JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機質資材を活用した施肥(28)【今さら聞けない営農情報】第209回2023年7月22日
みどりの食料システム法が施行され、国内の肥料資源(特に有機質資材)を活用した施肥の重要度が増しています。そこで本稿では、堆肥、汚泥肥料、食品残渣、有機質肥料、緑肥作物といった有機質資材を有効活用するために必要な知識として「有機質資材が持つ作物の健全な生育に役立つ効能」についてご紹介し、現在、有機質資材利用にあたって理解しておきたい基本的事項をご紹介しています。
前回堆肥の原料についてご紹介しましたが、それらは一般に粗大有機物と呼ばれ、稲わらなど、一見すると堆肥化などせずに、そのまま土壌に使用しても大丈夫そうにみえる資材が多かったかと思います。ではなぜ、堆肥化という面倒な工程をはさまなければならないのでしょうか。
それは、粗大有機物をそのまま使用すると土壌中に様々な障害を引き起こすためです。
粗大有機物を土壌に投入すると、土壌中で微生物の働きにより分解されますが、その過程で酸素が消費されて還元状態になり、フェノール性酸や硫化水素など有害物質が生成されて作物の生育に悪影響を与えます。また、粗大有機物に無機化しやすい窒素分が多い場合、微生物の増殖の過程において無機化窒素を作物がすぐに吸収できない有機質窒素に変換し、窒素飢餓を引き起こし、養分不足による生育抑制が起こります。また、植物体には他の作物の生育を阻害する物質が含まれていることがあり、粗大有機物をそのまま施用すると、その生育阻害物質が作用して作物の生育を悪くしたりすることがあります。
さらに、還元状態で酸素が不足すると、有機物の分解によってメタン発酵が起こり、メタンが発生してしまいます。メタンは、オゾン層破壊物質ですので、世界的にも排出抑制が求められていますので、農業からのメタン発生を抑えるためにも、粗大有機物をそのまま施用することをできるだけ避けなければなりません。
このような粗大有機物の弊害を避けるための手段が堆肥化です。粗大有機物を堆肥化することによって、無機化しやすい窒素質有機物を分解して肥効を高めたり、生育阻害物質が原因となる生育障害を回避することができます。
もちろん、緑肥などそのまま使用できる粗大有機物(レンゲやヘアリーベッチ等のマメ科、ソルゴー等のイネ科など)もありますので、粗大有機物の特性に合わせて使い分ける必要があります。特に、堆肥化が必要な粗大有機物は未熟なまま使用せず、必ず完熟させてから使用するようにします。
次回は、堆肥の種類とそれに含まれる肥料成分をご紹介します。
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