JAの活動:農協時論
【農協時論】食の変化――時代に沿う戦略を アンテナを高く 仲野隆三・元JA富里市常務理事2022年8月22日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を生産現場で働く方々や農協のトップの皆様に胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は元JA富里市常務理事の仲野隆三氏に寄稿してもらった。
仲野隆三
元JA富里市常務理事
「農協をぶっ潰す」と武部農水大臣の声が響いた。農水省講堂に全国から9農協が集まり営農改革報告、あれから20年以上が経ち思い出が残る。
あの時の報告はこうだ。「道路沿いの飲食店の使う野菜はどこから来るのか?」の報告に会場は聞き耳をたてた。農水省官僚や農協は国産野菜であることを疑わず、それが中国などから生鮮や冷凍野菜等で輸入されている実態を理解していなかったと思う。
駅頭の立ち食いソバで使う薬味などの長ネギ(十数センチのカット品)が冷凍袋で輸入されカット工場で薬味用に裁断され各店舗に配送される。同様に当時の広島お好み焼きキャベツも5月が国産品の端境期のため中国からの輸入品が使われていた。
中・外食産業情報は彼らをサポートする野菜カット加工会社にあり、彼らと取引しないと情報は把握出来なかった。卸売市場や全農にないためその実態がつかめなかったのだ。
これを機に農林水産省は平成17(2005)年加工・業務用野菜の国産化を推し進めるため野菜カット協議会(生産流通技術委員会・10人)が主体となり全国で担当者研修など開催。品種改良や機械技術、流通規格など生産コスト低減と実需との契約取引事例集など作成普及してきた。
課題は農協関係者の参加が少なく、とりわけ営農経済部課長の参加率の低さに悲しいものを感じた。地方青果荷受会社は収益が細る中、経営革新を図るためカット加工「袋もの野菜」を学ぶ姿が見受けられた。また産地や農家と実需を結ぶ中間事業者(商社や全農、加工卸会社の意味)の参加が多かった。
いまはどうなったか。外食産業の売り上げは23兆円と期待されたが、現在は中食産業が9兆円を超えるなどコロナ禍の中で善戦している。女性の社会進出が高まり、調理時間を減らすなど簡便性から袋モノ野菜、調理用キット(鍋や焼き肉野菜セット等)の需要が増えてスーパーやコンビニの棚を埋め、総菜と並び売り上げの上位を占めている。逆に青果物単品販売は少なく、ダイコンやキャベツ、レタス、カボチャなどが2分の1から4分の1にカット販売され、最近はファッショナブルで手頃感からリンゴやメロン、スイカなどもカット販売されている。
20年前の加工・業務用野菜は農家も下位規格野菜(B・C級品)を使う程度と思っていたが、現在ギョーザ用キャベツは寒玉で歩留まりの良い大玉(2.0~2.5キロサイズ)の周年供給が求められ、端境期のない品種改良が進んでいる。ブロッコリー需要が年々伸び、国産化を推し進めるため花蕾のフローレットカット処理と袋詰めにより低温貯蔵、長期間安定供給する技術が開発された。
生産コストの低減は生産者側も実需側も取引を安定させる上で喫緊の課題となる。既にGPSによるトラクター耕起の無人化や溝施肥アタッチメントによる元肥20%節減と畝立て苗移植機、さらに除草・施肥管理機とキャベツ、ハクサイ、ブロッコリ―など自動収穫機が産地で動いている。
課題はトラックドライバーの高齢化と減少だ。モーダルシフトとして大型コンテナ(鉄コン)による九州・北海道など遠隔地輸送をフェリーと鉄道、トラックをつなげ大都市圏輸送の安定を図るべく検証している。
加工・業務用野菜の産地化の取り組みは大規模化に限らず集落営農組合などでも取り組む。また加工・業務用と青果物用を併用できると考え、スーパーと規格を擦り合わせている。流通容器のコンテナ化は使い捨て段ボールからプラスチック容器利用により生産者の負担を減らせるものと確信する。
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