JAの活動:動き出す 担い手コンサルティング
【動き出す 担い手コンサルティング】イチゴ就農者に道筋② 栃木県・JA足利、農林中金宇都宮支店2023年12月18日
農業経営には、作目に関わらず高い経営能力が求められる。特に規模を拡大し、企業的経営を行おうとすると、栽培技術だけでなく、資金調達、生産性向上などの高い経営能力が欠かせない。そうした能力を持つ農業者の育成・支援にJAグループが担い手コンサルティング事業に乗り出している。栃木県のJA足利は、農林中金の支援でTACや営農、金融の担当者によるコンサルティングチームをつくり、新規参入のイチゴ農家の経営をフォローしている。コンサルティングを受け、新規参入で経営を軌道に乗せ、規模拡大に挑戦するイチゴの生産者と、それを支援するJAの足利のコンサルティング事業をルポする。
【動き出す 担い手コンサルティング】イチゴ就農者に道筋① から
"経営者育成"へチーム力で対応
JA足利のコンサル体制は、TAC(営農経済渉外)を中心に、営農担当、金融担当者がチームを組む。一昨年からコンサル事業を始め、対象農家は3年連続イチゴ農家(1年目は農業法人)としている。なお同JAは4ブロック15地区からなり、各ブロックにTACが配属されている。対象農家のいるブロック担当のTACがコンサルチームをまとめる。
コンサルチームと小林さん(中央)。
左から高岩正典・農林中金宇都宮支店食農ビジネス班業務推進役、
日高由恵・同班融資主任、JA足利荒川課長、谷口調査役
同JA営農振興課、TACの山口準次長は「今までの農家の指導といえば営農が中心だったが、いまは、どのような将来ビジョンを描くかが重要になっている。それを農家と一緒に考えたい」と、コンサルの意義を強調する。
JA足利営農経済部
山口準次長
また、コンサル農家のデータを集積し、経営分析にあたった農林中金宇都宮支店食農ビジネス班の日高由恵主任は、「第三者がコンサル農家の経営をみて、5年、10年先のありたい姿を踏まえた課題を分析し、提案したソリューションの実行まで道筋を描くことがコンサルの役目」という。
昨年の小林さんの経営については、「財務状況を見ると、人件費の割合が高く、ヒアリングからもパートの労務管理に苦労されていることが分かった」と、パートの労務管理について提案した。人員確保を優先する小林さんの経営の事情から、実施は見送られたが、この提案が、「とちあいか」の拡大や、他作物の導入で全体の収入を増やし、生産費に占める人件費の割合を軽くするなどの取り組みにつながった。同JA南支店の谷口育海調査役は「人をどう扱うか、収支の確認と労務管理の意識をもってもらったことに意義がある」という。
コンサルチームは、品種の切り替えも提案した。収支改善には、売り上げを増やす必要があり、単価は同じでも「とちあいか」の方が、2割あまり収量が多い。現在、小林さんの経営で、「とちあいか」は全体の7割強を占めるが、コンサルチームは、小林さんの、一層の収支改善のため、収量の多い「とちあいか」にすべて切り替えた場合の収支をシミュレーションし、「小林さんが、普段なんとなく感じていたことを数字で提案することができたのではないか」と日高主任はいう。
コンサルチームとのミーティング
「経営者を育てるには、コンサル農家のように、『もう少し頑張ろう』という気持ちを持つことが必要。農家はともすれば経営上の良くない数字を外に出したくないという気持ちになりがちで、改善意欲のある担い手先でないと、コンサルはできない。JAと思いは一緒なのだから、経営状態をオープンにしてTACに相談してほしい」と谷口調査役は、農家の意識改革の必要性を指摘する。
JA足利南支店
谷口育海調査役
JA足利のいちご販売高は約5億円で、トマトの8憶円に次ぐ主要品目で、販売高全体の4割を占める。イチゴ部会員は38名で、新規参入も含め若手の生産者が多い。同JAの佐藤浩一・須永一彦両常務は「小林さんには、今後イチゴ栽培の指導的立場になって、新規就農者の受け入れなども視野に入れ、栃木県のイチゴ発祥の地、足利を盛り上げてほしい」と口をそろえ、地域農業の担い手として大きな期待をかけている。
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