JAの活動:農協時論
【農協時論】自ら戦略を生み、夢を語れる態勢づくりを 日本協同組合連携機構(JCA)代表理事専務 比嘉政浩2022年7月7日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を生産現場で働く方々などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は日本協同組合連携機構(JCA)の比嘉政浩代表理事専務に寄稿してもらった。
何もしない農協の経営が良い?
比嘉政浩氏
私が全中に就職した1983年頃、どの様な農協の経営収支・財務が良いか、というレポートがありました。身もふたもない結論で「食管法に基づき米を集荷し経済連に委ねる。他の作目は扱わず指導も出荷施設投資もしない」「貯金を集め全額信連に預ける」農協の収支・財務が安定している、という内容でした。
もちろん、現在こうした認識をお持ちの方はおられないと思います、しかし、組織風土に残滓(ざんし)が残っていることを恐れます。
農中の住宅ローン戦略は成功した
平成10年代、政府系金融機関の方針転換等を踏まえ、農林中金はJAの住宅ローン伸長を打ち出しました。鮮やかだったと思います。統一商品を開発、保証の仕組みを見直し、TVCMなどの広告、当時の協同セミナーを通じてJA職員教育を定型化......多くのJAで成果が出たと思います。
全国のJAは全国機関にこうした事業戦略の提示を期待しており、全国機関は期待に応える必要があるでしょう。
一方で、私は全国統一戦略がこうしたスケールで成功することは段々困難になると思います。今、ストーリー性のある戦略が最も求められているのは営農経済分野であって、この分野はJA毎に置かれた環境が大きく異なり全国統一戦略に限界があるからです。
営農経済事業で各JAが自らの戦略を
日銀が「地銀の6割は将来赤字」と試算するほど金融機関、JAでは信用事業をめぐる環境は厳しい。共済事業はJAの主要事業の中で最も人口減の影響を受けます。営農経済事業の収支改善は必須です。
一方、正組合員の10~20%で販売額の70~80%を占めるJAも多いと思われ、担い手への農業生産の集中が進んでいます。かつては、生業としての農業、兼業が多く、農業者自身の労働を適正に評価すれば赤字の農業経営も多かったと思います。こうした経営体を対象とした事業で黒字化は至難でしたが、状況は変わっています。
もちろん、農業生産構造が変わっただけで営農経済事業が黒字化するわけではありません。かつて、前例がない中、園芸品目のパックセンターや糖度計を設置し、農家手取りとJA収支の両方に貢献した事例がありました。まだ単価の低かった加工用野菜で鉄コン出荷、大玉化で農家手取りを確保したJAもあります。JAが負えるリスクを把握し、その範囲でリスクテイク、コントロールする。JAとしての使命達成とJAの収支改善の両方に貢献する新たな事業方式を生み出す。それぞれ区々な環境にある各JAが、自らの新たな戦略を生む能力を持たねばなりません。
再配置可能な職員を生み出し前向きな配置を
全国のJAは、事業総利益は減少だが、人件費を中心に事業管理費を減らし、経常利益等を確保、という年度が続いています。人口減少・高齢化、異常な金利情勢から、好ましくはないがやむを得ない現実です。少ない職員数で運営できる態勢とするため支所・施設統廃合は必須ですが、対話を通じて組合員の理解を得ることは大仕事でもあります。そうした大仕事のうえ、ただ職員数や事業管理費だけは減った、というのでは将来展望は開きません。再配置可能となった職員の一部を前向きな企画機能に再配置すべきです。
増えているウエビナー
オンラインでのセミナー(ウエビナー)が増えました。有難いです。JAグループはノウハウ等の共有に寛大な素晴らしい組織です。
ウエビナーでは、聴講者が氏名や所属等を示すのがマナーのようです。いつもこのJAの方はいるな、と感じるJAもあります。存じ上げる若いJA職員のお名前があり、終了後に携帯に電話したこともあります。
「久しぶりですね。今日のJA〇〇の話はすごかったね」
「本当ですね。あれ、自分のJAでもぜひやりたいです。うちの専務は視察もセミナーもどんどん行ってこい、です。もともとそういう部署ですからね」
「いいねぇ。でも大変でしょう。何か新しいことを出さないといけないんだから」
「そうなんですよ。専務から、で、どうだった、何かあったか、うちでやれそうなことはないか、と顔を見るたび言われます」
「今日のはやれるんじゃないですか?」
「やれると思います。夢ありますよねぇ」
経営者の大事な仕事とは
JAの態勢を見直し、再配置可能な人員を生み出すのは経営者の大仕事。そのうえで、前向きな宿題を共有し、若い職員の方々に夢を語っていただく態勢を作ることは、もっともっと大事な仕事だと思います。
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