JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機農業とは80【今さら聞けない営農情報】第199回2023年5月13日
肥料原料の価格の高騰に対応し、政府の肥料価格高騰対策事業の支援を受けるための化学肥料低減の取り組みが進められています。この取り組みをより進め、日本農業を発展、維持させるためには、国内の肥料資源を活用する必要があり、堆肥、汚泥肥料、食品残渣、有機質肥料、緑肥作物といった有機質資材の活用が重要になります。
このため、本コラムでは、有機質資材を有効活用するために必要な知識として、「有機質資材が持つ作物の健全な生育に役立つ効能」についてご紹介しています。その効能は、①肥効増進効果、②土壌の化学性改善、③土壌の物理性改善、④土壌の微生物活性の改善、⑤植物生理活性の増進、⑥土壌緩衝能の改善といったものであり、前回までに①~③についてご紹介しました。
今回は、④土壌の微生物活性の改善についてご紹介します。
いうまでもなく、土壌中には数えきれないほどの微生物が存在し、それぞれが養分や生息場所を競合しながら生息しています。その微生物には、作物の生育にプラスに働くものと、逆にマイナスに働くものが存在しており、プラスに働く微生物には有機物分解菌やVA菌根菌などがあり、マイナスに働く微生物には土壌病原菌があります。
有機物分解菌は、有機物を分解して養分を作物が吸収できる形に変化させるなど、有機物が作物の栄養として利用されるのを助けます。VA菌根菌は、作物の根に共生し、土壌中の水分や養分を吸収して作物の根に供給し、作物の生育を助け収量を増大させる効果があります。これは、特に干ばつや養分が欠乏した土壌などでは効果が大きくなる傾向があります。
一方、病原菌は土壌中で作物の根などに侵入して病害を起こし、品質低下や収量減などの被害を引き起こす厄介な微生物です。
有機質資材の持つ、土壌微生物活性の改善効果とは、土壌内の有用菌の生育に必要な有機質を供給し、活発な増殖を促すことにより発揮されます。つまり、有用微生物が増加することによって、作物の生育促進効果が増大し、それとは反対に病原菌の生息圏や増殖に必要な養分を奪うことにより、病原菌の増殖を抑制し病原菌の作物への感染、病害の発生リスクを低下させます。その結果、病害の発生が抑えられることによって、収量や品質の向上が図られます。
ただし、未熟堆肥など未熟な有機物を施用すると発病を助長する病原菌もいるので、堆肥等の有機物は、完熟のものを使用することによって有機物のもつメリットを最大限に活かすことができます。
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