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JAの活動:農協時論

【農協時論】食料自給率向上 農協が起爆剤に 新たな食と農の企画を 元JA富里市常務理事 仲野隆三2023年4月21日

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「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならないのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は元JA富里市常務理事の仲野隆三氏に寄稿してもらった。

食料自給率考え直す時代

元JA富里市常務理事 仲野隆三氏
元JA富里市常務理事
仲野隆三氏

自由貿易は「ヒト、モノ、カネ」が瞬時に動き、世界中の人々に恩恵をもたらすと思った。だが2019年コロナウイルスの感染が世界中に拡大、各国はヒトの移動を制限するなどして社会経済活動が止まり世界経済に大きな影響を与えた。

さらに2022年ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、ウクライナ小麦(生産量2491万t・世界第8位)の輸出ができず、その影響からインドは小麦(同1億700万t・世界第2位)の輸出制限をするなど世界中で小麦争奪戦がはじまった。商社は南米など穀物輸入先を探すも中国が買い付けするなどして日本の買い負けがささやかれた。

欧米等のロシア制裁措置に天然ガスや石油輸入が止まり、世界的に偏在希少化する肥料原料のカリ・リン鉱石が円安などを背景に高騰するに至った。世界経済は自由貿易により経済成長してきたと思うが、まさかの事態にあらためて食料の自給率を考え直す時代だと感じる。

農畜産物を犠牲にしてきた貿易交渉

世界が直面する問題をひも解けば、地政学リスクと人口増加と格差や貧困にある。今世紀末の世界人口は90億人超と推測される。FAO(国際連合食糧農業機関)は食料分配がゆき渡らず8億2400万人もの人々が飢えに苦しんでいると警告する。二酸化炭素による温暖化は気象変動を起こし干ばつや水害を引き起こし、砂漠化等が進み食料生産が困難となっている。地球上の真水ベースは地下水や河川、湖沼含め2%といわれ、また耕作できる農地面積も限られている。

混沌とする世界で日本は農畜産物を海外依存しており、昭和60年代に日米牛肉・オレンジ輸入交渉で大敗を喫し、それ以後自動車、家電など貿易交渉に農畜産物を犠牲にしてきた。昭和36年の農業基本法でいう「他産業並みの農業所得(実現)」ができず、農業で飯が食えない担い手と農村を増やしてきた。

非耕作地を学び塾にできないか

日本の農業生産基盤はどうなっているのか、自給率38%のアップが見込める状態なのか、その足元を見つめたい。2020年度の農業経営体数は107万6000戸と2005年対比で90万戸減少している。2022年度の基幹的な農業従事者数は122万6000人と減少の一途にある。その平均年齢は68歳と高齢化しており新規就農者数に至っては5万2000人と過去5年間横ばいとなっている。

2022年度の全国耕地面積(田・畑計)は432万5000ha。荒地農地からの再生等により増加するも、耕地の荒廃、転用等による減少で2021年対比2万4000ha減少している。田地は235万2000haと前年対比4000ha減少し、畑地は197万3000haと前年対比1万ha減少している。畑地は普通畑が113万3000ha、牧草地59万1000ha、樹園地25万8000haとなっている。

近年「土地持ち非農家」など耕作しないで農地保有する人が増えており、最後は耕やされず荒廃、放棄地となることが多い。農業委員会法改正で農地の番人の役割りが期待されたが、小面積や中山間地の農地はホッタラカシの荒れ放題となっている。

そこで現場一考、組合員が耕作していない農地を准組合員などに賃貸、学び塾などにして耕作放棄地を減らすことができないか。既に神奈川県秦野市(JAはだの)の取り組みに学べば正組合員資格「年間90日以上農業に従事・10a以上耕作している(個人)」が求められる。ただし自治体(農業委員会)と連携することが必要と考える。

食料の自給率を上げるには大規模経営体だけでは農村(コミュニティー)が成り立たない。規模や年齢にとらわれず多様な人たちが「ワイワイガヤガヤ」と集まることで新たな食と農の企画が生まれるはずである。その役割(起爆剤)は農協組織だと考える。

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