JAの活動:農協時論
【農協時論】農は国の基―空虚な政治正し 国民が考える時 農業・歌人 時田則雄氏2023年9月13日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を生産現場で働く方々や農協のトップなどに、胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は農業を営む歌人の時田則雄氏に寄稿してもらった。
農業・歌人 時田則雄氏
私は十勝の百姓。間もなく喜寿を迎える。経営主は息子であるが、繁忙期には老骨に鞭を打ってトラクターを運転することもある。少しでも役に立ちたいと思うからである。家族農業とはそういうものなのだ。
就農してから56年の歳月が流れた。この間に多くの仲間がムラを去っていった。いや、彼らは政府が推し進める経営規模拡大策によって去らざるを得なかったのである。いわゆる「規模拡大レース」には私も加わったひとりであり、規模拡大はしたが、労働力不足を補うために大型機械を導入せざるを得なくなった。機械化によって出てゆく金は莫大。規模拡大によって本当に暮らしが豊かになったのか...。いえることはムラの過疎化、つまり衰弱を招いたこと。
つい最近の発表によると、2022年の新規就農者数は4万5840人で過去最少だという。ムラの衰弱と同様に農業の衰弱も更に進むことは必至。数年前まで「地方創生」という文字をよく見かけたが、ムラは依然として活気を失ったままだ。
「農は国の基」が公約の政治家は多い。だが、その公約を少しでも実現に近づけた政治家は皆無。嘘つきが多いということだ。日本は先進国のなかでは最も農業を軽視している国なのだ。政府は2030年までに食料自給率を38%から45%に引き上げるというが、確たる国家観をもたない政治家の、その場限りの政策が続く限り、それは不可能である。「地方創生」「農は国の基」ということばが空しく感じるのは私だけではあるまい。
嶺の上(へ)の茜の雲を見てあれば軍靴の音が近づいてくる
岸田政権は5年間で43兆円の軍事費を確保するという。日本は先の戦争でアジア諸国に大迷惑をかけた。その反省に立ち「戦争の放棄」、つまり二度と戦争は起こさないと宣言したのにもかかわらず、何を考えているのだ。1日に3度の食事をとるのにも苦労する人がいるのに、何を考えているのだ。政治家は国民を飢えから守ること。武器で平和を獲得したためしはない。話し合いによる交渉が大切なのだ。しつこいようだが、農業なくして国は成り立たない。43兆円はムラと農業の振興のために使うべきである。日本は食料危機に直面しているのにもかかわらず、テレビ局はお笑い芸人を起用し、相変わらずグルメ番組を製作放映。何を考えているのだ。理解できない。
この夏は猛暑の日が続いた。そのために熱中症で亡くなった人が多くいた。家畜も亡くなっている。十勝では作物が異常を来している。ニンジンは腐敗して収穫皆無の農家もある。寒冷地作物の代表格であるビート(砂糖大根)は褐斑病が多発し、収量は激減するだろう。私の農場の目玉作物である生食用スイートコーン(3ha)は収穫ゼロだった。日本は食料を大量に輸入しているのだが、もしも輸出国が凶作となったらどうなるのか...。食料の輸入はストップする。国民の胃袋はたちまちスカスカ。当然である。「農は国の基」を国民のすべてがしっかりと噛み締めるときがきているのだ。
農協青年部は明日の農業を担う経営者を育成することを目的とし、種々の活動を展開している。混沌として明日の農業を描くのは困難な状況ではあるが、部員は日本の農業が衰弱したその原因を探りつつ、理想郷を追い続けてもらいたい。
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