JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機農業とは45【今さら聞けない営農情報】第164回2022年8月27日
これまで、みどりの食料システム戦略で掲げられた有機農業の取り組み拡大目標を達成するため、生産面における有機対応資材の活用を中心にご紹介してきました。
ただ、現在の日本の有機農業の取組面積は2万3500haで全耕地面積の0.5%と極めて少ない状況です。とはいえ、有機食品消費額は増加傾向にあり、現在は2009年の2.5倍3000億円を超える金額になっています。
これを2050年までに耕地面積の25%100万haに到達させるためには、計画的に有機農業への転換が必要であり、そのためには「有機農産物が売れる環境」づくりが不可欠になります。
これまでご紹介してきたように、有機農産物は、生産に労力とコストがかかり、収穫量が少なく、品質も作物によっては不十分な場合がありますので、そのような有機農産物の特性を消費者にも十分に理解いただく取り組みが必要です。
つまり、「高くても買っていただける」ことが重要ですが、この点は過去に、多くの量販店でもチャレンジしたことがありますが、最終的に消費者の購買行動は、「安くてきれいな通常生産品」に収斂してしまった事例があります。
このような過去の苦い経験を打破し、有機農産物の魅力が伝わり、多くの消費者に有機農産物を選んで頂けるようにするためには、流通側の努力が欠かせませんし、流通側を動かすには、国の指導力が必要となるでしょう。
現在、国は、現場で実践された実績のある栽培技術体系の確立や産地づくり、およびその横展開に加え、市町村を主体とした生産から消費までで一貫した取り組みを推奨しています。また、有機農業の拡大に取り組むモデル産地の創出、有機食品を扱う事業者との連携に加え、事業者と産地間のマッチングや有機農業・有機食品のプロモーション等を推進しながら、市場拡大を担う「国産有機サポーターズ」などの取り組みを強化しています。これらが、功を奏し、有機農産物の拡大が進んでいくことを期待しています。
ただし、忘れてはならないのが、現在の農産物価格が市場原理を最優先とし、需要と供給のバランスによっては、生産費を下回る価格での取引が横行することもあることです。
これが、有機農産物で起こった場合には、有機農産物の取り組みは大きく失速してしまうことになりかねません。そのためにも、農産物が生産費を下回らない適正価格で流通できるようにすることが先決のような気がします。有機農産物の拡大を契機に、農産物の適正価格での流通が確立されていきますことを期待しています。
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