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JAの活動:農協時論

【農協時論】世界が驚いた都市農業 消費者のすぐ隣で食の大切さ訴え JA東京青壮年組織協議会顧問 須藤金一2023年4月13日

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「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならないのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回はJA東京青壮年組織協議会顧問の須藤金一氏に寄稿してもらった。

農協時論 須藤金一さんJA東京青壮年組織協議会顧問 須藤金一氏

「都市に農地なんて 奇跡だ!」

「Unbelievable! Amazing! Miracle!」

この言葉は令和元年11月に東京都練馬区が主催した「世界都市農業サミット」で、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ソウル、ジャカルタ、オタワといった都市の自治体の方々が実際に都市農業を視察した時に連呼していた言葉です。つまり「都市に農地があるなんて信じられない!驚きだ!そして、これこそ奇跡だ!」ということなのです。世界的に見たら東京のような大都市のまちなかに農地が存在し、農家が実際に農業を営んでいるなんて考えられないことなのです。ニューヨークでは今、税金をつぎ込んでまで、まちなかにコミュニティーガーデンを創出させているのです。なぜなら、農があることで、人が集まりコミュニティーが生まれる。食育にもなるなど多面的な機能があるからなのです。

青壮年活動で学んだ都市農業の厳しい現実

私は東京三鷹市で300年以上続く農家の後継ぎとして生まれ、今から19年前の2004年、26歳の時に勤めていた都市銀行を辞め就農しました。就農と同時に地元JA東京むさし青壮年部に入部。協同組合という世界に一歩を踏み入れた瞬間でした。もちろん代々続いている農家ですから、家としては代々組合員なのですが、実際に自分がそのなかに入ると、想像していた以上の知らない世界がありました。右も左も分からない自分は、青壮年部活動が唯一の同世代の農家仲間との接点でもあり、積極的に活動に参加しました。

その青壮年部活動の中で、都市農業の厳しい現実を学びました。1968年の新都市計画法によって、東京は概ね10年以内に市街化を図る『市街化区域』と市街化を抑制する『市街化調整区域』に区分けされました。東京の約8割は市街化区域となり、「都市に農地はいらない!」そんな論調の世の中となっていったのです。

そんな世の中に抗って、都市農地の大切さ必要性を訴え続けてきたのが、私の親世代の当時の青年部員たちだったのです。その歴史を学ぶ中で、協同組合の力を実感させられました。大きな国の流れを変えるには、一農家の力なんて非力なものです。しかし、協同組合という助け合いの精神、農業協同組合という旗印のもと、仲間と職員の皆さんからのサポートもいただきながら、この困難を乗り越えるために半世紀もの間、農政運動・市民への都市農業の理解の醸成、さまざまな運動を展開したことで、今まさに世界から「Unbelievable! Amazing! Miracle!」と評される都市農業が存在しているのです。

発揮されてきた都市農地の多面的機能

2015年には都市農業振興基本法が成立。都市にも農地は「あるべきもの」と明記されました。そして世の中は今、脱炭素、カーボンニュートラルが叫ばれ地球規模の温暖化対策の真っ只中。SDGsの流れもあり、都市のなかに存在する都市農業はフードマイレージの観点から多くの都心にあるホテルやレストランから、ぜひ東京産農産物を使用したいといった声や、学校給食での都内産農産物の利用を通して子どもたちへの食育、さらには土に触れ合い、農作業体験を通して新たなコミュニティーができ、市民同士のつながりの場となり、またいざという時の避難場所としての防災機能など、正に都市農地の多面的機能が発揮されてきております。

3年前に起きた新型コロナウイルス感染症の拡大は発生からしばらくの間、世界の物流が滞ったり、また昨年から続くロシアのウクライナ侵攻により、穀物の輸出が滞ったりと、海外に依存してきた日本の食の脆弱(ぜいじゃく)さが明るみになってきました。日本の食・農を守り発展させることは急務です。都市農業は面積こそ限られているものの、消費者のすぐ隣で農業を営んでいます。食の大切さや、農業の大切さを訴えていく上で都市農業の存在はより大きくなると感じています。次の世代に都市農業・日本の農業を受け継いでいくためにも協同組合の精神で仲間と農協運動を通した種をまき、将来日本農業がさらに花開くことを期待したいと思います。

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