JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機農業とは59【今さら聞けない営農情報】第178回2022年12月3日
平成30年12月に施行された改正農薬取締法で定められ、全ての農薬の有効成分ごとに、それを含む農薬を定期的(概ね15年ごと)に最新の科学的知見に基づき安全性等の再評価を行う仕組みである農薬の再評価制度。
その概要について前回ご紹介しましたので、今回はその進捗と防除現場への影響についてご紹介します。
現在、再評価で告示されている農薬の有効成分は76剤で残り504剤の告示が残っています。
告示は、現在のところ、2019年9月9日、2020年4月1日、 2021年4月7日、2022年4月19日の計4回告示され、計76剤が再評価対象農薬成分として指定されています。その際、それぞれの成分が、2年以上~3年程度のデータ提出期限が設けられ、それまでに必要なデータを揃えて提出しなければならない状況になっています。
既に再評価データを提出した農薬の有効成分は、クロチアニジン、チアメトキサム、イミダクロプリド、ブタクロール、ジノテフラン、イソチアニル、D-D、グリホサートアンモニウム塩 、 フサライド、フェリムゾン、エスプロカルブ等 の計20成分です。
これらは、使用量も多く、重要度が大きいものも多く選定されており、ネオニコチノイド剤や除草剤など防除上重要な農薬ばかりです。
では、この制度は防除の現場にどのような影響を与えるのでしょうか?
農薬の再評価制度は、農薬の人畜毒性を新たに評価しなおすため、再評価の結果によっては、ADI(一日当たり摂取許容量)の修正がなされる場合があります。ある農薬に定められた適用内容(作物や収穫前使用日数など)は、それに則って使用した作物全てを食べた場合に残留している農薬成分の総量がADIを超えないように決められています。このため、ADIの数値が再評価によって小さくなったケースでは、適用作物の数が減ったり、収穫前使用日数が長くなったりといった場合が出てきます。そうすると、例えば、3つの作物に収穫前日まで使用できていた農薬の場合、使える作物が1つに減って収穫前使用日数も収穫7日前までに長くなって収穫前日に使えないといった場合も出てきます。この場合、最初の3つの作物のうち、無くなると困る重要度の高い作物を1つだけ残すことになり、2つの作物は残念ながら使えなくなります。このようなケースは、古くて安いが防除上重要な役割を持つ農薬に当てはまることが多いとみられており、再評価が終わる頃には、古くて安い農薬の多くが、登録の維持ができなくなっているかもしれません。
そのことによって十分な防除ができずに食料生産量が減ってしまう可能性もあるため、再評価の進捗に応じて、必要な場合は同時進行で十分な代替防除対策を検討していかなければならなくなるとみられています。
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