JAの活動:農協時論
【農協時論】労協法10月施行―多様な就労機会、持続可能な社会へ 田嶋康利・日本労働者協同組合連合会専務理事2022年6月30日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を生産現場で働く方々などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は日本労働者協同組合連合会の田嶋康利専務理事に寄稿してもらった。
田嶋康利
日本労働者協同組合連合会
専務理事
本年10月1日に、労働者協同組合法が施行される。他国ではすでに存在していた法人格が、21世紀になってようやく制度化されることになった。
私たちは、労働者協同組合を「働く者や市民が協同で出資し、組合員となって経営に主体的に参加、地域と生活の課題や必要に応える仕事を協同で起こす『協同労働』の協同組合」と位置づけ、40年以上の事業活動と共に20年余に渡って法制化運動に取り組んできた。
私たちの取り組みを踏まえていただき、法の第一条(目的)には、働きたいと願う誰もが安心して働くことができる社会―「多様な就労機会の創出」と、人々の願いや思いを仕事おこしを通して実現する「地域の多様な需要に応じた事業の促進」。そして、気候環境危機などの時代に「持続可能で活力ある地域社会の実現に資する」という、今日的な時代の要請に応えた目的が掲げられた。この法の目的を私たちは重く受け止めている。
協同労働を志向する団体は、私たち以外にワーカーズ・コレクティブネットワークジャパン、また協同労働を志向する共同連や浦河べてるの家などの障害のある人と共に働く当事者団体、農村女性起業などを含めると、およそ10万人、1000億円規模で40年以上の歴史があり、法制化を実現する社会的根拠となっている。
法制定にご尽力いただいた元厚生労働大臣の田村憲久衆議院議員(与党協同労働の法制化に関するワーキングチーム座長)は、「労協法ができれば、その効力は皆さんのところにとどまらず、いろんなところ、いろんな人たちが、こういう形態で働き出す、事業を始める。企業などでも、働いている人たちの意識が変わる。みんなで話し合い、一人ひとりの意見を大切にし、地域を大事にしようとする流れが始まると思います。この法律が社会に広がっていくことによって、社会がどう変わっていくか。とても楽しみです」と期待を語られた。
いま、法施行を前にしてその予兆が各地で起こっている。子どもから高齢者までが集える居場所や相談の場づくり、高齢期の就労や障害や困難にある人と共に働く場づくり、農業などの第1次産業を農福連携などで取り組みたい、環境や自然、地域のつながりや文化を大切に、集落を維持するための仕事づくりに生かせないか、自分らしく働き暮らしたいなど、各地で人々の思いや相談と出会ってきた。
これらの期待や思いを背景に、農水省「新しい農村政策の在り方に関する検討会」報告書の中に「労働者協同組合の更なる周知に加え、農山漁村での様々な活動に、都市部等からの多様な人材が関わることができる機会を創出する取り組みを推進する」「農村漁村発イノベーションの推進に当たっては、労働者協同組合の仕組みを活用する」(4月1日)と明記された。
昨年10月に開催されたJA全国大会の議案で「JAは『労働者協同組合』が成立したことを受けて、組合員の協同労働で運営される多様な自主組織について、労働者協同組合と連携し、そのノウハウを活用して地域課題の解決や組織活動の活性化に向けて検討・取り組みをはかります」と明記されたことで、各地で農協の皆さんとの懇談、集落営農の労協法人化や農福連携などの研究や協議も始まり、家の光の雑誌「地上」7月号にはワーカーズコープの特集も組んでいただいた。
今、私たちは労協法の施行を契機に、相談機能を中心に据えた多様な就労と仕事を創出する居場所「みんなのおうち」づくりをめざして、市民と共にまちづくり講座に各地で取り組んでいる。
今後とも、持続可能な地域づくりに向けて多様な連携をお願いできればと思う。
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