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JAの活動:農協時論

【農協時論】改正基本法―食料主権が基本 所得補償確実に 髙武孝充・元JA福岡中央会 博士(農学)2024年2月27日

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「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は元JA福岡中央会農政部長で農学博士の髙武孝充氏に寄稿してもらった。

髙武孝充 元JA福岡中央会農政部長髙武孝充
元JA福岡中央会 博士(農学)

ポスト食料・農業・農村基本法に向けて中間とりまとめ・論点整理がなされ、(一社)全中を中心にJAグループも「食料・農業・農村基本法をめぐる情勢とJAグループの取り組み」(令和5年6月)を基本に組織討議を実施してきた。

この組織討議に目を通した内容について、意見を述べたい。最も気になったのは、JAグループ政策提案のポイント2「再生産に配慮した価格形成の実現」である。①「農業の再生産に配慮した適正な価格」とすること②食料安全保障上の事業者の責務を明記③再生産に配慮した適正な価格形成の仕組みについて、早急に具体化の項目だ。

フランスのエガリム2法(2021年10月制定)を意識したものだ。

懸念しているのは、フランスでの食品価格の変化について以下の報告がある。

(1)インフレ率の上昇=食品小売価格は18・4%上昇し、実質的な購入量は11・4%減少(2)外食の高額化(3)物価上昇の影響=消費者物価指数の上昇率は5・2%でわが国より大きな変化などだ。わが国の食料品価格は、2023年の値上げ食料・飲料は7000品目を超え、3・7%の上昇でありさらに上昇すると言われる。

また、可処分所得は伸び悩み、2020年エンゲル係数は26%と2000年以降最高となった。他方、レイドローは「西暦2000年における協同組合」の中で、「協同組合が一番成果を上げたのは、農業や食料にかかわる多くの分野であったことについて異存がある人はほとんどいない」と記した。JAグループの提案は、現在のわが国の情勢つまり食料品上昇≫実質賃金の中で、私たちの仲間である生活協同組合の反発を招きかねない危険性がある。両者は対立してはならないのだ。

SDGs「誰一人取り残さない」

持続可能な開発目標(SDGs)は、17のゴール・189のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っている。SDGsは普遍的なものであり、わが国としても積極的に取り組んでいる。17の目標の①「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」②「飢餓をゼロに」であり、国民の生命(いのち)と健康を守る食料を生産する農業者の組織である農協・漁協こそがSDGsの誓い「誰一人取り残さない」とピッタリ重なるものである。

JCAは動き出す時期・2025年は協同組合年

2018年4月「一社 日本協同組合連携機構」(JCA)が発足した。農協・生協・漁協・森林組合・ワーカーズコープ・共済など協同組合の全国組織17団体が集う「日本協同組合連絡協議会(1956年設立)」を引き継ぎ、一社・JC総研を改組して誕生した。全国のいたるところで協同組合連携が動き出す時である。2012年に続き来る2025年は第2回目の協同組合年である。それに向けての実績をひとつでも多く連携していく環境をつくることだ。

「再生産可能な所得補償」の要請だけで十分

ガット・ウルグアイ・ラウンドが開始された時期は、世界的に食料が過剰な時代だった。だから、米国とEUとが中心になって両者にとって都合が良い農業協定になった。デ・カップリング政策はその典型だろう。しかし、今の時代は、世界的な食料危機が叫ばれている。「食料は自国で責任を持て」という「食料主権」の確立が政策の基本とすべきだ。国内で生産性を上げるには生産刺激策が必至だ。しかし、今回は細かなことを要請する必要はない。「食料主権」を根拠に国の責任で「再生産可能な所得補償をすること」の要請だけで十分だ。

このことが、230万人(2023年現在)とされる基幹的農業従事者の再生産可能所得が1億人の消費者に対して現在の食料自給率38%(カロリーベース)よりも安定的な食料を供給できると確信している。「適正な価格」「収入」ではなく「所得」であることを強調しておきたい。

その上で敢えて言えば、世界貿易機関(WTO)は、人間が生きていくために最も重要な農業に関しては、もはや機能していない。2000年以降の典型的なミニマム・アクセス米76・7万tに赤字を出してまで輸入をする必要はなく水稲生産者には米を作らせるべきだ。また、生乳・乳製品の増大を要請しながら12万tの生産調整を実施させ、かたやカレント・アクセスとしての生乳13万7000tを輸入して酪農家を廃業させるような政策には苦言を呈すべきだ。

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