです。私が考えている中長期的な取り組みのポイントは三つあります。

米粉活用の再検討を

一つ目は米の活用です。人口減少と嗜好(しこう)の変化による米の消費減少トレンドにコロナによる需要減少が相まって、需給調整強化をしても追いつかない状況になっています。この様な中、転作の中心となる飼料用米への助成が過大との見解も聞かれます。限りある農業予算に頼るだけでなく出口戦略を見据え、米粉の活用を再検討し、研究分野と消費者の意識改革に投資をすべきです。

2009年に施行された「米穀の新用途への利用の促進に関する法律」に基づく需給目標には程遠い現況に諦めず、小麦粉の代替でない用途開発、専用品種の開発に再度投資をお願いしたいと思います。JAグループとしても米粉活用を再度PRしていければと考えます。

水田はその姿を維持していくことで地球環境にプラスになっています。特に自然災害が多発している近年、水田は重要な役割を担うようになりました。水田を維持するため、米飯用途にとどまらず、粉での活用にも力を入れていくべきです。

さらに豊かな田んぼ、地力のある田んぼを維持していくために、麦、大豆などの転作作物を輪作作物として考えてみてはどうでしょうか。ブロックローテーションにより畑作時の環境・効率を改善しつつ、まとまりのある土地を自然の力を活用し地力を上げる。みどり戦略にマッチさせられるのではないでしょうか。地域に合わせた適正なやり方を模索していくのも一つの考えだと思います。

米の重要性学ぶ授業カリキュラムを

二つ目は米の重要性を初等教育の場でさらに浸透していくことです。従来から農場体験やバケツ稲、作文・図画コンクールなどを通じて子どもたちへの農業への興味喚起に努めてきました。コロナ禍においては備蓄米の無償交付制度を使ったフードバンクや子ども食堂への支援を行い、私の地元小学校の学校給食では週2、3回がご飯食になってきました。

こういった活動によって、身体的な成長を助ける理由や、地球環境にも貢献しているSDGsに沿った取り組みであり、子どもたち一人ひとりがその活動に参加していることの意味など、授業カリキュラムにきちんと織り込んでいくことが大事ではないでしょうか。

私たち世代が、1960年代から経験したパンや牛乳にはじまる洋食志向の始まりを、学校給食で体験し、その効果を学んで来た結果が今の食生活につながっているように、現代の日本の事情に合わせた健康で安心な取り組み、SDGsに参加している意識を国産・地場産の米を食べることを通して身をもって体験し、学ぶことが将来の持続可能な社会を作っていくように思えます。

改めて種子確保の議論を

三つ目が種子の確保です。園芸作物ではF1種が大半となった現在、国内販売されている種のほとんどが輸入に頼っている状態です。そんな中、固定種の種を販売する野口の種が買い占めによってオンライン販売を停止したことが話題になっていました(現在はオンライン販売が再開されました)。

みどり戦略では日本の強みと紹介されているゲノム編集についても不安が払拭(ふっしょく)されない中で、中国をはじめとして盛んに開発が進み、種も流通し始めています。肥料不足、価格高騰は代替手段が見つかっても、種についてはそうはいきません。

世界的な種の奪い合いに発展した時、日本は種の確保はできるでしょうか。種子法の廃止、種苗法の改正で種は農家からグローバル企業へと渡される流れができてしまいました。日本で作らなくても世界の企業からいくらでも手に入ることが前提で作られた法律が揺らいでいます。種子法の歴史と、それを受け継ぐ各地域の種子条例により供給されている、米をはじめとした普通作の種が最後の砦(とりで)といった状況です。食料安全保障の一つとして種の問題をもう一度議論していくべきです。

以上三つの取り組みを長期的に考え、実行できる環境構築に努めていきたいと思います。以前から言われている『国消国産』『地産地消』『適地適作』『旬産旬食』の大切さを今こそ見つめ直していきましょう。

JAグループ茨城の「クオリテLab」JAグループ茨城の「クオリテLab」

最後に、みどり戦略は農家のための戦略ではなく、消費者のためのものだと伝えることが重要です。そのために茨城県中央会ではJAグループ茨城の新たな情報発信基地として『クオリテLab(ラボ)』というスペースを新設しました。「持続可能で高付加価値な茨城農業を創る」ことをビジョンに、ここから食と農の情報発信をしていきます。Withコロナ、Afterコロナを見据えて、大多数を集めて講演するのでなくオンラインを中心に進めていきます。キッチンスペースという食の生活空間から、高付加価値な農畜産物を紹介していこうと考えています。

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