JAの活動:農協時論
先人の知恵学び持続可能な農業へ 我が事として地域協同に参画を 飯野芳彦・元JA全青協会長2023年5月8日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならないのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は、元JA全青協会長の飯野芳彦氏に寄稿してもらった。
元JA全青協会長 飯野芳彦氏
300年以上続く日本農業遺産の伝統農法
私たちの農業を営む埼玉県川越市、所沢市、ふじみ野市、三芳町地域には、300年以上続く伝統的な農法があります。私たちの地域は、1600年代後半から1700年代にかけて開拓された畑作地域になります。開拓理由は、江戸の人口が増えたため、不足する野菜の供給基地として活用するためです。また、荒川の支流を活用し生産された農産物を船によって、多量にそして素早く運ぶこともできました。しかし、長年農地として活用がなかった理由には大きな課題があったのです。その課題を解決するための方法が今なお続いている伝統農法、「武蔵野の落ち葉堆肥農法」です。日本農業遺産にも認定されています。
私たちの畑作地域は関東ローム層という、2万年から3万年前に関東の山々が活火山として活発な活動をしていたころから火山灰が厚く降り積もった台地になります。火山灰の降り積もった地域ですから水はけが良すぎ、保肥力の乏しい土壌でした。その土壌を畑に適した土壌に改善するために指導された農法なのです。まずは、萱(かや)をなぎ払い落葉樹を植樹し、その落ち葉を掃き集め堆肥化します。その堆肥を畑に施すことによって腐植を増やし保水力、保肥力が増します。
生活者や地域協同で受け継がれ
このような土壌改良をコツコツ毎年360年間行うことによって、開拓当初はヒエもアワも育たなかった農地が、現在は多様な野菜を生産できるようになりました。現在もこの農法が続いているのは、この農法を続けることで良品な農産物ができるという結果が伴っているからです。ですが、生産量拡大や規模拡大に生産性向上などによって時間や労力不足などによって衰退しつつあったこの農法を、多くの生活者の方々や地域協同などによって、見直していただいたおかげで日本農業遺産に認定されるまでの農法になったのです。
戦後の近代農業では、高度成長期の人口増大、他産業への労働力流出に伴い、単収量増大、生産性の向上が優先されました。それによって、田畑からの搾取は加速度的に増し様々な化学的資材が導入されてきました。伝統的農法だけでは、台地の養分搾取が進み供給が追い付かなくなったということです。
失われた持続可能な農法、農業の検証を
世界の潮流は、持続可能な農業推進になっています。G7農業大臣会合でも持続可能な農業が合意されたばかりです。日本においても、みどりの食料システム戦略と銘打ち推進されています。農村に根付いていたが、農業の生産性や経済性の優先、農村部の人口減少によって地域協同の維持が難しくなり失われた持続可能な農法、農業を今一度しっかり検証を行うべきです。その過去の反省と、先人の知恵や知識を学んだうえで近代農業とマッチングした持続可能な農業を提唱すべきだと考えます。
日本では今なお、開発により貴重な田畑の土壌は「残土」と名を変え廃棄物となっている現状をもっと多くの生活者の方々や他産業から問題視されるような社会となるために、教育、法規制が必要なのかもしれません。
持続可能な農業 我が事として参画を
私たちの落ち葉堆肥農法が多くの生活者の方々から評価していただいたように、持続可能な農業を具現化し継続するためには国民の皆様が我が事として関わっていただきたいです。そうすることで地域協同にも参画いただきたい。金銭で賄う持続可能なものはないということです。人が人を支える社会が持続可能な社会なのだと思います。日本国民に足らない事は「温故知新」かもしれません。
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