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JAの活動:動き出す 担い手コンサルティング

【動き出す 担い手コンサルティング】農林中金・川田常務に聞く JAバンクならではの金融仲介機能の発揮へ2023年8月25日

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「農業者の所得増大」、「農業生産の拡大」、「地域の活性化」へのさらなる挑戦を掲げた第29回JA全国大会決議では、地域農業をリードする担い手経営体をJAの総合事業の強みを生かした事業間連携によるコンサルティングで支援する取り組みを実践することにしている。すでに地域農業の担い手育成と確保に向けてJAと全国連(農林中金・全中・全農)が連携した「担い手コンサルティング」が動き出しており本紙ではこれまで3事例のレポートを掲載した。今回はこの担い手コンサルティングの狙いや今後の課題など、担当役員である農林中央金庫の川田淳次常務に聞いた。

担い手コンサルティング 農林中金 川田常務に聞く農林中金 川田常務

JAの最大の強み活かす

⸺最初に、この担い手コンサルティングのJAバンクにおける位置づけを聞かせてください。

JAバンクは、JAグループがめざす「持続可能な農業の実現」、「豊かでくらしやすい地域共生社会の実現」、「協同組合としての役割発揮」をめざしており、2022年度から3年間の中期戦略では「JAバンクならではの金融仲介機能の発揮」を最大の柱としています。

これまでの金融仲介機能とは、主に地域で預けて頂いた貯金を地域に貸出というかたちで供給していくということでした。しかし、昨今はその機能は金融機関として当たり前であって、貸出先の経営課題までコンサルティングすることが必要であり、そのために金融機関が持つネットワークや情報を提供すること、それが広義の金融仲介機能だということになってきました。

地銀等でも地域商社の設立等、地域活性化に向けた動きが出てきていますが、我々は「JAバンクならではの金融仲介機能」を掲げています。つまり、総合事業というJAの最大の強みを活かし、ステークホルダーの課題解決に繋げていこう、ということです。

そのうえで今回の中期戦略では「農業」と「くらし」と「地域」の3つの領域で、広義の金融仲介機能を発揮していくこととしており、農業分野におけるドライバー的な事業がこの「担い手コンサルティング」ということになります。

今、農業の現場は多様な担い手が支えている一方、高齢化が進み、担い手が減少するなかで、地域の農業を維持していくために経営体自体が大きくなっているという実態もあります。

JAは協同組織ですから、歴史的には小規模な経営体がマーケットを御することができるような取り組みに力を入れてきましたし、それこそが協同組合の原点だと思います。ただ、産業構造がこれだけ変化しているなかで、農業の変革をリードしていくには、大規模化していく経営体にも支持され、かつ必要なパートナーとしての機能を持たなければならないと思います。今後も、われわれJAグループが日本の農業のパートナーになっていなければならない、ということです。

そのためには、JAバンクとして、単にお借入れ等の必要はありませんか、ということではなくて、相手のビジネスに対していかに総合事業全体からのソリューションを提供できるか、ということが重要になります。そのような能力をJAバンクとして備えるべく、自身を高めて相手と対峙していかなければいけないという意味で、まさに大きな転換期にあるのだと思います。

JAバンクとしては、中央会や各事業連等とも連携し、こうした取り組みを担い手コンサルティングとしてメニュー化し、一昨年度は186先、昨年度は301先にコンサルティングを実施してきました。今年度も300先を目標にして取り組んでいます。

農業者の所得向上が目標

ただ、どれだけの担い手に対してコンサルティングを行い、取り組みを広げるかも大事なことですが、自分たちのソリューションが担い手のみなさんの所得にどう寄与したかということも大事です。

そのため担い手のみなさんとは成果を数字で把握することに予め合意をしていただいています。もちろん数字で示すことができない課題もあります。たとえば、労働力確保が課題だという場合や事業承継の相談をしたいという場合、当然対応はしますが、それが直接所得に結びつくものではありません。

一方で、ほ場の生産性向上や販路の拡大といったソリューションは具体的に手取りに反映されるわけですから、そうした取り組みは目標値をしっかり掲げて担い手と共有していきます。つまり、コンサルティングをしてそれで終わりというわけではありません。また、単にJAの購買事業が伸びたということではなく、コンサル先の所得に対してしっかり効果があったかということを双方で確認して進めていくということです。

事業間連携が重要

⸺これまでの取り組みから成果や課題など、どうお考えですか。

大規模化した生産者はプロであり、地域の担い手の中心であって、JAによるコンサルティングを必要とはしないようにも思えますが、実際によく話を聞いてみると、悩みを抱えている生産者は少なくありません。

そのときに経営分析から課題を洗い出し、具体的なソリューションを示すというところまで持っていき、そこに営農指導員のノウハウを活かせば非常に有益なコンサル活動になると思います。そうなれば担い手から、JAの力はすごい、という評価になるでしょう。

ただ、そのソリューションを紡ぎ出すまでにはいろいろなハードルがあって、担い手に耳を傾けてもらえる関係性をどう作るかが課題だと思います。逆にいえばそのためのアプローチこそが、この担い手コンサルティングのポイントだと思います。この活動を通じて、総合事業を展開する自分たちの強みに改めてJAに気づいてもらい、事業間連携の重要性も認識してもらえればと思っています。

未だに縦割りで事業間連携には課題があることは事実ですが、今後進めるべき組合員・利用者目線の事業展開においては、それではなかなか通用しない時代になってきました。では総合力でどう生産者や地域の住民のニーズに対応していくか、その力が今こそいちばん求められるというフェーズに入ったと思います。そのときに総合事業を展開しているという武器はあるわけで、その使い方に強みを出せるかどうかの岐路にあると思います。

言い換えれば、担い手のみなさんにJAの総合力を再認識してもらうことも大事ですが、JA自身も自分たちの強みはこれだということを再認識していただきたいということです。

社会課題の解決も視野に

もう一つ印象的なのは、担い手のみなさんが持っている地域や社会の課題に対する意識の高さです。事例レポートにもありますが、地域に耕作放棄地を増やさないという信念で農業経営にあたっていたり、地域の活性化のために観光農園にも取り組んでいたり、いわば自分の利益以上の社会課題に取り組もうという意識を持っている農業経営者が増えてきているということです。

コンサルティングをするにも、そうしたストーリーをふまえてソリューションを紡いでいかなければなりません。

これからさらにフェーズが進んでくると、温室効果ガスの削減やみどりの食料システム戦略が示すような持続可能な農業といった課題に対するソリューションの提供にまで広がっていくだろうと思います。そういった社会課題に近い領域に入ってきても、ソリューションをきちんと提供できるようなコンサル力も試されるだろうと思っています。

総合力発揮へ旗振りを

⸺担い手コンサルティングに取り組むJAへの期待を聞かせてください。

先ほど申し上げたとおり、JAの総合力の発揮が大事だということですが、JAの職員のみなさんは信用、共済、営農経済などそれぞれの事業を担当しておられます。そして、役員のみなさんはそれらを合わせた総合力をいちばん俯瞰できる立場にいらっしゃいます。

その意味では、組合長をはじめ、役員層のみなさんにリーダーシップを発揮いただき、総合力を発揮しようという旗振りをこれまで以上にお願いしたいと思っています。

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