JAの活動:動き出す 担い手コンサルティング
【動き出す 担い手コンサルティング】イチゴ就農者に道筋① 栃木県・JA足利、農林中金宇都宮支店2023年12月18日
農業経営には、作目に関わらず高い経営能力が求められる。特に規模を拡大し、企業的経営を行おうとすると、栽培技術だけでなく、資金調達、生産性向上などの高い経営能力が欠かせない。そうした能力を持つ農業者の育成・支援にJAグループが担い手コンサルティング事業に乗り出している。栃木県のJA足利は、農林中金の支援でTACや営農、金融の担当者によるコンサルティングチームをつくり、新規参入のイチゴ農家の経営をフォローしている。コンサルティングを受け、新規参入で経営を軌道に乗せ、規模拡大に挑戦するイチゴの生産者と、それを支援するJAの足利のコンサルティング事業をルポする。
労務管理相談や所得確保提案も
北関東の"赤城おろし"の寒風が吹きすさぶなか、昨年JA足利のコンサルティング(コンサル)を受けた栃木県足利市の小林大介さん(38)のイチゴハウスが並ぶ。地下水を利用した地中熱暖房でハウスの中は汗ばむほど暖かく、収穫期を迎えたイチゴが色づいている。小林さんは3棟9㌃で「とちおとめ」、9棟24㌃で「とちあいか」を栽培。それまでの福祉関係の仕事から、新規就農者を対象とした青年等就農資金などの支援制度を利用してイチゴ栽培に挑戦し、今年で8作目を迎える。
就農の際にトマトや花きも選択肢にあったが、足利にイチゴが入ったころ、祖父がイチゴ栽培していたことから、「子どものころから祖父のハウスに出入りするなど、身近にイチゴがあり、頑張って作っている祖父の背中を見て育った。やるならイチゴだと決めていた」という。
農家の生まれではなかったので、農地はイチゴ栽培を教えてくれた「師匠」の紹介で確保し、その後はJAなどに相談し、面積を増やした。最初の3年は赤字で、4年目から、「数字上は何とか黒字になったが、収量アップや、労働力の確保など、経営上の課題が見えてきた」という。
出荷を待つ地中熱暖房のイチゴ
JAのコンサルを受けたのは「イチゴ経営の収支を、自分以外の人に見てもらい、確認したかった」というのがその動機だ。特に経営上のネックと感じていたのは、イチゴの作業が農閑期になる夏場の収入確保と、雇用者の安定確保だった。当初、夏イチゴ栽培も考えたが価格が安いうえに、それに必要な労力を考えるとリスクが大きいことが分かり見合わせた。
コンサルチームから夏場の新規品目として提案されたのはニンニク。提案を踏まえ、今年の夏には試作に取り組んだ。またいまは検討中だが、新たにイチゴ苗の栽培についても「可能なら来シーズンから取り組みたい」と考えている。
いま、小林さんは夏イチゴの代わりに、夏場の収入確保に冷凍イチゴを販売している。イチゴが終盤になる6月ごろに収穫し、ヘタをとって冷凍保存したイチゴで、夏場のジャムやかき氷などの需要があり、栃木のいちごブランドを生かした販売が期待できる。
コンサルチームから「いろいろな品目の産地の状況や、栽培に必要な機械などを紹介してもらい、自分でできるのかどうか試してみた。JAの情報提供は非常に参考になった」と小林さんはいう。「ニンニクやナスのほか、もっと広く、市場性の高い作目についての情報も知りたい」と、JAの情報ネットワークを生かした一層の情報提供をJAに期待する。
問題は労働力の安定確保だ。主力品種の「とちあいか」は、収量は多い分、収穫、パック詰めに手間がかかる。現在、通年雇用者は2人で、10人ほどのパートを雇っている。イチゴの生育状況に合わせて、その都度パートを確保するのが難しい。
労務管理の仕方についてコンサルのアドバイスがあったが、イチゴは生き物のため前もって出勤日を決めるのは難しいので、可能な人には自由に出勤してもらい、作業が早く終わったら帰宅してもらうことにした。パートも融通をきかせて働くことができる。
人員確保を優先し、パートの都合を考えた勤務体制を取り入れている。将来的にはパートの労働生産を向上させ、規模拡大と併せ、現在の売上高2500万円から「1億円をめざす」という。
重要な記事
最新の記事
-
宮崎県で鳥インフル 今シーズン国内12例目2024年12月3日
-
【特殊報】キウイフルーツにキクビスカシバ 県内で初めて確認 和歌山県2024年12月3日
-
パックご飯の原料米にハイブリッド米契約栽培推進【熊野孝文・米マーケット情報】2024年12月3日
-
第49回「ごはん・お米とわたし」作文・図画コンクール 各賞が決定 JA全中2024年12月3日
-
大気から直接回収した二酸化炭素を農業に活用 JA全農などが実証実験開始2024年12月3日
-
江藤農相 「農相として必要な予算は確保」 財政審建議「意見として承っておく」2024年12月3日
-
鳥インフル ポーランド4県からの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年12月3日
-
鳥インフル ニュージーランドからの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年12月3日
-
【田代洋一・協同の現場を歩く】JAみやざき 地域密着と総合力追求 産地県が県域JA実現2024年12月3日
-
今ならお得なチャンス!はじめようスマート農業キャンペーン Z-GISが4カ月無料 JA全農2024年12月3日
-
全農日本ミックスダブルスカーリング選手権「ニッポンの食」で応援 JA全農2024年12月3日
-
JAグループの起業家育成プログラム「GROW& BLOOM」最終発表会を開催 あぐラボ2024年12月3日
-
「乃木坂46と国消国産を学ぼう!」クイズキャンペーン開始 JA全中2024年12月3日
-
日本の酪農家 1万戸割れ 半数の酪農家が離農を検討 中央酪農会議2024年12月3日
-
全国427種類からNO.1決定「〆おにぎり&おつまみおにぎりグランプリ」結果発表 JA全農2024年12月3日
-
JA全農 卓球日本代表を「ニッポンの食」で応援 中国で混合団体W杯2024開幕2024年12月3日
-
「全国農業高校 お米甲子園2024」に特別協賛 JA全農2024年12月3日
-
【農協時論】協同組合の価値観 現代的課題学び行動をする糧に JA全中教育部部長・田村政司氏2024年12月3日
-
「上昇した米価が下がらない要因」などPOPデータを無料配布中 小売店で活用へ アサヒパック2024年12月3日
-
料理キット「コープデリミールキット」累計販売食数が2億食を突破2024年12月3日