JAの活動:今さら聞けない営農情報
土壌診断の基礎知識(7)【今さら聞けない営農情報】第237回2024年2月17日
みどりの食料システム法の施行によって国内資源を活用した持続型農業への転換が求められ、国内資源の有効活用に期待が高まっています。作物が元気に育つためには、光、温度、水、空気に加え、生育に必要な栄養素を土壌から吸収しますが、作物が健全に生育するには土壌の健康状態を正確に把握することが必要で、そのために土壌診断があります。現在、本稿では土壌診断を実施して土壌の状態を知り、正しい処方箋を提示するために必要なため、土壌診断の基礎知識をご紹介しています。
現在、土壌診断項目の内容と意義について紹介しており、今回は、ECの続きです。
ECとは電気伝導度のことをいい、これを計測することで土壌中の肥料養分濃度を知る指標とすることができます。主に土壌中に含まれる硝酸態窒素の量の推定や、塩類の集積程度を把握するために使われます。実は、土壌中の塩類濃度が濃くなると、作物の根の周りの溶液濃度が根の内部よりも高くなり、浸透圧の原理によって根の水分が根の外に出て行ってしまうため、根がしおれたり、枯れたりする現象が起こります。これが「塩類濃度障害(肥料焼け)」と呼ばれるものです。この障害は、水稲では問題になることはありませんが、園芸作物では基肥の調整など、EC値に注意を払った施肥が必要になります。
この塩類濃度障害の起こりやすさは、作物や品種の違いによって異なります。例えば、オオムギやナタネなどは塩類濃度障害が起こりにくい作物であり、反対にミツバやイチゴなどは塩類濃度障害が起こりやすい作物になります。なので、作付けする作物によって適正なECの値がありますので、それを確かめた上で土壌中のECを把握し、施肥量を調整する必要があるのです。
また、ECの値から硝酸体窒素(窒素成分)量を推定することができ、黒ボク土など土壌の種類によって推定する計算式が知られています。一般的に、EC値が1ミリジーメンスの土壌の場合、その土壌に含まれる硝酸体窒素の量は、土壌100gあたり25~30mgです。このように、施肥前にECを計測して、適正なEC値になるように元肥の量を調整して、窒素やカリの施肥量が適正になるように調整することが大切です。当然ながら、ECが高い土壌であれば、作物によっては元肥を施用しないで済む場合もありますので、ECをきちんと計測することが、適正施肥にとって大切なことなのです。次回はCECです。
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