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JAの活動:農協時論

【農協時論】学校給食の真相―食と農の結節点 JAの参画重要 根岸久子・JCA客員研究員2022年9月26日

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「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は、JCA客員研究員の根岸久子氏に寄稿してもらった。

根岸久子・JCA客員研究員根岸久子 JCA客員研究員

学校給食が変えた日本の食と農

私は農林中央金庫在職時の1980年に学校給食が成人後の食生活に及ぼす影響や地域の農・漁協との関わり等に関する調査を実施した。目的は戦後の著しい食生活の変化と学校給食との関連、それによる日本の農業生産構造への影響を探るためであった。とはいえ、当時は「食い物の調査」への反応は冷ややかだった。

しかし、戦後の食料不足のなかでGHQは放出物資による週2回の給食を開始し、その際にGHQ幹部は「米食偏重の食生活を改める」と語り、さらに、その後の学校給食法制定にあたって、提案理由について文部大臣は「今後の国民食生活は粉食混合形態が必要だが、米食偏重是正等はなかなか困難なため、学校給食により幼少時代に教育的に配慮された合理的な食事に慣れさせる」と語っている。まさに学校給食は「日本の食い物」を変えることを目的としてスタートしたのであり、実際に食生活は変化し、それは米消費の減少、減反政策へとつながっていった通り、まさに「食い物」が農業を変えたのである。

そして減反政策が進行するなかで、パン中心の学校給食に「地元の米を子供たちに」という生産者や保護者からの声が上がり、地元の米や野菜を使った学校給食が少しずつ広がっていった。

とはいえ、味覚形成期に教育の一環として6~9年間実施される学校給食の影響力は大きく、パン食は確実に子供たちの舌にインプリントされていった。そしてパンや小麦由来の食品の消費は伸び続け、今やパンの購入額は米を上回るほどになった。

子供たちに増える小麦由来の疾患

そうした中で今、アレルギーや肥満、自閉症、注意欠陥多動性障害、骨や歯の異常等々、かつてとは異なる心身の異常を訴える子供たちが増え続け、それらが小麦由来の食品摂取にあることが明らかになってきた。

ちなみに、日本では小麦の9割近くは輸入小麦であるが、その小麦は交配に交配を重ね異種交配したグルテン(ふあふあ感、もちもち感がでる)含有量が多い小麦で、そのグルテンが前述の障害を引き起こすことが特定されてきた。加えてグルテンには麻薬のような強い中毒性があり、パンや小麦商品がやめられないことも原因だという。そのため米国では小麦を使用しないグルテンフリー食品市場が急激に伸び、米消費量の増大が顕著で、米国食品医療局もアレルギー疾患や糖尿病などの症状の改善に効果があるとしている。

さらに、日本では認められていないが米国等では認可されている収穫後の農薬散布による加工食品への農薬残留も疾患の要因になっているという。加えて食品表示の緩和で産地が特定できなくなる等で、日本の食の安全性は一層危うくなっている。いずれにしてもかつてと異なる疾患は食(消費)と農(生産)の著しい乖離(かいり)が生み出したと言えよう。

学校給食への取り組みは「地域のJA」への道、まず一歩から

JA全国大会決議では10年後を見通して重点的に取り組む五つの柱の一つに「食」「農」「地域」「JA」にかかる国民的理解の醸成を掲げ、准組合員や地域住民等による食と農に関する活動に取り組むとしている。そのためのアプローチは多様であろうが、なかでも子供たちの心身の健全な発達とJAの今日的課題解決にとって学校給食への取り組みは欠かせない。子供たちの心身の健康問題が顕在化してきている今、乖離した食と農を結び付ける取り組みは保護者のみならず、地域の人々を農業やJAへの関心・参加へと誘うことになろう。

そのための具体策こそが学校給食であり、まずはできることから一歩踏み出してほしい。取り組み方次第で「小さな一歩」が地域農業やJAに大きな実りをもたらすことになろう。

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