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JAの活動:農協時論

【農協時論】「共」のセクター形成で危機的状況打開 JAこそ先導役を 加藤好一・生活クラブ連合会顧問2022年8月30日

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「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様に胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は生活クラブ連合会顧問の加藤好一氏に寄稿してもらった。

生活クラブ連合会顧問 加藤好一氏生活クラブ連合会顧問
加藤好一氏

世界的な食料危機に突入してしまった。食料を生産できる国が輸入などしている場合ではない。一方で農業は、一応歓迎すべきことだが有機主体の方向へ舵を切ろうとしている。加えてコロナ禍、ウクライナ戦争と続き、台湾有事も避けられないような事態となっている。核戦争の可能性を秘めた戦争の時代に世界は突入しているかのようだ。環境問題も深刻の度を深め、のっぴきならない状況になってしまっている。事態はまさに危機的様相を呈している。

昨年、私は本紙で小論を書かせていただいた(2021年8月30日付)。フランスでベストセラーとなった『大崩壊』という本を参照した小論だ。この本はかなり悲観的な内容で綴られているが、未来志向的な提言も若干ある。「地域レベルでレジリエンス(適応力・回復力)のある小さなシステムを構築し、来るべき経済、社会、生態への衝撃に耐えられるようにする」というのもその一つだ。

私はこの提言をさらに重要に捉えたいと思っている。かつ「西暦2000年における協同組合」でレイドローが言った「協同組合セクター論」に、この提言をかさねたい。

「協同組合セクター論」とは、暴走する「私」〔企業〕と「公」〔政府〕の両セクターを、「共」〔協同組合等の社会的連帯経済の部門〕のセクターが「制御」するという、セクターバランス論であると理解している。この点は、『西暦2030年における協同組合』(2020年刊/社会評論社)所収の拙稿を参照願えれば幸いである。

レイドローは言う。今日の社会は「企業が社会の究極の権力の座にあるものとして行動」している。その結果、「資本主義体制それ自体が世界中でひどく病んでいる」。「現在の最も重要な問題の一つは、巨大な企業と巨大な政府という二大機構の癒着化傾向である」。「市民に残された唯一の別の選択のみちは、自分たち自身のグループ、とくに協同組合をつくることである」。

これをどう本気で構想し、協同組合をはじめとする社会的連帯経済の部門がその関係性を強化し、グローバルなネットワークを構築してこの任務を担えるかということである。まだまだ「共」の部門は残念ながら弱体である。「制御」するなど困難すぎる。

鈴木宣弘・東大院教授が、本年初頭に『協同組合と農業経済』(東京大学出版会)を出版された。「共生システムの経済理論」が副題の本書から、少し引用したい。「現在、我が国では、いまだに貿易自由化を含む規制撤廃が経済政策の方向性の主流をなしており、〔...〕市場原理主義経済学の『すべての規制の撤廃が経済利益を最大化する』という命題に立脚している。『私・公・共』のフレームで述べると、それは『公』と『共』をなくし、『私』だけにするのがベストということになる」。「こうして『公』と『共』を岩盤規制や既得権益だと批判して、『私』が『公』を私物化し、『共』を弱体化し、さらなる富の集中、格差が増幅されるのは現在の経済システムが持つ『必然』的メカニズムともいえる」(以上、「序章」より)。

この状況を突破しなくてはならない。「共」セクターの存在が、地域に根強く協同のネットワークと重層化を広げることがなんとしても必要だ。とくにその焦点は(故)内橋克人氏のFEC自給圏の構想にある。食料とエネルギーと福祉・介護などの取り組みの連携強化だ。その課題に向け親睦的なレベルを超えた協同組合間(セクター形成)の連帯を強めたい。

その先導役をJAグループのみなさんが、より力強く担われること。私はこれを心から期待している。

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