JAの活動:農協時論
介護保険事業-福祉本来の役割 JAの重み増す 千國茂JAあづみ組合長2023年10月4日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を生産現場で働く方々や農協のトップなどに、胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は長野県のJAあづみ千國茂組合長に寄稿してもらった。
千國茂JAあづみ組合長
わたしは今、JA全中の介護事業専門委員長の任にある。委員会の役割は「JA介護保険事業発展のため行政等外部機関への政策提言等を協議する」ことにある。先般も令和6(2024)年度介護報酬改正に関する要請事項を取りまとめた。
ところでJAの介護保険事業は介護保険制度開始(2000年4月)と同時に362JA680事業所において取り組みを開始し2021年度には182JA867事業所において事業が展開されている。事業規模も格段に大きくなった。しかしながら、2015年度のマイナス報酬改定や農協改革の影響を受けJA介護保険事業を取り巻く環境は厳しく岐路に差し掛かっている。
そもそもJAの介護保険事業は1980年以降、高齢化が進展し、これまでの農業や地域社会を支えてくれた第一世代の組合員が高齢化する中で組合員を支え、介護者家族の負担を軽減し地域に新たな雇用を創出するという観点からJA事業としてスタートした。介護保険事業は事業を通じて組合員や地域の課題を解決するという協同組合の理念を体現する最も協同組合にふさわしい事業として位置づけられ多くのJAが参入した。
以来20年余。数次にわたる介護報酬改定、JAの合併、経営環境の悪化等により今、JA介護保険事業は大きな曲がり角にある。
二つの視点から考察したい。
一つはJA介護保険事業所の経営問題とマネジメント力の不足という課題だ。早期警戒制度への対応等新たな対応が迫られる中で経営層を含めて今後どう対応すべきか多くのJAが不安を感じている。その最大の要因は「マネジメント不足」といわれている。これは介護事業ばかりでないがおよそ事業として成り立たせるために何をどのようして何をなすべきかを考えあらゆる手立てを講じていくことは介護保険事業に限ったことではない。
こうした環境下で新たな運営形態の検討が模索されている。「赤字」から脱却する手段としての運営形態の検討なら安易すぎる。JAでうまく運営できない事業を別法人化で劇的に解決するとも思えない。「介護保険事業を多くの組合員が期待し最も協同組合らしい事業である」という確固たる信念の上ならば新たな運営形態の検討もおおいにすべきだ。
二つめは高齢者の8割を占める元気高齢者への対応だ。介護保険法に基づくサービスの提供が前述の事情の中で縮小、移管、廃止されると元気高齢者への対応も同様に縮小される傾向にある。
それでよいのだろうか。
団塊の世代すべてが75歳以上の後期高齢者となる2025年が目前に迫る。元気高齢者の活躍の場づくりは過ぎ去った過去の話でなく極めて今日的な課題だ。
「環境・文化・福祉への貢献を通じて、安心して暮らせる豊かな地域社会めざす」JA綱領の理念をどう実践するかが問われているのだ。
JAあづみと特定非営利活動法人JAあづみくらしのネットワークあんしんは連携して、この取り組みを始めて25年になる。介護保険法事業から生活支援サービス、学習活動や生きがいづくり、まで安心して暮らせる地域社会づくりを現場で実践し続けてきた。そして、この活動は25年を経過して色あせるどころか今、一層の重みをもつて取り組まなければならない今日的なテーマとして迫ってくる。
介護をするだけではなく健康を促し、生きがいをつくる。それが福祉の本来やるべきこと。その役割の一翼を担うのがJAではないか。
重要な記事
最新の記事
-
関税発動で牛肉の注文キャンセルも 米国関税の影響を農水省が分析2025年4月24日
-
トランプ関税で米国への切り花の輸出はどうなる?【花づくりの現場から 宇田明】第58回2025年4月24日
-
三島とうもろこしや旬の地場野菜が勢ぞろい「坂ものてっぺんマルシェ」開催 JAふじ伊豆2025年4月24日
-
積雪地帯における「麦類」生育時期 推定を可能に 農研機構2025年4月24日
-
日本曹達 微生物農薬「マスタピース水和剤」新たな効果とメカニズムを発見 農研機構2025年4月24日
-
棚田の魅力が1枚に「棚田カード」第5弾を発行 農水省2025年4月24日
-
【人事異動】兼松(6月1日付)2025年4月24日
-
日本生協連「フェアトレード・ワークプレイス」に登録2025年4月24日
-
旭松食品「高野豆腐を国外へ広める活動」近畿農政局 食の「わ」プログラムで表彰2025年4月24日
-
群馬県渋川市の上州・村の駅「お野菜大放出祭」26日から 9種の詰め放題系イベント開催2025年4月24日
-
JA蒲郡市と市内の飲食店がタッグ 蒲郡みかんプロジェクト「みかん食堂」始動2025年4月24日
-
適用拡大情報 殺菌剤「バスアミド微粒剤」 日本曹達2025年4月24日
-
倍率8倍の人気企画「畑でレストラン2025」申込み開始 コープさっぽろ2025年4月24日
-
農業・食品産業技術開発の羅針盤「農研機構NARO開発戦略センターフォーラム」開催2025年4月24日
-
雪印メグミルク、北海道銀行と連携「家畜の排せつ物由来」J-クレジット創出へ酪農プロジェクト開始 Green Carbon2025年4月24日
-
山椒の「産地形成プロジェクト」本格始動 ハウス食品など4者2025年4月24日
-
絵袋種子「実咲」シリーズ 秋の新商品9点を発売 サカタのタネ2025年4月24日
-
『花屋ならではの農福連携』胡蝶蘭栽培「AlonAlon」と取引 雇用も開始 第一園芸2025年4月24日
-
果実のフードロス削減・農家支援「氷結mottainaiプロジェクト」企業横断型に進化 キリン2025年4月24日
-
わさびの大規模植物工場で栽培技術開発 海外市場に向けて生産体制構築へ NEXTAGE2025年4月24日